昼食に誰かを待つ日は

2019年12月19日(木) 2匹の金魚を水槽の上から俯瞰する夢


何をしていても味気ない毎日で、それでも仕事ではへらへらと笑いメールを打ち、このままPCに向かいながら年老いていくことについての虚しさを考えているうちに夜になる。家に帰るとすぐにヒーターをつけて、そのまま知らぬ間に眠ってしまった。そのときに2匹の金魚が水槽のなかで泳いでいるのを俯瞰している夢を見た。文字通り何も感じず、何もない、今の心境をそのまま反映したような夢である。


風呂場の水が流れなくなって、パイプユニッシュを大量投入するも流れず、もはやパイプユニッシュすら流れていかず、流れていかない液体を見ながら猛烈な虚無感に襲われた。27歳を目の前に控えて、未だにこんな状態なのだから大丈夫なのだろうかと思う。私はおそらく"貧困女子"だ。けれどもそれが原因で精神的に落ち込んでいるとか、そういうわけじゃない。私は暖かい場所で本が読めれば十分だし、ビスケットとコーヒーとタバコがあればとりあえずの至福は得られる。高級なレストランで食事をすることや毎日遊び呆けること、ブランド品などにはめっぽう興味がない。だから、最低限の生活ではあるが特に不満はない。それでも、それでもやっぱりこのままでいいのだろうか、と言う思いは拭えず、誕生日が近づくたびにますますその思いは強くなる。来年の1月に27歳になるわけだが、小学生の頃は漠然と27歳になったら自分は結婚をするのだろう、と思い込んでいた。きっと27歳の頃の母親が強く記憶に残っているからだと思う。
でもきっとそれはできないし、特に結婚に対して強い願望もない。けれども、この間新宿のバーで恋人と話をしている時に、自分でも驚くことに「結婚願望はないけど、子どもは欲しい」と口走っていたのだった。酒を飲めないくせに、ラム酒のロックを飲みながら。私は子どもが欲しいらしい。言葉にすると、それは嘘ではなくて、本当にそう思っているから言ったのだということがわかった。それもこれも、やっぱり年齢のせいだ。27歳が近づいてこなければ、こんなこと口走っていないだろう。恋人はといえば、なんとも言えない表情で私の話を聞いていた。あなたにこんな話をしても仕方がないんだけど、と前置きをおいてこんな話をしたのだから微妙な表情を浮かべるのも無理はない。


狭い狭い部屋で風呂場の詰まりをパイプユニッシュで流し、いや流れず、今日は部屋の鍵を閉め忘れて部屋を出てしまっていたようなだらしのない女であって、母親になんか、まだまだなれないよなあなどとぼんやり考えながら、うっすらうっすら虚無感に包まれていた最中、高校の同級生からラインが届く。
「妊娠しました!」
思わず、あああああああああという心の声が実際に口に出た。嬉しい、嬉しい。私が唯一結婚式に出向いた友人。かつて切磋琢磨し合っていた仲間。結婚、妊娠。そして彼女は堅実に銀行に勤め、旦那さんもまた銀行勤め。これが、正式な、真っ当なルートなんだなあ。


あ、あ、おめでとう、と言っているうちにまた歳をとり、お世話になっております、とメールを打ち込んでいる間にまた老いて、こんなことの繰り返しでいたのならいよいよおかしくなりそうだ。けれども今、何もかもに対する熱がなく、怒りすら湧かず、悲しみが顔を出す前に寝てしまい、朝がきて、夜がきて、起きて眠って頭だけが何かを考え時々心臓が激しく鳴り、それが何かを為すかと言われれば何もなさず、何者にもなれず、こんな風に誰も見ていないところに何かを書き込んで、それすらも意味はなく、どこにも行けず、求める人もいない。けれども、このままでも流れていくものはあるでしょう、たどり着くところはあるでしょう、出会うべく人には出会っているでしょう、とも思ってる。冬なのに変な風に暖かいから気がおかしくなるのも無理はない。春の暖かさは人間を狂わせるのに、今日は春のような日だった。だからです、だからでしょう。冬はめっぽう寒くあれ、寒さでとことん冷えたら逆に楽になる。生ぬるい温かさはときどき凶暴ですから、気をつけましょう。


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左岸 [MAIL]