昼食に誰かを待つ日は

2019年06月01日(土)

朝。平日よりも早起き。曇り。目が覚めると小さな蜘蛛が隣にいた。
土曜日の休みはずいぶん久しぶりだ。

干していた洗濯を取り込む。
トーストを焼いてブルーベリーのジャムを塗る。ヨーグルトにキウイを入れて蜂蜜をかけて、久しぶりに朝ごはんを食べた。それからはやることがなくなって、なんとなくギターを引っ張り出してチューニングを合わせて、適当な曲を練習していたら結構時間が過ぎていた。こういう時間の過ぎ方は良いなと思う。

昼過ぎに美容室へ向かう。きょうは前髪だけ切りに。
いつも髪の毛を切ってくれているOさんの顔色が尋常じゃないくらい悪く、声も出ていない。
それでも、前髪は完璧(眉上でしかも揃っている)に仕上げてくれた。
「風邪ひいていますか?」と聞くと「さっき熱を測ったら39度ありました。死にそうです。」という。
早く帰ってください、と、客なのにもかかわらず語気を荒めてしまった。そうしてそんな状態で髪の毛を切らせてしまい、申し訳ない気持ちになる。Oさんはもともとヤク中のような容貌(ごめんなさい)なのに、さらに拍車がかかって全身が毒されています、という様子で、こんなに悪そうな顔の人を久しぶりに見た。
病院に行くと言っていたけれど、ちゃんと行けたのだろうか。どうかよくなってほしい。

そのまま歩いて渋谷に向かう。ジョナスメカスの『ウォールデン』を観に行った。
日記映画、というらしい。初めての体験で、正直よくわからなかった。
上映から5分後くらいに突然映画が途切れて、「申し訳ありません。誤った画角で放映していました。」とのこと。そして再び冒頭から流れる。最初のカットを、だから二回見た。
どんどんどんどん、知らない人たちの日常が流れ去って行く。早送りの早送り。死ぬ前の走馬灯を見ているのだろうか。被写体が近いのに、でもなんだか全然苦じゃなかったのはなぜだろう。むしろ眠くなって、前半は心地よくねむってしまった。映像というよりは、緩急ある音に眠気を誘われたような気がする。情緒的な音楽と映像が油断をしているときに流れてしまっては、眠るしかない。個人的には、ロバに乗っている場面が好きだった。子供がカメラを持って回している姿が愛おしい。ジョンレノンとオノヨーコが不意に写って、ふたりはベッドの上で横になりずっと手をつないでいた。若干、ここに麻原彰晃がいてもおかしくないような異様な気配を感じたのだけれど、それでもジョンがことあるごとにオノヨーコにキスをし、ハグをし、人前でも気にせず愛を交わしている姿は素敵だった。ふたりを見て、聖人、という言葉が頭に浮かぶ。

3時間弱あって、どっと疲れて、もうあとは何もしたくなくなった。
ホットコーヒーを飲みながら、時々目をつむって映像を再生させてみたりして、でも、大半を忘れていた。
その代わり、動いている周りの人々をじっと観察していた。場所が違うだけで、自分の周りでもコマがいつも動いている。それも、うんと早く。いつもより注意深く渋谷を観察してみようと試みたけれど、まずどこに目をやればいいのかわからなくて、目の前の、じぶんが歩く道を確保することに必死だった。前、後ろ、右、左ではあらゆる人たちが駆け抜けていって、やっぱり早かった。常に早送りされている町だなと思う。しまいには具合が悪くなってきて、まっすぐ家に帰った。

あしたは熊谷で仕事。
日曜日なのに朝6時起きで、起きれたら、それだけで自分に100点を与えたい。
起きれた、というだけで成功だから、あと成し遂げることといえば無事に家路につくことだけだ。
ねむりましょう。


 < 過去  INDEX  未来 >


左岸 [MAIL]