これから環境が大きく変わるのだ。 なぜ変わるのか。 もちろん自分の力だけでこうなったのではなく、今までの出会いや状況が導いてくれた部分も大きいが、自分の心と直感に従った結果だと思いたい。最終的に引越屋に連絡したり新居を整えたりしているのは自分なので、その理由を今一度確認してみたい。 なぜ変えるのか。 今の仕事をはじめたきっかけ、染織品の奥にある生活と芸術の直結した力強さ。それに惹かれて、学芸というフィールドから何かを学ぶことができたらと考えた。展示をすることでそのものの魅力を伝え、維持管理していくことで次世代につなげる。 そのなかで学芸的に学ぶことはたくさんあると感じるいっぽうで、自分の手を動かしてみないと「わからないこと」もたくさんあるということを感じた。(「わからないこと」というのは、「生活と芸術の直結」をよりリアリテイーをもって実感できない、ということだ。) 手を動かすことを仕事にするのは大変だ。そのなかでも私のやろうとしている手仕事は、産業革命以降の技術革新とは逆行する極めて原始的なことなのだから、効率という天秤にかければ必ず淘汰されてしまう。だから別の天秤を探さなければいけない。 学芸員として染織を研究してきたキャリアを生かすのであれば、そのような「製造業」的な考え方ではなく、新たな価値観の提案という意味での「教育」のコンテクストからアプローチしていくべきだと考えている。 ・手を動かすということが精神的な安定をもたらすということ。 ・人間は太古から自然にある素材をどのように利用してきたのかを知ること。 ・さまざまな技法を知ることで人の手のもつ技を発見すること。 ・つまるところ人の手は如何にして、最小限の資源(素材と道具)を最大の効果(衣服などの染織品)で生み出せるのかを知ること。 ・創造する喜びを感じること。 これらを学ぶことは、現代社会の課題である ・日本国内の高齢者ほか人々の生きる力の創造 ・大量生産大量消費による環境への負荷の低減 の解決の道しるべとなるであろう。
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