てくてくミーハー道場

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2019年10月02日(水) 『台風家族』(ヒューマントラストシネマ渋谷)

ぼくは、映画や舞台を観るときに、リアル世界の現実なんて気にしない方だと思ってました。

だから、この映画が紆余曲折あって公開されたことを特に嬉しいとも何とも思わず、普通に面白そうだから観に来たつもりだったのです。

ところが、京介(新井浩文)のアップを見た途端、正直苦い気分になりました。

ただそれは、新井がやらかしたことにムカついていたからではなく、彼がその事件を起こしたことにより、この映画がお蔵入りの憂き目に遭いそうだったという事実に対するムカツキでした。

幼稚でごめんなさい。

彼がこの映画に出ていなければ、彼がやらかした犯罪のことなんかどうでも良かった。被害者の方たちに対して、とても失礼な考えでした。





で、この映画、10年前に親がやらかした犯罪のためにバラバラになり、いろいろムカつく目に遭ってきた兄弟4人が再集結するところから始まります。

そして、親がなぜその事件を起こしたのかが判明して終わります。

終始ぶすっと笑わないユズキ(甲田まひる)が、ラストシーンで満面の笑みを見せる、そのカタルシスを市井昌秀監督は示したかったんだと思います。が、現実が映画を飲み込んでしまって残念でした。

もうひとつこの映画を飲み込んでしまった現実は、“台風”でした。

今、“台風”は日本列島にとって大の禁句です。

色々、非常に間の悪い映画になってしまいました。



一方、ツヨぽん目当てで観に来たぼくにとって、末っ子の千尋(中村倫也)が、

「俺、ユーチューバー始めたんだ」

と発言したシーンには思わず失笑。

小鉄(ツヨぽん)が真面目な顔して「何だ?ユーチューバーって」とか言うもんだから、ますます失笑。

カメラに向かって「サイテーで結構♪クズで結構♪」と踊り出すシーンは、まさに面目躍如。活動としてはいろいろ(それこそユーチューバーとか/笑)やってるけど、草剛の天職は、やはり「映画俳優」なんじゃないかと改めて実感する瞬間でした。

尾野真千子との夫婦っぷりが極自然だったところも良かった。『クソ野郎〜』を思い出しましたね。

まあ、尾野真千子は誰と夫婦役やっても極自然なんだけど(おい、誉め言葉だいなし)





現実を度外視して、純粋にこの映画の世界観にだけ目を向けると、登場人物たちが皆「どうにもならない現実」に無理して立ち向かうこともなく、かといってひたすら流されてあきらめて生きるでもなく、それこそ“現実的”といういい塩梅の生き方をしているところに思いがけない感心をしてしまう。

前宣伝を読むと、ツヨぽん演じる鈴木小鉄は「サイテー野郎のクズ野郎」だそうなんだが、ぼくには「そうだろうか?」としか思えない。

普通にけなげに生きてないか?

ぼくの方が小鉄の数倍クズ野郎なのかなあ?心配になってきた。








(ネタばれ)兄弟の父親・一鉄が、俳優になることを大反対した小鉄が出たテレビドラマや映画の、その出演シーンだけを集めたビデオをデッキに入れっぱなしにしているんだが、『俳優鈴木小鉄』と題されたその作品集は、全編わずか10数分。

たった10数分の俳優生活に別れを告げ、小鉄は一市民に戻った。そして、一人娘や顔も知らない世間(ネットの中)の人たちから“クズ”視されて10年間生きてきた。

めちゃめちゃ立派じゃないすか。分かってくれてるのは奥さんの美代子だけだけど。

小鉄って、クズどころか立派じゃん、て思えるのは、やはり演じているのがツヨぽんだからなのか。それは市井監督の失敗ではなく、むしろ狙いなんだとぼくは思っている。






蛇足

何かのイベントで展示していた、劇中で千尋が着ていた衣装(UFOがナスを持ち上げている図柄のTシャツ)が盗難に遭ったそうなんだけど、戻ってきたのかしらん。この映画って、やたら変なサイドストーリーに見舞われるんだけど、大丈夫か?市井監督(←)


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