てくてくミーハー道場
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2018年10月08日(月) |
ミュージカル『タイタニック』(日本青年館) |
こんなにべえべえ泣けたっけ?この作品。
てくらいボロボロ泣きました。
実は今回のサザーランド演出版の初演時(2015年)は観逃しております。そして以前のグレン・ウォルフォード演出版は、やはり再演時(2009年)に観たきりであります。
それを踏まえて。
やりおるな、トム(サザーランド)←例によって上から目線
一応主役というか、トップに名前が出るのは、タイタニック号を設計したトーマス・アンドリュース役の俳優(今回は加藤和樹君)なのだが、この作品は言わずもがな、登場人物全員が主人公たりえるお話。どの役にもあらゆる観客が感情移入できるようになってる、『レ・ミゼラブル』や『グランドホテル』形式の作品です。
ぼく自身は特に誰にも感情移入はしなかったんですが()、ヤンさん(安寿ミラ)演じるアイダ・ストラウスが、夫と離れないために船に残ると宣言するシーンから以降、嗚咽が止まりませんでした。
女性と子供たちを先に避難させるために恋人や妻と別れ船に残る男たち。救命ボートの漕ぎ手になれば逃げられるのに、その役を三等客ジム・ファレル(渡辺大輔君――いつものようにかっこいい)に譲る機関士のフレッド・バレット(藤岡正明君――「だって彼は客だろ!」のセリフで完全涙腺崩壊)。自分にも待っている婚約者がいるのに。
そして逆の意味で心が握りつぶされるような気持になったのが、タイタニック号の船主J・ブルース・イスメイ(悪役やるときも全力の石川禅ちゃん、サイコー!)と船長E・J・スミス(貫禄の鈴木壮麻さん)とアンドリュースが、
「こんなことになったのはお前のせい!」
とそれぞれに責任を擦り付け合うナンバー。
人間の愚かさ弱さをここまで鮮やかに突き付けてくるシーンはない。
そして、これって、まさしく現実だよなあ。何十年、何百年経っても、人間て同じことを繰り返すよなあ、と悲しい気持ちにさせられる。
人間の両極端の姿を見せられるのだが、おそらくそのどちらも一人の人間の中に同居しているものなんだろう。
そういうことを教えてくれるから、この作品は名作なんだろうな。
今名前を挙げた以外の人たちも皆それぞれに素晴らしかった。
あほな言い方だが、「下手な人」が一人もいなかった。だから、登場人物全員が、「本当にそこにいる人」だらけだった。
群像劇のお手本のような作品でした。
やっぱりトム(サザーランド)、すげえ演出家です(言外にグレン女史をディスってるみたいだが、それは違う!・・・でも、『グランドホテル』といい、ぼくの感情にマッチするのはやっぱりトムの方なんだということが、これで実感できた)
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