てくてくミーハー道場
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2016年01月26日(火) |
『新春浅草歌舞伎 第2部』(浅草公会堂) |
わさわさしてたら、第2部しか観られなかった。
千穐楽に滑り込み。
歌舞伎は通しにしろ見取りにしろ長時間拘束されてしんどい、というイメージなのだが、この『新春浅草歌舞伎』は、それまでの『初春花形歌舞伎』が一旦途絶えて十三年前に今の形態に変わったときに、「芝居見物も含めて、お正月の浅草の町全体を楽しんでほしい」という理由から、昼夜の公演時間を短くした。
ナイス判断である。
新春浅草歌舞伎は、「仲見世ぶらぶら」と「観音様にお参り」と「芝居見物」と「お食事」と「その他浅草の町をてくてく」を一日かけてゆっくりと楽しめるレジャーなのである。
と、主催者側(と浅草商店会)がせっかく気を使ってくれているのに、ぼくは相変わらずギリギリに行って弾丸で観音様と三社様をお参りして仲見世の外側を早足で帰ってくるという、今年も情けない有様であった。
では、感想も早足で。
「お年玉〈年始ご挨拶〉」
大トリ(?)ということで、松也が担当。
形式に則って「いずれも様には〜」と挨拶した後、急にくだけて歌舞伎の楽しみ方をレクチャー。手慣れてますね。
昔のぼくだったら、このご挨拶もコンプリートしたんだろうなあ。実は今年も、松也と、国生か隼人を一日で見れる日に来たかったんだけど、結局うまくチケットとれなかったのよね。今頃言っても遅いけど。
歌舞伎十八番の内「毛抜」
主役の巳之助(ぼくは“みっくん”などと呼んでやらぬ/頑固)を始め、メインの役どころのほとんどが初役なのかな。おばさんには、昔歌舞伎座で月に一回だけやっていた「若手試演会」(タカラヅカでいう「新人公演」みたいなもの)を観てるような気分だった。
今はもうやってないのかな試演会。あれは勉強(客にとっては「未来の大看板のプレ初役を観られる喜び」)になったと思うんだが。
それがないから、今こうやって若手だけが出てる興行を打ってるわけだけどね。
さて、数年間大歌舞伎から遠のいているせいで、ぼくとしてはもう「この子こんなに大きくなったんだ!」という驚きばっかり。
巳之助に関しては、直近では『ワンピース』のボン・クレーを観てるんだけど、ボン・クレーで何を判断しろというのだ(いや、むしろあれはすごく良かったんですけどね)
超久しぶりにまともな()役を演じている巳之助を観た気がする。
“仁”としては合っている(それこそお父さんより)のかもな、と思ったのだが、第一声を聞いて、正直ずっこけました。
あらあ、これは悪声(←オブラートに包んでよぅ/涙)
なんつーか、二十年前ぐらいに海老蔵(当時はまだ新之助だった)の声変わり後の声を初めて聞いたときのような気分がよみがえりました。
具体的に言うと、なんかもそもそした声っての? はっきり言って主役の声じゃなく、悪役に似合う声(その証拠に、「四の切」の亀井六郎は、めっちゃ良かった。亀井は別に悪役じゃないけど、赤っ面だから)でも、まだ若いし、良き年齢になったころには、また声が変わってくるだろう、それを楽しみに待ちます。
でも、弾正の愛嬌と迫力は出てました。粂寺弾正って、こざかしい役者がやるとしらけるのよね(言外に誰かをディスるんじゃない!)
新悟ちゃん as 巻絹。
デカい(←体型はしょうがないでしょお!)
近年の役者はみんなデカいが、特にデカい本間家の遺伝子が残念。てか、新悟ちゃん、あくまで女方で行く気なのね。
ならば何も言うますまい←
新悟ちゃんに関しては、「四の切」でもう一度書きます。
隼人 as 民部。
お父さん(錦之助)が出てきたかと思った。ぼくの中では、お父さんは未だこれぐらいの歳の美青年(未だに「信二郎」と言ってしまう)でありますので。
ただ、やっぱお父さんよりちょっと下手だった←
米吉 as 秀太郎。
かわいいっ(≧∇≦)←いきなり贔屓
前髪でこそあれ、立役なんて珍しいんでないかい?
木目込み人形みたいでとっても可愛いので、無理してやせないでください(若い子にその要望は酷だぞ?)
国生 as 春風。
一時新弟子レベルに太ってたが(それは大げさ)、お年頃になってやせたのね、と思ってたら、やっぱり若干体格がいい。でも、この子は立役目指してるのね。
ちっともお父さんに似てない(母方のDNAが強力)のだが、まだどうなるか分からん歳だし(でも、もう二十歳だぞ!)、この子も長い目で見ていこう。
家系図上は米吉と国生って遠い親戚なんだけど、血のつながりはないのだよ。でも、なんか似てる(ただ、丸いからってだけでは?)
白塗りはこういうふっくらした顔の方が似合うので、ぼくは好きだなあ。
鶴松 as 錦の前。
おお、「中村屋!」と声がかかったから誰かと思ったら天才子役の鶴松君じゃないですか(笑)
この子ももう二十歳なのか。・・・おばさん、一気に歳を感じるぞ(哀←嘘)
先が楽しみすぎる一人です。今回の役はそんなにしどころがなかったけど。
と、若い子ばっかり見てきたが、実はこの幕で一番感心したのは小原万兵衛をお演りになった松太郎丈。
御曹司たちが一所懸命教科書を朗読している(まさにこんな感じ)中にしゅっと入ってきて、すらすらと世話がかりのせりふ回しで見物の無駄な緊張を解いてくれました。あっぱれ。これぞベテランの妙と感動いたしました。
「義経千本桜」川連法眼館の場(通称「四の切」)
与三郎と狐忠信とどっちにしようかなー?(どっちもとるという選択肢はなかったのか)と悩んでこっちとりました。なぜというに、若い役者の世話物って、危険なのよある意味。
米吉のお富も観たかったけどね。将来大後悔するかもね。でももう過ぎたことだ。
で、松也初役の狐忠信。
うん。予想以上でも以下でもなく。
基本的にデキる子なんだよね。
ただ、忠信って、そうそう簡単にできる役ではない。
「義経千本桜」の三役(知盛、権太、忠信)は“歌舞伎役者の卒業論文”と言われているそうですが、それって「この役ができたら歌舞伎役者と名乗れる(一人前の出発点)」という意味じゃなく、「この役は一生かけて完成させなければならない(ゴール地点)」の意味じゃないかと思う。
その中でも特に、忠信って役は“本物の忠信”と“狐忠信”を一人で演じ分けなければならないし、狐の方は超人的身体能力を要求されるTES(急にフィギュア用語をぶっこむアタイ)の高い役。
今回松也がやったのはもちろん丸本に忠実な音羽屋系の演出でしたが、それでも早替りや海老反り、ニースピン(←ブレイクダンスか!)などなかなかのハードさ。
やたらケレンの多い澤潟屋系や、澤潟屋系と音羽屋系を合体させたような中村屋系ほど観客を盛り上げてはいなかったんだけど、その代わり、お話の肝というか、狐の親子愛をしっとりと見せていて、とてもしみじみくる幕でした。
意外や狐言葉のときに声がハスキーになっちゃってカンの声がちょっと辛そうだったんだけど、きっと教わったとおりにやってるんだな、と思える(それっていいことなの?)きちんと基礎どおりの発声も好ましかった。
ディフェンディングチャンピオン()の猿翁や猿之助、勘三郎、勘九郎(いずれも、当代での名前)なんかのレベルの違う人たち(特に勘九郎のニースピンは羽生君の四回転サルコウレベル!←)と比べたら見栄え的には劣るけれども、充分満足できる忠信でした。
特に、初役なのに、あの白い着物で狐らしく動けてる(残念ながら足はニョキニョキ出てたけど)ところが偉かった。二代目松緑丈の芸談によれば、若い役者はなぜかどうしても動いてるうちに手足がはみ出てしまうんだって。そういや猿翁の若いときの忠信では、手足がはみ出てるところ見たことなかったもんな。まるっきり狐だったもんな。
ま、それはともかく、今回の松也、“本物の忠信”の凛々しさ逞しさは、上記いずれの方々よりも優ってた気が。音羽屋のだんな(菊五郎)に匹敵する造形の美しさでしたよ。
で、再び新悟ちゃん as 静御前。
この芝居の静って、数ある静御前登場作品の中で、一番大変だと思う。大活躍するもんね。
そんな中、非常にしっかりと演っていた印象です。巻絹のときと声色もがらっと変えていたし、義経大好き光線も出てたし()
隼人は、やっぱりお父さんくりそつでした。
こうして正月に若手たちの有望さを目の当たりにすると、今年こそ歌舞伎座へ足しげく通おう、と決意するのだが、いざとなると(こら)
無理して来てくれなくていいですよ、と松竹には言われてしまうかもしれない。去年ぼくが行った歌舞伎(?)公演て、平成中村座と赤坂大歌舞伎と『阿弖流爲』と『ワンピース』だもんなあ、亜流(おい)ばっかだもんなあ。
松竹よ、仁左玉をやってくれよ絶対行くからさあ。(結局それかよ)
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