てくてくミーハー道場
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2015年02月02日(月) |
『ボンベイ ドリームス』(東京国際フォーラム ホールC) |
面白かったよ。
(え? これだけ?)
正直に教えますと、3階席はガラガラだったよ(ただし平日)。だけど、作品は決して悪くなかったと思う。
宣伝が足りなかったか、こんなこと言って申し訳ないんだけど、出演陣が弱かったのじゃないかな。一人ひとりはそこそこミュージカル界で活躍している面々なんだけど、悪いが「一人でコヤを埋めちゃえる」ぐらいの大スター不在。
主役の殿下(浦井健治)も、銀河劇場なら満杯にできる人なんだけど(席数違いすぎるやんけ)、この派手で楽しいミュージカルは、博品館でやっちゃダメだしな。
ストーリーは、まあ、よくある「サクセスストーリーの末のほろ苦い展開ののちの、かすかな光明で終わる」みたいな話だったんだけど、とにかく音楽とダンスの“いろどり”が楽しくて。
インド映画界が舞台になってて、作品もそのままインド映画みたいな極彩色でリズム感が華やかで。
音楽担当のA・R・ラフマーンは、『スラムドッグ$ミリオネア』でアカデミー賞作曲賞を受賞したインドの人気作曲家(もっとも、『スラムドッグ〜』はインドを舞台にしてるが、イギリス映画)
インドインドしたマサラなリズムの曲もご機嫌だったが、バラードなんかもメロディが美しくて、それこそ、洗練されたインド料理店at Londonみたいな趣きだった。
出演者について。
殿下は、ぼくにとっては未だ「二代目ルドルフ」なんだけど、昨今のミュージカル界ではすでにスターの御一人。歌もだいぶんうまくなったし、主役の貫禄もある。でも、まだ“堂々たる”主演俳優とは言えないんじゃないかな、残念ながら。
“注目すべき若手俳優”の一人です。
すみれ。
相変わらずセリフがたどたどしい。これを「日本語ネイティブじゃないからしかたないじゃない」で済ませるか、「日本で女優をやるつもりなら、もっと死に物狂いで勉強しろ」と叱咤するか。ひとえに「期待してるかどうか」で分かれると思うな。
歌は、まあそこそこ。
加藤和樹。
狭めのコヤで見ると存在感抜群でカッコ良さだだもれの人なんですけど、国際フォーラムサイズで見たらまだまだだったなあ。過去の作品では、“若造チーム”の中で一番貫禄があってカコイイ人なのに。
ただ、ACT2しょっぱなで歌った「Chaiyya Chaiyya」の歌声はカッコ良かった。ここはさすがだった。
コムちゃん(朝海ひかる)
高慢な大女優の役だったんですが、さほど高慢でなく可愛らしくドジなお姉さんでした。
ダンスはキレッキレだったけど。
「Shakalaka Baby」は耳に残ったなあ(ただ、一日で忘れてもた・・・)
川久保拓司。
彼が演じたスウィーティは、西洋社会でいう「ドラァグ・クィーン」ではなく、インド周辺国に存在する伝統的な“第三の性”=ヒジュラというものだそうだ。
ただ、ちょっとそこ、伝わってこなかった気もする。
女心でアカーシュ(主人公)に恋しつつ、たまに男みたいにぞんざいに接したり、わかりにくかったな。それがヒジュラというものなのかもしれないけど。
背がめっちゃ高くて(何しろ、加藤君が小さく見えた)スタイル抜群なのは、モデル出身だからか。
言いたいことは一つ。歌をもうちょっとがんばろう。
歌といえば、歌唱力のカナメになってた安崎求、阿部裕の両氏。安定していた。
久野綾希子が出てたのに、ソロナンバーがなかったというもったいなさだった。
そして、ひとつの“ウリ”になってたダンス集団・梅棒。ぼくがダンスに“暗い”せいか、特に記憶に残ったような振付はなかったなあ。とにかくこの作品は、音楽が面白ステキだったということしか覚えてない。
「マツケン・マハラジャ」みたいな振付だったら覚えてるんだけどなあ。マジーは偉大だ(←)
結論。オギー(荻田浩一)の演出は、彼らしく洗練されたヅカチックな感じでした。
オギーは、歌劇団にいたときはすごく革新的だったのに、外に出てからの演出はヅカ色がすごく濃いのよね。皮肉なもんです。ただ、本物の男性である男優たちを、男役みたいに中性的で清潔に見せる技術はすごいと思う。ただし、その特徴が、今回みたいな土臭さが身上のようなアジアンな作品では「物足りなさ」につながるのかなー?て気もした。
それか、昨今の男優さんたち自体が元から中性的になってきてるのかも。
となると、ヒジュラみたいな役を演じることは、逆にむずかしくなっているのかもな。最近の若い俳優たちが“第三の性”を演じると、昔みたいな「げ」ってのがなくて、みんな普通にこぎれいだったりする。
それがむしろあんまりよろしくないというか。彼ら(第三の性の人たち)のアイデンティティがよくわからなくなってきちゃってるというか。
ぼくもだんだん何を言ってるのかわからなくなってきちゃってるというか。
なので、これで切り上げますっていうか。←
数年後に、がっつり練り上げて(キャストはそんなに変えなくていいから)再演してほしい気がします。
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