日々の泡

2010年11月06日(土) 楽しめるか

ジョン・レノンの"BEAUTIFUL BOY”
がラジオから流れて来る
この美しい曲が聞こえてくるといつも微妙な気持ちになる。
だってジョンの息子はショーンだけじゃないからさ。
いくらポールが"HEY Jude”と慰めてくれても、ジュリアンだって父親の思いやりがほしいと思うかラサ。
地球の平和を願ったように息子の心も救って欲しかったと思うのは変だろうか。いやいや、わたしだってこのきれいな曲を本当は大好きだし楽しみたいのだ…

 最近、どこかの新聞に小堀杏奴さんのことが載っていたらしい。
わたしのこの日記にも「小堀杏奴」という検索でやって来る方が数名いらした。
どんな単純な仕事でも楽しんでやること云々という鴎外の言葉が彼女のエッセイに書かれていたとそのコラムは紹介していたらしく、友人はその文章を新聞から切り取り持ち歩いている。
そして「何事も楽しむこと」を最近のモットーにしている。
わたしはと言えばなんだか真逆で、三歩歩くのも、人生のなんと辛い事よ…と思ってしまうほどしんどい。
楽しんで生きるとはほど遠い「やっつけ仕事」のような毎日だ。
それはそのような「境遇」というのではなく、つまりは「才能」とか「精神的な成熟度」というようなものが関係しているのだと思う。
 母親と用事を足しに出かけるとする。
必ず喧嘩する。お互いに稚拙なのだ。なので、出かけることは「楽しみ」ではなくて、ある意味「修行」のような様相を成す。
 数年前、エリザベス・ギルバートというアメリカの作家の短編集「巡礼者たち」という本を読んで「わたし好み」の作家の出現をとても喜んだ。
その後、いくつかの長編が書かれたようだがわたしは彼女の短編が読みたかった。
当時、ジュンパ・ラヒリの「停電の夜に」というこれまた「わたし好み」の短編集ともめぐり会っていてなんともしあわせな気分であった。
そして、再度エリザベス・ギルバートと再会。
「食べて、祈って、恋をして 女が直面するあるゆること探究の書 」
ウェッブ上の点字図書館の目録でこのタイトルに出会ったとき、ちょっとしたデジャヴュを感じたのだけどはて何処でお会いしましたかな?
なにはともあれ読み始めた。
おもしろい…
離婚失恋、度重なった大事な人との関係の破綻に直面して著者はかなり重篤な鬱病になってしまう。
そしてある出来事をきっかけとして一年間の魂の再生の旅へ出発する。イタリアで心と体にたっぷりと栄養をつけ、インドのアシュラムで魂の立て直しを図り、バリ島で人生を楽しむことと魂の修行とのバランスがとれるように訓練する…
そんなにうまく行くものか?と思ったが著者はやり遂げてしまう見事!
人生のよい面、人間の善きところ、本来の著者は多分何事に対してもプラスの面を探し出せるタイプだったのだろう。尊敬できる師との出会いも彼女の心のありようが導いて行った結果なのかもしれない。
で途中で気付いたのだけど、これって最近ジュリア・ロバーツの酒宴で映画になってたのだね。そういえばラジオのCMで流れていた。既視感はそういうことだったんだ。
エリザベス・ギルバートもジュンパ・ラヒリも淡々と描いているのに深いところに語りかけてくる。それでいて乾いたユーモアがたっぷり。
おもしろかった。
ちょっとだけ「人生を楽しんだ」かもな…わたし。



2010年10月17日(日) そういう気分になりたいこともあるんだ

その人は詩人で小説も書く。
その人は数年前ちょっとした賞を取った。
どんな小説かと言うとそれは西日のあたるアパートの洋室の窓辺に置かれたアップライトピアノの上で音もなく舞っているほこりのような小説なんだけど。
いつも新刊が出るとつい読んでしまう。
とても好きというのじゃない。
読むと楽しいというのでもためになるというのでもない。
たぶん西日にちょっと光りながら舞っているほこりのような気分に時々なりたくなるからだと思う。
どんな気分か簡単には書けない。
詩人が何十ページも費やさなければ表現できない気分なのだから。
 暮れかかった窓辺からどこかの夕食の仕度の気配が漂ってくる。
今晩は豚汁?
漂う匂いの源の家族の様子を思いながら
もやもやと何かがわたしの胸に立ちのぼってくる。
秋のしんみりと家族の団欒と元気なこどもらと…
わたしの遠い昔の何かの記憶がもやもやと混ざり合った秋の夕暮れ。
書いているうちに窓からは塩鯖を焼く香り
夕餉の仕度もクライマックスですね…岡本さんち。



2010年10月16日(土) 脳性疲労

墓参を目的に旅することになった。
墓参を旅とは言わないか…でもいいや旅行と言って充分な距離なんだ。
ネットで検索して少しでも得してやろうとあっちこっち宿やらチケットやら探し回ってへとへとになった。
で、結局疲労困憊の上面倒くさい病が発祥…ノーマルで電話で予約。
なにしろ脳が疲れるのだ。昨今…
久しぶりに遠い町の知らない人と電話で話す。
たかだか宿泊の予約の数分の通話の中
知らない若い女性 懐かしい訛りが潜んだその声
彼女は今、どんな暮らしの中にあるのだろう…
あの町のあの風の中で…
気持ちだけがあの町へ飛んでいく。
そんなだから、日にち間違えたり、おぼつかないのだ、様々な事が。
ちょっと夫の機嫌が悪いので好物の里芋のにっころがしでも煮てやろうと思ったが面倒くさいなあ…


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茉莉夏 [MAIL]