俳優ユースケ・サンタマリア氏を個人的趣味で鑑賞...いえもと(改名しました)

こちらでは、ユースケ氏の出演作品の中から、後世に残したいとまで気に入った作品&ここまでこのドラマを食い入るように観てるのって私だけだろうと思ったドラマを、筆者が勝手に必要以上に評価させて頂いています。ネタバレ有です。
ドラマのあらすじを知りたくない方にはお勧めできません。
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目次
 

 

「今週、妻が浮気します」その3 第4〜8話 男という名の人間だもの - 2007年04月02日(月)

4 ひどく憎んでいる限り、まだいくらか愛しているのである。(デズウリエール婦人)
5 憎しみは、その心を抱く者にはね返ってくる。(ベートーヴェン)
6 ゼウスでさえも、いったん起こったことを取り消すことはできない。(アガトン)

ホテルの部屋での春木とのやりとり。煮えくり返る心をぐっと抑えつつ、レッドマンボウ握り締め、ここは冷静にと、背水の陣な感じがよく出ている。
春木の立派さに気圧されそうだけど、陶子の前で、負け感を懸命に払拭しようと闘う。言葉の一つ一つへの反応がいちいちリアルで。
観ていると、「もし私がこの立場なら、この気分になるだろうな」と正確にシミュレーションさせられているよう。
おそらくユースケ氏自身、人の気持ちを推し量るのがうまいというよりもう、本当に実際藤井フミヤのことを「妻に手を出した憎っくきヤツ」と思って怒っているのでは。

ハジメは陶子を取り戻したくて行動したのに、武装しすぎて、裏目に裏目に出てしまう。
妻への、そして浮気男への、憎しみや悔しさで一杯で。
負けたとか、勝ちたいとかばかりが先立てば、本当に大切な事に気づくことは難しい。
転職しようとしていた(それはハジメの勘違いだったが)玉子を引き止めるには、あれほどストレートに思いをぶつけられたのに、夫婦のこととなると何かが邪魔をして、一段上がるポジションを取ってしまい、妻の元に降りて行くことができない。

そんなハジメも、そして陶子も、まだ自分自身を内省する方向には向かえていない。怒りやら復讐心やら何やらで、目が眩まされている。
いつもは出さないような高さの声荒げて叫ぶし。
浮気相手に対する妙な気おくれとか、震えながらも思い知らせてやる携帯電話の場面とか。
ユースケ氏の演技も更に複雑な感情に揺れて複雑さを増し、男子ならではのイヤな部分・素直じゃない面もガンガン出る。出るけど、ここが試練のしどころだ。
(が、春木夫妻の買い物姿を見ながらバナナ握りつぶしたあと、スーパー店員に見せる苦し紛れの笑顔が何ともいえないバナナ味だった。なお、そんな悔しいのに、仕事は仕事、結局玉子たちの努力を無駄にしたりせずに編集者としての仕事を全うしたことは偉かったし)

後輩の結婚話や、春木の奥さんの言葉などを通じて、彼の心も少しずつ変わっていく。
紛失した結婚指輪をあんなに必死で探したり。見つかって嬉しそうに薬指に嵌めたり。
自分でも忘れていた過去のシッパイ(浮気じゃん!)に彼なりにけじめをつけるハジメの姿からは、陶子のことを本当に大切に思っていることがよく分かる。
タノウエという元カノ(?)の、女全開アタックを、無下にはかわせない、でも困惑しながらも必死で耐え切ろうとする。なるべくタノウエのセクシースタイルを正視しないように頑張っているあたりもケナゲだった。
その、優柔不断さと真面目さの同居が、魅力でもあり、欠点でもあるという難しい役回り。妻を守るための手段としての仕事に入れ込む余り、妻を苛立たせるという、皮肉な立場。(この山口さやかのラストは潔くて格好良かった)

それなのに一方で、陶子の本音告白に対してあんなピントのずれたことしか言えな夫は、まだまだまだまだだ。男ならではの無神経さに思わず、観ていて「いるいる、そういうことを男って言いそう!」と叫びたくなる。けれどハジメ目線で観てみれば、それがごく普通の反応なんだなあと、許したくもなってしまう演技の自然さはさすが。
もしくは、あのときハジメは「陶子が自分に対して不満を持っていたことって、もっと何かこう、男としてすごくアレなことかと思っていたけど、そんなことで良かったのか・・・」という、意外な驚きを、つい口にしてしまったのかもしれない。馬鹿だが。

7 男にとって愛は生活の一部だが、女にとって愛はその全部である。(バイロン)

で、どんなに夫婦仲が険悪になっても、ハジメも陶子も、親として息子を思う気持ちはしっかり強いのが、観ていて救われる。
実はもうハジメも、陶子に帰って来て欲しいのではないだろうか?朝、轟が包丁でネギを刻む音に「陶子っ」と跳ね起きていた様子など。
チカラ君が行方不明になって、「私のせいで・・・」と泣き崩れる陶子の肩を抱き起こす様子など。
父性愛がしみじみするのは、駆けつけた病院のベットで、寝ているチカラ君に「ごめん。ごめん」と潤んだ声で語っているシーン。この涙声と目の熱っぽさ加減がちょうど良い。本当にユースケ氏の子供かと思わされた。
一方、このときの陶子にも、思わずもらい泣きしてしまった。本当に石田ゆり子の息子と思ってしまった。

Q&Aサイトで、陶子の書き込みとは知らずシリアスな質問に返信するシーン、
流れるユースケ氏の声が静かで重くって、傷の深さを知らされる。

8 過去にこだわる者は未来を失う。(チャーチル) 



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「今週、妻が浮気します」その2 第1〜3話 酸素吸えなくなる - 2007年04月01日(日)

1 安心 それが人間の最も身近な敵である。(シェイクスピア)
2 災いは一人では歩いてこない。大挙して押し寄せてくる。(ハムレット)
3 結婚とは、いかなる羅針盤もかつて航路を発見したことのない荒海だ。(ハイネ)

編集者のデスクとしてポジティブで体当たりな仕事ぶり、家に帰れば可愛い妻子との円満な家庭、全てが順調、充実そのもの。
と信じ切って疑わなかった幸福が、まずは徹底してハジメの目線で描写されている。(あとで陶子の目線で見返してみれば、実はところどころに幸せ夫婦の擦れ違いや綻びが散見されるんだけど)
そこに降って湧いた、思ってもみなかった疑惑。それは不安、恐怖、焦り、怒りとなって段々大きくなり、加速度的に彼を追いかけてくる。

このドラマの役者さんの演技全てが素敵だが、ここではやはりユースケ氏の、
忘れられない絵を回想させてください。

彼は愛する妻子の為ならば、外ではなりふり構わず、みっともなくとも、土下座でも何でもできるのだが、彼の心の夫婦愛は、妻の目前に表現しなくとも彼女に理解されていると信じて疑っていなかった。
妻は夫の本当の苦労を知らない(し、夫も妻の本当の苦労を知らずにいる)。
お互いに、取り繕っている妙な壁を、夫婦自身が自覚していない。

※なりふり構わないみっともない姿を晒し切る演技に、まったく躊躇のカケラも見られないユースケ氏の、逆にそれが色気となる格好良さ
土下座の場面は勿論、警察の取調室で「(妻に報告するのだけは)勘弁してください!」と頭を机に打ち付けるあたりにも。

※何か感情を「抑えよう抑えよう」としている表情のうまさ
陶子と一緒にカフェに居た男のことを轟たちから聞かされている場面、必死で抑えてるところ。
帰宅後、陶子との会話から何か訊き出したいと思う心を包み隠しながら平常心を装っている声など。

けれどここで一番気づかされたのは、ユースケ氏の、
様々な感情に圧迫されているような息遣い。(セリフや動作に息が乗ったり止まったりする連動の仕方)
それは日ごとに肥大していく、妻の浮気の疑いが確信に変わることだったり、
とにかくいつも何かにどんどん押し潰され焦らされ、息苦しくなっていく感情が、
手に取るようにその気持ちが観客に分かるような表情と共に、
しかも、その疲労困憊ぶりが、ちょっと苦笑まで誘うような程で。
観ているといつのまにか、どこで吸ってどこで吐くかまでユースケ氏に同調してしまう。
それほどリアルに視聴者をハジメに乗り移らせるほど、ハジメがユースケ氏に乗り移って酸欠になっているようなのだ。
ホテルロビーのソファに息を潜め身を隠している時など、ほとんどまともに酸素も取り入れられてない。
チェックインのためフロントに向かう妻と男を目の当たりにしたときの激昂、それを辛うじて堪えて、そのあとのショック状態、など。
こっちは、観たあとで思わず外の空気を吸いに行かざるを得なかったくらい。



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