こちらでは、ユースケ氏の出演作品の中から、後世に残したいとまで気に入った作品&ここまでこのドラマを食い入るように観てるのって私だけだろうと思ったドラマを、筆者が勝手に必要以上に評価させて頂いています。ネタバレ有です。
「姫が愛したダニ小僧」 ネルケプランニング 怪しいおかしいと思いつつ巻き込まれる祐一 - 2005年12月25日(日) 「姫が愛したダニ小僧〜Princess and Danny Boy〜」 ネルケプランニング 2005年7〜8月公演 夏に観劇したときに予約していたDVD(サントラCD付き)が、今月になって、やっと届いた。 Piperのメンバーが揃った、旗揚げ公演「Piper」のリメイクというかバージョンアップの作品で、 とにかく、お楽しみ会のように賑やかで楽しく、ストーリーも心温まる舞台だった。 すみれ姫(富田靖子)は老女の役も、若い姫の役も、すごくうまい。声の出し方が素晴らしい。 麗子(大路恵美)のキャラクターが強烈で絶品。 橋本ゆうじ君(山内圭哉)も妙な動きや台詞回しが爆笑もの。 アイアンフット(筋肉善之助)の一人実況描写には、ただただ、唖然、呆然。 後藤ひろひと、佐藤康恵、高杉亘、川下大洋、竹下宏太郎、松村武、松永玲子、みんな個性的で鮮やか。 そんな、一見して不条理な世界を当然の前提として生きている面々に対して、祐一(ユースケ氏)だけは、現実的な視点で「おい、おかしいぞ」という反応だ。 彼一人でこんな人々にいつもツッコミを入れなきゃならない。忙しい。 彼一人、その世界を怪しみ、困惑している。でもなんだか拒みきれないで、巻き込まれる。抑え気味に、内心の静かな苛立ちを、苦笑や皮肉とともに台詞にのせる。それがとてもうまくって、なんとも可笑しい。 7月の日常日記のほうにも書いたんだけど、ホントに、「ボボボーボ・ボーボボ」に出てくるビュティのような重要なツッコミ役。 すみれ姫だと名のるお婆さんの語る世界に、積極的に関わろうとする妻・エリ(佐藤)のそばで、しらけたように座ってる祐一のたたずまい。 姫の物語にすっぽり嵌まるまでは、こっちに留まろうとして往生際が悪かったけど、一たびその世界に嵌まってからは、案外尾を引いてしまった「船長」だった。養護施設に無事に姫を送り届けたあと、気がつけば彼女のことをちゃんと「姫」って呼んでいる。 現実と、姫の世界、どっちが真実だったのだろうか。 豚女(松永)の「ヨーソロー」の声を聞いたときの祐一の「何かなあ?今度は・・・」の、もう笑うしかないって言いたげな反応のところなど。 頭が沸きそうになってる感じで可愛かった。 頭が沸きそうになってるときのユースケ氏の声は結構カンノーテキ。割と高めで。乳児〜幼児のころの本能的な驚きとか悲鳴などに通ずるものがあって、放っておけない感を醸し出す。 一箇所、祐一がすごーく怒ったシーンがあった。悪い侍従長達の極悪非道ぶりに対して、怒りをあらわにするとき。姫の世界の出来事に既に取り込まれているのに、口から出てきた言葉はまだ、あくまでも現実社会的なセリフで面白かった。 その時のテンションの上げ方も、一気にではなくて、徐々に、噛みしめるように、堪えに堪えてから・・・という雰囲気が良かった。 そうそう、飯田(ラサール石井)も、すごく考えさせる存在感だった。これから自殺しようというときに、確かにあの男A(後藤)と話していると、固定観念もガラガラ崩れてしまい、つまらないことで死ぬのも馬鹿馬鹿しくなるだろう。 細かいところまで、演出もすごくいい。 たとえば、大声でしゃべる鯖田(松村)の飛んでくる唾を、大路恵美が手で防いでその自分の手をじっとイヤそうに見る、とか。 姫が若返って皆の名を呼んだとき、「船長!」と言われて祐一が、今までは返事してしまったことをシッパイしたーというリアクションをしてたのに、このときだけは魔法にかかったように素直に返事してたり、 毒タンポポガスからガードするためにアイアンフットが粘液で作ったバリアを、さりげなくエリが人差し指で突っつくしぐさとか、 渡辺(竹下)の歩き方や身のこなしなんか、芸術的とも言えるし。 ゆうじ君(山内)や城一郎(高杉)の太刀回りも、それぞれにかなりステキだし。 芋宮殿MITSURU(川下)とアイアンフットって、まるで鳥山明の漫画に出てきてていそうだ。 笑い所ではすべて笑えた。 そして観客も巻き込んでくれる、ストーリー展開・・・。サービス精神満点だ。 客席から舞台に引っ張り出されて演じさせられた一般人、「弟子家来」さんにも拍手。 ※ただ、ここで「ほおー、」と考えさせられたのは、DVDを観ていると、「弟子家来」さんが客席に戻る際の拍手のとき、他の出演者さんは笑顔で拍手しているんだけど、ユースケ氏はこれをしっかり劇中のできごととして、役になりきっている表情だったようだということだ。あくまでも「祐一」であることを忘れてなかったんだなあ、と感心した。これがいいのかどうなのか、判断しかねるんだけど。※ ラストの自動販売機での演出も、観客が参加できた感が大きい、ほのぼのとしたハッピーエンドで良かった。 全公演がスタンディングオベーションだったらしい。歌い踊るご機嫌絶好調なユースケ氏を観てると、自然と元気がでてきて立ち上がって手を振ってしまうのもわかる。が、それ以前にユースケ氏は「立ちましょうか!」って呼びかけてるし。 観にいったのがたまたまDVD収録日(7月27日・アートスフィア)だったので、改めてよく見ると、立ち上がって拍手してる私も、一瞬、ちょこっとだけ映ってるみたいだ。このとき幸せだったなあ、こんなふうにお芝居を観にいけて良かったなあ、と思い出しながら観返す日々だ。 - 映画「交渉人・真下正義」 よくここまで育ったね真下君 - 2005年12月19日(月) 「交渉人・真下正義」 2005年5月公開 この「踊る」のスピンオフ映画(結局劇場で七回観た。DVDも予約して買った。)では、 それまで露出度の少なかった、脇役の真下にスポットを当てながら、こんどは湾岸署を離れて、地下鉄のプロ達や警視庁交渉課準備室のメンバー達の人間ドラマに舞台が移っている。 青島やすみれ達は直接出てこない。本編とは違うテイストのドラマの中に存在する真下を見るのは面白い。「踊る」とは別の物語でありながら、でもやはり、微妙な人間関係をも味わえるドラマだ。 はじめはTTR(地下鉄)側は警察の人々を相手にしていない。自分たちの仕事に誇りを持つがゆえに、排他的な態度をとっている。 隅でコーヒーでも飲んでろと言われたあたりの、落ち着かなさが真下君らしく微笑ましい。妙な間の取りかたが良い。内心のビビリを隠しながらユーモラスにチラ見せするのがユースケ氏はうまいし、可愛らしさもある。 それでも真下は、謙虚にして大胆、そしてその冷静さと懸命さで、だんだんTTRのみんなの信用を得て気持ちを通わせる。 それから小池君をはじめ交渉課のメンバーの細かくも膨大な分析作業、TTR総合司令室長の片岡の判断力、広報の矢野の協力、線引き屋のおじさんの神業のダイヤ作成、地上を走り回る木島刑事やSATや爆発物処理班の人々、 ともかくみんなの限界以上の力を合わせて事件解決を目指す。 誰か一人だけが謎解きの決め手となったわけじゃない。みんながそれぞれ、互いに信じ合いながら自分の仕事を精一杯やって、ひらめいて、たどりついたことの集積だ。事件はそんな彼らの成長のきっかけであり、そういう意味ではこれも「踊る」のバリエーション。 実は、何度観ても私には(おそらく大多数の観客には)想像力では補いきれない謎が残る。 せっかく本編から独立したストーリーの映画なのだから、何から何まで事件の真相をすっかり明らかにしてもらっても良かったかなあ、とも思う。 この結末では、厳密には「事件解決」というよりもまだ「危機回避に成功」の段階でしかないとも言える。 この映画に「犯人逮捕」「真相究明」を期待した人はたくさんいたと思う。でもそういう視聴者のニーズと、この作品の表現したいことが噛み合わなかった場合、人によってはひどく落胆させられるだろう。そしてリアルさを追求して観たときには、数々の矛盾が気になるだろう。 でも、見方を違えれば、「犯人」は、マニアの一線を越えてあっちの世界に行ってしまった人間の代表に過ぎない・・・主題は、こっち側の人間たちのドラマのほうにある・・・そう思えば、最後まで犯人の顔が見えないのも、(私にはスッキリしないけれど)あり、かも。 ヤッチャンみたいなハイテンションの刑事・木島に対する反応や、やけに明るい笑いを取る広報・矢野とのカラミでは、真下の適度な低温が、それと互いに引き立て合う。温度差をつけたキャスティングの妙だ。 特に、矢野がコーヒークリームを使ってみせて事態の深刻さを説明しようと工夫してるのに、あまりそこに乗ってこないで少々突き放したような真下の受け方が、なかなか魅力。 ユースケ氏は、こういう冷たげなリアクションを示しても、心から冷たいわけじゃないことが観客にわかってるから、それがかえって隠された温かみを際立たせる要素になるわけで、そういうところが良い持ち味だ。 犯人との電話中、せっかく心理戦トークを展開しようとしているのに、横から地下鉄マンが邪魔しようとしたときの、アセアセした雰囲気もユースケ氏に似合う。交渉人の顔と、隅っこに追いやられがちな脇役っぽい顔。それが交互にくるところがいい。 そして、そんな真下を助けてくれた線引き屋さんは、あとで非公式の情報をそっと教えてくれる・・・。その線引き屋さんの気持ちに真下が素直に感謝と敬意を表す様子も好感が持てる。 でも地下鉄の司令室長・片岡は真下になかなか心を開かない。(この片岡のキャラもなかなか魅力的だった。真面目な顔して妙に可笑しいところもあるし) 真下に不信感を示す片岡に対する、真下のセリフの中で、特に好きなのは「僕は彼とは違いますよ。」 自分に向けられた厳しい視線に耐えつつきっぱり言い切る静かな強さを、一見ひ弱そうな表情の奥に感じる。 真下は犯人とだけじゃなく、TTRのメンバーとまで交渉トークをしなければならなくなる。地下鉄の非公開情報を得て作戦を立てるため、慎重に彼らを説得していくその口調が、真下正義のユースケ氏でしか聞けない貴重なものだ。 真下正義の温度の範囲という、制約の多い中で、熱や揺らぎをにじませつつ冷静カラーで統一しなければならない声の演技。 こういうのがうまいと思う。 こういう、トーンを抑えた真下のしゃべりを「棒読み」だと評する向きもあるようだけれど、なるほどそういう皮相的な鑑賞の仕方もあるんだなー、とため息が出る。 永田町駅のシーンでは、真下の読みが外れたりして、その新米ぶりにハラハラさせられるけれど。しかし真下には、SATの人命を守りたいという考えもあったわけで、少しでも危険の疑いがあったあのシーンの場合、あの決断は仕方なかった。 このあたりは、「踊る」の隠しテーマのひとつなのではないだろうか。捜査活動の中で、捜査員の人命をどう尊重していくかという。MOVIE2の沖田管理官が「なにかあったらどうするの」という責任回避ばかり気にして捜査員に拳銃発砲を許さなかったことと対比してみると面白い。 電話で話す雪乃には、心配をかけまいと平常を装い、不安になるようなことは一切言わないでいるのも、好もしい。 犯人のターゲットが雪乃(と真下)だということに気づいて、真下は動揺し、それまで無機質で冷静だった真下の声の調子も、かすかに変わる。その抑えつつ乱れた感じがいい。ぐらついた感じ、そして「泣き落とし」とまで犯人に言われたあとの、その閉塞した感じ、 でもよくそれを乗り越え、持ちこたえる。案外、芯は強いじゃないか真下君、強くなったんだね真下君。と言いたくなる。 後半は片岡も、他の地下鉄マンたちも、彼を心から応援しつつ送り出す。 そして地上の木島との信頼関係の熱さも、ほどよくて良い。 (最後のほうでの木島との会話「あれは、どうして分かったんだ?」と訊く木島に「ただの、勘です。・・・真似してみました。」と真下が答えるシーンがあるけれど、ここを観て本当に真下が勘頼みだったなんて思う人もいるようだ。でも真下は木島を好もしい同志だと思ってフレンドリーな会話をしているだけだと思う。つまり、ある程度ちゃめっ気なのだ。) ここでは真下の「交渉」術は、それほど鮮やかに引き立つような印象ではない。タイトル通り「交渉人」に期待をして観た人には物足りなかったかもしれない。 しかも、本来は真下が気づいたほうがドラマが劇的になるのにな、というあのキーワードまでも、線引き屋さんや他の地下鉄マンが先に早い段階で言ってしまってる。なんでもっと主役に花を持たせないのかとも思えたりするが。 だいたい今までに、「踊る」シリーズの主人公が、いかにもその肩書き通りに、例えば刑事「らしい」人間だったことがあるだろうか。 だからここでも真下は、いかにも交渉人「らしい」人ではない。 でも、やっぱり真下はさりげなく、「交渉人」の役を果たしていたのだ。 彼はマニアとかオタクの世界をよく理解している(というよりも同調できる)、そして冷静と「お人よし」の雰囲気を併せ持っている。だから犯人に「仲間」「ライバル」と認識させることに成功した。それゆえ犯人の頭脳ゲーム心を刺激し、謎賭け合戦を盛り上げておいてヒントを聞きだしておいてから、「僕はお前とは違う、こっちにとどまっているほうがカッコいいからね」と突き放し、そっちの負けだと挑発し、犯人が語るに落ちるのを待つ。 はじめは馴染みやすい風情で安心させながら、ちょっと意外な所でダマす・・・このあたりも、ユースケ氏が得意なキャラと言えるだろう。 彼は犯人にどこかシンパシーを持ってしまってたんだろうなー、という様子が、「三度目の爆発」の炎を黙って見つめているシーンにあらわれている。 一歩間違えば真下も一線を越えてしまってたかも、という。いかにも刑事然とはしていない、真下ならではのスタンス。 この目の潤んだ表情は良い演技、いや、演出か。DVDでの本広監督のコメントを聞くと、これは早朝、とても眠たいときの撮影だったらしい。それが良かったのね。 で、雪乃さんにまたもやプロポーズのシーンで、MOVIE2を思わせる既視感、あのドジな可愛いアワアワした真下君が現れる。 それまでのいろいろは全て、彼のこのギャップを一層味わい楽しむためだった、と言っても過言じゃないだろう。 それからもうひとつ。この映画はとにかく、音楽の使い方が素晴らしい。 ※「逃亡者 木島丈一郎」フジテレビ 2005年12月10日放送 について。 映画「交渉人 真下正義」の2ヶ月前の話、という設定。木島は元・勝どき署のマル暴担当にして、警視庁特別捜査班の係長。そして真下は交渉チーム設立の準備中である。 真下はここでは脇役として、情報収集で静かに木島に協力する。型破りな木島と好対照な雰囲気だ。 真下の直属の部下も登場する。この人は、本編で青島の後輩だったころの真下をほうふつとさせるような、とぼけた感じの人物だ。 ある殺人事件を目撃し、警察内部の不正の証拠に繋がるものを持っている少年。彼を守って、一緒に警察から逃げまわるハメになる木島。 そんな木島も心に少年のような部分を持っているわけで、歳を超えた友情に、しみじみ感動する。 これを観てから改めて映画のほうを観ると、木島がどんな人間で、ここでどんな気持ちでこういうセリフを言ってるのか、どうしてあのジャケットを着てるのか、木島が警視庁の階段を上ってバカヤロウと言いつつ登場するあのシーンの直前には、実は何があったのか、などが分かるしくみ。 爆発物処理班の班長の露出もこのドラマでは大きい。なかなか魅力的な役なのに、役名が「班長」だけとはさびしいけれど。 このドラマもDVD化され、真下正義のプレミアムエディションのセットには付いている。いや、フジテレビってホント商売上手だ。 欲を言えば、このプレミアムセットの仕様の、真下の写真、もう少しカッコイイのを選んでも良かったんじゃないだろうか。あれではちょっとムッツリ何とかみたいだ。もっと良い写真、他にあったんじゃないでしょうか? そして、もうこうなったら、あの「容疑者室井慎次」に出ていた弁護士の田中麗奈を主役にしてドラマ作ったりとか、あるいは湾岸署に戻って魚住係長の名を冠した映画とか、出てくるのでは?いい加減にして欲しいような、でも観てみたいような・・・。 -
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