こちらでは、ユースケ氏の出演作品の中から、後世に残したいとまで気に入った作品&ここまでこのドラマを食い入るように観てるのって私だけだろうと思ったドラマを、筆者が勝手に必要以上に評価させて頂いています。ネタバレ有です。
「踊る大捜査線」シリーズ フジテレビ 脇役・真下君の適温 - 2005年12月10日(土) 「踊る大捜査線」本編〜番外編、そしてMOVIE1、MOVIE2 フジテレビ 1997年1月〜2003年 真下君はどんな人物として描かれたか。 東大出のキャリア、お父さんも偉い人というエリート坊ちゃん。PC関連など機械に詳しくてマニアックで、ちょい知的。でも腰は低く、ちょっとドジ。室井さんに憧れ、SATが来るとはしゃぎ、そして雪乃さんに恋してる。頼りなげな、コミカルなキャラ・・・・というのが、普通一般に知られていた真下正義像だろう。 エリートだけど、エリートくさくない。鼻につかない。 エリートをちょっとひけらかすような、子供じみたところがあっても、偉ぶるわけじゃない。なんだか可愛らしくて、許せてしまうキャラ。 どんなに出世しても、「先輩」の青島君には頭が上がらないようだ。 オモチャにしやすい人物というか。使いやすいというか。 このドラマには実に個性的なメンバーが揃っていて、あきれるような出来事がしばしば起こる。いつも「本店」の無理解に悩まされる。 「踊る」シリーズの面白味って、「警察っていっても案外、そんなしょうもない雑事とか主従関係とか、なんだかんだで人間ドラマに翻弄されてるんだね。やっぱりサラリーマンなのね」という「カッコ悪さ」と、それに負けずに小さな仕事でも頑張る「所轄の意地」を見せてくれることではないか。 固唾を飲んで手に汗握って事件の解決を見守ることが「踊る」シリーズの主題ではないと私は思う。これは人間関係の妙を小気味よく味わうためのドラマだ。 (スペシャルやMOVIEで何度か同じようなパターンがストーリーに出てくるようになったので、もう続編は要らないかも、とも思うんだけど。本店の手伝いで殺人事件の被疑者をじっと見張ってる途中に、所轄で追ってる被疑者が近くに現れて困りました、とか) いろいろな名フレーズが飛び出した。 「警察はアパッチ砦じゃない。会社。」 「正しいことをしたければ、偉くなれ」 「事件に大きいも小さいもない」 「事件は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きてるんだ」 等など・・・。 官僚たちはしばしば、自分たちは安全な会議室から出ないままで、所轄をないがしろにしたり、責任の所在ばかり問題にしたり、足の引っ張り合いをしたりする。そんな本店と所轄の軋轢とか階級差別とか、その中で苦悩する室井さんとか、スリーアミーゴスの保身汲々しながらも案外わかってくれてたりとか、いろんな登場人物たちのあれこれ。 そんな「おいおい・・・」ってツッコミたくなるときに、視聴者の代わりに醒めた視点で横からさりげなくツッコんでくれたりするのも、真下の役割のひとつだろう。 エリートキャリア官僚とノンキャリ兵隊の間を行ったり来たりできる、面白いポジションだ。 青島は、信念を持って熱く燃えて挑みかかる役。だとしたら真下はもうちょい涼しく低温層にいる。 鋼鉄のような冷たさじゃなくて、喩えて言えば、なんだろう、冷奴豆腐かな?そこまでもろくもないから、コシもある寒天か? 諦めたような顔をして流れに乗りながらも、「しょーがないなあ」って言いながら、内心は支持している青島やすみれ達のことを結局、応援してしまう。 たたきあげのヒラ刑事、和久さんの、足を使った地道な捜査。彼がアナログの代表なら、真下はデジタルの申し子として、今の若いモンの事情に通じ、事件解決の突破口の役を果たすこともある。 そうしていつのまにか、典型的な官僚出世コースからは微妙に外れていき、すっかり所轄の良き同志に。 ドラマで本編が放送されていたころ〜MOVIE1あたりまでの真下は、まだまだ、そんなナイスな引き立て役としての、脇役だった。 雪乃さんへの恋も、まだまだ薄く淡くしか描かれてなくて、まあ「真下も可愛いところあるじゃん」っていう。色付け程度で。 彼女を好きは好きなんだけど、まだ命がけで守ったりなんてしなかった。 いつぞやの、「歳末特別警戒スペシャル」の篭城事件では、実にヘナチョコの極みだ。自分のうっかりミスで被疑者を暴走させたのに、雪乃さんが危ないってときなのに、彼女を置いて部屋から出てしまったし(確かにSATを呼んだりはしたけど)、彼の腰抜けな場面を探せばいくらでもある。 (このスペシャルでの真下の描かれ方はあんまりだと思う。いくらあんな真下君でも、好きな雪乃さんを置いて自分だけ部屋を出るなんてありえないだろう。真下なら、きっとそんなことはしない。だけど青島の活躍を目立たせるためにはそういう流れにしなきゃいけないのかな。だったら、最初の設定から雪乃さんを部屋の外においといて欲しいところだ。そういうわけでこの歳末特別は納得いかないが、魚住さんとアンジェラの貴重なキスシーンがあるという点では見逃せない。シリーズ全体を見直しても、レギュラーメンバーのキスシーンは唯一ここだけ。) でも本編では、麻薬密売に絡んでいるという疑いをかけられた雪乃の取調べをわざと長引かせて、頑張って時間稼ぎする(第7話)あたり、案外根性あったし、撃たれて重症になる前に、ちょっとはりきって彼女にイイところ見せようとしてた(第10話)んだけど。 持ち前のオタク魂を発揮して、結構活躍することもあったりして、いつのまにかMOVIE1頃までには、雪乃さんと名コンビになっていったらしい。 それにしても、まだオープニングのタイトルに名前も出てこなかった「ユースケ・サンタマリア」氏、もう、ちゃんと「俳優」やってるじゃない。 空気の作り方がすごくいい。 それに本編に出てたころのユースケ氏は若い!可愛いよ結構。20代だし、お肌に張りがある。 (いや勿論30代は30代の良さ渋さがあるんですけどね) 本編〜スペシャルドラマの、なかなかステキと言っても良かった表情ランキング(個人的選抜)。 第1位 第10話 キャリアになんかならなきゃよかったなあ・・・みんなと、「雪乃さんと、一緒にいたいし」のセリフときの、いつになくきっぱりした表情 第2位 第6話 一日署長の篠原ともえと肩や腕を組んで記念写真に納まるときの、気取った様子 第3位 歳末特別警戒スペシャル 殺人事件の遺族の少女が、声を出せなくなっていたとき「和久さん、この子・・・ショックで、言葉が・・・」のセリフのソフトな雰囲気 第4位 秋の犯罪撲滅スペシャル 室井達の話を物陰で立ち聞きしてしまってた真下のちょっとシリアスな顔 第5位 やはり秋のスペシャル エンディング近く 湾岸署のみんなと一緒にすみれを温かく見つめる表情 第6位 第3話 取調室にて、すみれにしっかり手を握られたときの、驚き慌てた様子 第7位 第9話 婦人警官の試験を受けたいという雪乃の理由説明「ここの人たち、素敵でしょ」というセリフを受けての、一連の反応。採用試験の説明をしながら雪乃さんのバディを爪先から頭まで凝視する目つき ちなみに、「踊る」史上もっとも真下が、良く言えばセクシー・悪く言えばスケベなのは、「秋の犯罪撲滅スペシャル」で、大塚寧々の演じる相良純子に抱きつかれたときの「声」だと思う。 被疑者である純子は、脱走のために真下に抱きついて、彼のポケットの中から手錠の鍵を抜き取ろうとする。 このときのユースケ氏の声が、お坊ちゃま育ちの真下らしいウブさを演出しているのを聞き逃すことはできない。とまどいつつ、理性を失くさないように必死に堪えている感じが、色っぽいというか、なんというか。 普段はあまり激しく体温の変動を感じさせない真下の、ここは貴重なシーンだ。 MOVIE1ではネットに関する知識が相当深いことを見せている。それを駆使して犯人特定に一役買っているけれど、殺人犯の日向(小泉今日子)が署内に現れてピストルを構えてたときの真下は、なんかやっぱり腰抜けっぽい。 MOVIE2では、やっと真下の、ややカッコいい感じが味わえる。 ネゴシエーターとしての登場シーンでは、雪乃さんには軽くいなされ、青島やすみれにはからかわれていて、その受け身も可笑しいけど、 犯人との電話のやりとりがはじまって、彼は結構、ただものでもなくなったことが見えてくる。 ネゴシエーターのノウハウを生かした、冷静な分析力、とか。 犯人の心をすっと掴むようなしなやかさ、とか。 でも彼の魅力(雪乃さんが惹かれたであろう魅力)は、実はそこよりも、 「雪乃さんのことになると、そういう冷静さを忘れてしまって、あのアワアワした真下君になってしまう」という点だと思われる。 しかも雪乃が暗にプロポーズを承諾しているのにそこにも気づかないで、振られたと思って落ち込んでいるというドジぶりが、彼らしい。 このギャップの魅力は、「交渉人・真下正義」にも続いている。 このユースケ氏の初主演映画について、と、今夜TV放送の「逃亡者 木島丈一郎」については、また後日、別に記すことにします。 - 「俺は鰯 -IWASHI-」WOWOW ここでも愛と勇気を振り絞っています - 2005年12月08日(木) 「俺は鰯 -IWASHI-」 WOWOW 2003年4月 DVDのパッケージを見るとユースケ氏がいかにも疲れてそうな顔なので、「えーどうしようかな」と観るのをためらう人もいるかと思うけれど、きっと観る価値があります。 鰯。魚偏に弱いと書く。いつも群れていて逃げ回っている、雑魚。 そんなサカナに喩えられる、平凡で意気地なしの男。プライドもなくて、理不尽な仕事のためにあくせくする。 友達を見殺しにしたという、苦い思い出も抱えてる。 そんな高城太郎が、勇気を奮い起こすことができたのは、 慧敏(フイミン)という一人の女のおかげ。 彼女は娼婦という境遇の中でも誇りを忘れない。それは父親の病気を治したい一心だった。 そんな彼女の心に触れて、彼は仕事も捨てて、危険の迫る彼女を追って台湾へ。 そこには親友の五十嵐の友情や、外科医の沙耶の協力もあった。 苦労して父の元に帰った慧敏は、父の死によって、糸が切れたようになってしまった。 でも、わざわざ日本から彼女を探し出してくれた高城に、心を開いて、今一度、前を向いた慧敏。 危険を承知で、父の形見の高価な皿(それは3億円はするだろうという貴重なもの)にまつわる取引に出向く。 彼女が教えてくれた言葉「人生是美好的」(人生は、捨てたもんじゃない)を胸に、生まれて初めて必死になって慧敏を守り抜こうとする高城。 ごく普通の弱々しい男が、暗黒社会を相手に立ち上がる。 ヤクザの右腕となって彼女を追っている王富龍(ワン・フーロン)にも、かつて恋人を自分の手で殺したという、彼なりに忌まわしい過去がある。 彼は凄腕で、冷たい。「人生は、クソみたいに汚い」を身上とする。 しかし、高城と慧敏を追い詰めて銃口を向ける富龍に、何かの変化が起こった。 身を投げ打って彼女を助けようとする高城と、高城のためなら大事な皿さえ要らないという慧敏。 二人の強さの波及効果が、富龍の寒々しい心にも届いたとき、富龍もまた「人生是美好的」の真の意味を悟るのだった。 つまるところ、本当の強さは、誰かを愛するがゆえの人生肯定ってことなんだろう。それこそが、さえない人間に光を与え、奇跡的な火事場の馬鹿力を発揮させてしまうものだ。 (鰯も実は美味しいし、栄養もあったのだ) 彼女と一緒に生きていくことで、高城は「群れない鰯」に生まれ変わった。 こんな高城の役にユースケ氏がぴったりなのは言うまでもないことだ。 いかにもかっこいいアクションはないけれど、かっこ悪さがかっこいい。 弱っちいようでいて、いざとなると、男になる。どこにそんな底力を隠していたのアンタは、と言いたくなる場面の代表として、 私はひとつ選りすぐって、このシーンを挙げたい。 皿を探しに来た富龍が、高城が泊まる部屋に押し入って彼に銃を向けたときに、高城が、慧敏から預かった皿を持った手を窓の外に伸ばして、「これでも、撃つのか?落とすぞ!」 恐怖に耐えながら丸腰のギリギリの状態で富龍に対峙している、その表情と声。良かったです。 -
|
|