こんな一日でした。
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先日、大学時代の友人から夫に電話が来た。 同じ大学を出た私たちにとって、共通の友人である。 「卒業後さぁ〜、みんなに会ってる?」みたいな話が続いた。
美大というのは、つぶしが利かない。 教師の免許はみんな結構とっていたけれど、卒業の時、試験に受かって、無事、教師になった同級生はたったひとり。しかも、訴えられこそしなかったようだが、刑事事件になるようなことをしていた人物だけだった。まだ、私たちの大学では学芸員の資格は取れなかったから、教師になれなかった、もしくはなりたくない人は、なんの免許もない、後ろ盾のない仕事を探し始めなければならなかった。
卒業して13年…。ゲーム業界に進んだ人、作家活動に邁進した人、デザイナーになった人、テレビの仕事をしている人、さまざまである。テレビを見ていて、同級生の姿を発見することもある。 一方、身を持ち崩した人の噂も聞く。かなりの数だ。闇に消えていったような人もいる。生きてはいるのだろうけど。
すでに、亡くなってしまった友人もいる。私が結婚した年に、その人は無言で発見された。懐かしい友達が「結婚したんだって」と電話をくれて、私は嬉しく、弾んで電話に答えた。「実は…」と友人は、お葬式の日取りの連絡を始め、私には二の句が継げなかった。 その友人は大学院時代、私がずいぶん悩んでいた頃の友達で、彼女も悩み深い人だったから、なんとなく、そばにいたことも多かった。とはいえ、思春期のように悩み事相談をし合うようなこともなく、ただ日常会話をしていただけだったけど。
ストレス性の難聴のため、全く音が聞こえなくなることもあって、彼女は学校をよく休んだ。譲れない、自分の価値観があって、それに私が不用意に触れると、鞭で叩くように声を荒げ、次の瞬間には、また、おとなしくて知的な笑顔に戻る人だった。そんな自分の譲れなさと、不条理な世間とのギャップに、耐えられなかったのだろうと思う。 …でも、わからない。本当の所は誰にもわからない。彼女は姿を消す前に私に電話をくれていた。「貸していた漫画を返してね」と。それだけだった。
彼女が発見されるまで、かなりの月日がかかった。そのくらい、彼女は本気で消えたかったのだ。絶対、見つからないように、努めたのだろう。 私には出来ないと、つくづく思った。私は、往生際の悪い人間で、分かって欲しいといつまでも望みをかけてしまう甘えが強い。だから、きっと消える時には手がかりを残してしまうと思う。 「つまり、あんたは絶望できない人間なんだ」と、私は彼女に言われた気がした。 「あんたには、消えることは出来ないんだからね」 「だから、半端に悩んでないで、世間に希望を賭けてりゃいいじゃん」と。
なくした友人、頑張っている友人、しっかり暮らしている友人、会うことも出来なかったりするけど、きっと、どこかで自分を支えてくれている気がする。
高校時代の恩師が、現在、美術科のある高校の先生をしていらっしゃる。私の高校には美術の先生が2人いらしたのだが、その二人ともが、その高校で指導されている。今日はその高校へおじゃました。
日本画というのは、現在の美術の中で特別な立場にある。権威化されて守られていながら、同時に非常に仲間はずれにされている。実際、学校教育の中で、日本画が取り上げられたり、指導されたりすることは皆無と言っていいだろう。
そんな中で、私は高校時代に日本画に触れる機会を得た。高校に日本画の先生がいたからだ。これは実に恵まれたことである。美大受験、日本画を専攻する人ですら、ほとんど高校でも、予備校でも、日本画の画材に触れることがない。大学に入ってやっと岩絵の具に触れるのだ。
その高校は美術科がある学校なだけあって、洋画、日本画、彫刻、デザイン、クラフト…全ての先生がおり、それぞれの教室、設備が整っている。画集も図録もあって、私から見ると、実に恵まれた環境に思う。
さて、その高校へ行って、私は自分の絵のことやらなにやら話し、生徒の皆さんの作品について、なんだかんだとコメントしてしまった。良いのかな〜、大丈夫かな〜と、思い返すことしきりである。
10代、美術がどうとか、画材がどうとか、そんなことに関わらず、ただただひたすら描く熱心さは、すがすがしく良いものだ。 でも、10代の自分とそんなに変わらない「描こう」という素直な気持ちが、今も私の中にはあるようにも思う。そんな気持ちを、長く保持できているのは、やはり、高校時代の先生方の指導のあり方のおかげだと、今日は強く感じた。
今日のことは、ちゃんとまた日記に書きたいと思う。
2005年、第42回宮城県芸術祭 絵画展に出品しています。 会期は今月12日まで。 日時は午前10時〜午後7時、10月16日(木)は休場、最終日は午後5時閉場です。 場所はせんだいメディアテーク、日本画は5階です。 成瀬美術記念館賞という賞をいただきました。 入場料が500円も、かかってしまうようですが、お近くにいらした方、もしもみてくださったらとっっっても嬉しいです。よろしくお願いいたします。120号を展示しております。7月の個展でのテーマ、薄氷を再チャレンジしました。作品写真はまた後ほど、ギャラリーのコーナーにUP予定です。
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