ぶらんこ
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大声で叫んだ
頭抱えて悔しがった
飛んで跳ねて踊った
大口開けて笑った
くらくらして
立ってられないくらい
あのね
ぐだぐだしとったのが嘘みたい
要は
熱中することなんだね
そう実感した
身体のなかから
何かがはじけて
きらきらきらきら
世界が虹色になったよ
自己嫌悪に陥ることってある? あるかな? 人間誰しもあるよね・・きっとね。。。
わたしは、 自己嫌悪になってもすぐにそれを打ち消してしまう阿呆だ。 忘れるのとは違う。 それを知らなかったことにしちゃってる、ということなのかもしれない。
自分で自分のことを嫌ったって良いことないでしょ、と本気で思う。 そういう思いは大事だ、とも思う。 でもどうだろか? 本当のほんとうに、そこんところ見つめたほうが良いのでは?と思ったりもする。 もうちょっともがくことも必要なんじゃないの?と、真剣に考えてみる。 これは、むやみやたらに自分を攻撃するのとは別なのだ。
色んなことに対して、自分は無力だと感じる。正確に言うと、大体において無力だ。 けれども、だからって失望してるわけじゃじぁない。 それはなぜか? (たぶん)力が欲しいわけではないから。?
心の奥底で何かがいつも灯っているのを感じる。
ちいさな光 かすかな熱
一体誰が最初にこれを灯してくれたのだろう? 生まれたときからあったのか或いは生まれる前からあったのか?
この灯りのおかげで、今の自分がいるのだけは確かだ。 きみの中にも、わたしのとはまったく違う、きみだけを灯す光があるのだと、わたしは信じている。
もう随分前のことだが友人がこんなことを言っていた。
誰かと話してて何か聞かれたとき、なんて言えばいいのかすぐにわからなくて何も言えなくなるときがあるの でね、それをずーと自分の中で考えてて・・・これが結構長かったりするんだけど・・やっと言葉にしてみたら、相手はなんのこと?って顔をするのよ その人はもう忘れちゃってるのよ、もう済んだことになってるのね
そのとき(今も尚)わたしはとっても感動して、彼女のことを「素敵だーーー」と、心から思った。 自分に足りないのはそれだよ、それ!と思ったのだ。足りないというより「無い」と言ったほうが正しいかも。
実は、あれ以来、少し意識して「黙する」ようになった(つもり)。 これまであまりにもなーんも考えずに言葉を発してきたんじゃないの?という自戒の念もあって。
一度口から出た言葉は引っ込めることは出来ない。 これは書く場合も同じ。なので基本的に削除はしない方針で書いている(が、こだわる必要もないとは思っている)。 よって、書くのに時間がかかるし書き始めるのが億劫(臆病?)にもなる。 書いては消し、時間を置いては書き、の繰り返し。 だからと言って、書いたものが完璧なものになるわけでもないし完璧にしたいわけでもないのだが。 少なくとも気持ちの上では「まぁいいんじゃないの」と。 ・・・と、これは余談でした。
昔々、姉が喉の手術を受けた。職業病(声帯ポリープ)だったらしい。 手術後しばらくの間、彼女は喋ることを禁じられた。随分後になって聞いた話だった。わたしはそのとき東京に住んでいたのだと思う。 「喋れんのって辛かったでしょう!」わたしがそう言うと、驚くことに姉は「全然!あんな素晴らしいことはなかった!」と言った。
嘘じゃーーー いや、ほんとに!!
いつもいつも、それこそ声を枯らすほどに言葉を発していたのが「喋らんでいい」と言われどれだけ楽になったか知れない お見舞いの人達が来て、なんやかんや声をかけてくれるのだけど、返事をせんで良いのよ、にこにこしとるだけー で、色んな人の話を黙って聞くわけよ、あんな素晴らしい経験は今まで一度もなかったね ひとりでいるときは本を読み、誰かが来ると誰かの話を聞く 喋らんでいることがこんなに楽なことっちは知らんかった また手術してもいいくらいよ(←これはたぶん嘘)
姉の話を笑いながら聞いていたわたしだが、心の中では、あぁそんなモンかも・・・と妙に納得した。 それはもちろん、声を失うことが一時的なものだったからであろうとは思う。 実際に黙する体験をしたことで、言葉を発することについて考えさせられたんじゃないかなぁ・・・。
わたしはがむしゃらに喋る傾向にある(あった?)。 それはたぶん沈黙を避けるための一手段だったのだと思う。 相手が黙ればこちらが喋る。何かしら言葉を発してさえいれば「沈黙」というぎこちない空気を感じないで済む。 それは多分に自分側の考えすぎだ。 相手はなんも思っちゃいない。要は自分を取り繕うためのささやかなあがきなのだ。 今では相手がどう感じるかということをあまり気にしなくなった。 だからなのか黙っていると、たまに「気分でも悪いの?」と言われたりもする(面白い)。
そう言えば昔々読んだ本の中で黙想期間のシスターの話があった。(今江祥智氏だったか遠藤周作氏だったか?) その期間、シスターらは一言も喋らない、学生達とも喋らない(ミッション・スクールでの話だったと思う)、 必要なことは紙に書き連絡を取る、という仕組みだ。 確か十代の頃に読んだと記憶しているが、あのときぼんやりと「これは良いかも・・・」と思ったような気がする。
それを実行することなくこれまで生きてきたのだが、先の彼女の言葉を聞いてから「黙する」ことについて再び考えるようになった。 それは、けっして「簡単に言葉を発するな」ということではなく・・・ (気持ちのままに言葉にするということはとても素敵なことだと思う!しかもそれは案外難しいことでもあるしね)
それはつまり、 発する前にちょっと自分の中で消化させることがあってもいいんじゃないの、ということ。 一晩置くということ。 とりあえずしまっておいて後で取り出す、というような。 例えばそのまま忘れてしまったとしてもそれはそれでいい。 何かのときに浮上してくるかもしれない、そのまま葬り去られるかもしれない。 それはそれ。 ときにムンカンゲは大事なのだ。それはスペースを取ることでもある。
と、ここまで書いていて・・・ なんだか醒めてしまった冷たい人間のようにも見えるかもしれないが、いつまでも熱は持っていたい。と思っています。 ガガガガガーーーと元気に突進できる歳じゃなくなっちまった、ということかも。 が、黙することを味わえる歳に(ようやく)なれた、ということ。かもしれません。
とは言え家族からは相変わらずこんな言葉が。 「はげーあんったのアブラグチーユムハッキャー」 まっそれもそれ。ということで。
人には「役割」というものがあるんだなぁ・・・と思う。 「役割」と書くと、何やら務めのような意味合いも感じられるがそうではなく、いわば「その人らしさ」みたいなものじゃないかな・・と思う。 ひとりひとりの「らしさ」があり、その人なりの行動がある。ということ。
自分で言うのもなんだが、わが姉妹は仲が良い。価値観も似ている。 でも、ひとりひとり「違っている」それはもう面白いくらいに。 だから、母との関わりかたも姉妹4人様々である。 例えば母が何か言ったとする。それに返す言葉はまぁ色々だ。 そんなこと言わんでとなだめる娘あり。へぇそう・・・のんびり構える娘あり。よくわかるよと頷く娘あり。は?何か言った?と突き放す(?)娘あり。 言葉の内容もトーンもまったく違ったりする。当然といえば当然なのだろう。
けれども(あえて言うと)、わたしたちの「方向」は同じである。 それは、母とどうしたいのか、否、母とどうありたいのか。が、同じだということかもしれない。
姉妹それぞれが、それぞれ「らしく」母と関わるということは、案外大切なことかもしれないよ・・と、夏を思い出しながら考えている。 色んな形で母を支えるということ。 色んな色で母を包むということ。 それがゆたかであればあるほどいい。
その中でこそ、母は母らしく 在るのだ。
港でフェリーを待っているが空模様が怪しい 空を覆う灰色の雲がみるみるうちに黒く厚く垂れ込めてくる にわかに雨が降り出した・・・と思う間もなく土砂降りになった 辺りは風と雨とで殆ど何も見えない
わたしは紺の浴衣を着ている 今夜は夏祭りだ 浴衣は袖の部分がやけに短いが丈のほうはなんとか見られた 他の人がどう感じるかは別として
スコールが止み辺りが静かになった 外を見るといつの間にフェリーが着岸していた 誰かが「こっちこっち」と叫ぶ 「早くしてください!」
声のほうへ行くと作業着を着た小柄な男性が階段口に立っていた 「船に乗る方はこちらから行ってください 急いで!」
わたしは港の待合室にいた 待合室は最上階(といっても2階だが)にある 示された階段は下方に向かいゆるやかにカーブしていた そして海水に満ち満ちている
「大丈夫です そのまま進んでください 入り口はすぐにわかるようになっています」
浴衣を着ていたので一瞬躊躇ったがそんなことを言っていられない 乗り込むときはいつもこうなのだ それに 島へ向かうフェリーはこれが最終便である
わたしはするりと両手を伸ばしそのまま海水に身体を預けた (思っていたよりも水は温かい) トンと両足に力を入れ水のなかを眼を開けたまま進んだ (思っていたよりも眼は痛くない)
水の中はライトグリーンだったりライトブルーだったり色を変えた いくつかの大きな透明の光の輪がときおり揺れた しばらく進むとフェリーの白い横腹に扉が開かれているのが見えた なるほど彼が言ったとおり すぐわかるようになっている
フェリーに乗り込みしばらく泳ぎ進むうちに海水が引き いつの間にか普通の階段を上がっていた 甲板へ出るともう船は港を出た後だった
島へ着くまでに何時間かある わたしは寝ころがって休んだ 日差しはそれほど強くはなく風も弱かった
島に到着したとき辺りは薄暗くなり始めていた 水平線の彼方に少しだけ橙色の名残が見えた
わたしの旅館は港のすぐ近くにある 旅館へ行くと皆すでに食事を済ませていて、女性達はお風呂の順番を待っていた この旅館の宿泊客は女性ばかりだ
気の良さそうなおばちゃんがにこにこと夕食を進めてくれた 「アラ汁をあっためようか 何も特別な料理はないけど」 わたしは、申し訳ないがこれから友人の家へ行くことになっている、と断った 友人には島へ来ていることを言ってはいない でも歓迎してくれるだろう どうしても今日のうちに会いに行かなければ・・・
旅館を出て商店街のほうへ向かった 島の中心地とも言えるところだが、一本のちいさな道路の両脇にさびれたようなお店が並んでいるだけのものだ 時間が遅いせいか殆どの店はもう閉まっている だがけっして少なくはない人達がそこらを往来していた 街灯の下ではおばちゃんがたが顔を寄せ合って話し込んでいる
友人の家までの道のりを頭のなかで反芻しながら歩いた この島は相変わらず何も変わっていない だからきっとすぐにわかる筈
商店街を抜けセメント塀に囲まれた家々を何軒か過ぎ ふたつめの角を左手に曲がる そこが友人の家だ
と、ふたつめの角に男が座っていた 男は黒づくめのスーツを着ている 背が、とてもとても、とても高い 彼の前には学校用の机が置かれていて(長い脚が両脇から伸びている)、机の上には白い紙切れが積まれていた
その男性は有名な元バレーボール選手とよく似ていた(もしかしたら本人なのかなと思うほどに) 眼が合ったので何か言おうと思ったが、彼の名前をどうしても思い出せなかった 軽く会釈をして通り過ぎようとしたところに声をかけられた
「ご友人さんのところは今ちょっと立て込んでいますが・・・ あぁ でも、あなたであれば行っても差し支えないでしょう というか、むしろ、是非行くべきです どうぞ行ってあげてください!」
意味がわからない、という顔をしていると 彼はにこやかに手をあげ自己紹介をしてきた 「驚かせてしまいましたね 僕は彼の友人で川越といいます あなたのことはよく聞いています 奥さまからも聞いています 今回は、本当に残念なことになりました」
角からちょっと覗きこむと、友人の家は葬儀屋による装飾で包まれていた 家の門には大きな提灯が灯されている わたしはドキッとして目の前が真っ暗になった 闇のなかで世界がぐらりと歪んだ どうしよう、、、
「あっ違います 彼も奥さんも大丈夫です 亡くなられたのは別の方です」 彼は慌てて付け足した わたしは眼を閉じたまま大きく深呼吸した 良かった・・・ 「あなたの知らない方です 実は彼らもそんなに親しかったわけではない ただ、彼らにしかこのようなことが出来なかった というだけです」
「あの わたし、こんな格好で来てしまったんですけど、、、」 そう言ってから自分の姿をあらためて見ると、それはもう酷かった ずぶ濡れになった浴衣はところどころ乾いていて、その部分に強い皺ができている 顔や髪はどうなっているんだろう・・・わからないが想像は出来た Do I look...? なぜか英語で言いかけて、止めた このうえなく酷いに違いはない
川越氏は、「大丈夫です そういうの気にする人達じゃないことはあなたこそよくわかっている筈です」と快活に答えた それはいささか場違いな明るさにも思え、わたしはますます変な気分になった
おずおずと門をくぐった 入り口は大きく開け放たれていて 中に友人たちが小さく座っているのが見えた 彼は喪服、奥さんのほうは着物の喪服であった ふたりとも憔悴しきった顔をしている 前に会ったときよりもさらに年老いて見えた
「あの、、、」 入り口に立ったまま声をかけると彼女のほうが先に気付いた 「あぁ!まぁまぁ・・・まぁ・・・!」
「あの、、ごめんなさい、連絡もなしに、、、」
ふたりはわたしの言葉を遮り、立ち上がって近寄り、心から歓迎してくれた 彼女は、いつものようにわたしを抱きしめてくれた その身体が前よりも小さくなっていて、わたしは胸が痛くなった でも、ふたりの顔がほんの少しだけ明るくなったような気がしたので嬉しかった
それから、「ごめん、説明するのは後でもいいかな 説明のしようもないんだけど・・・」と彼が言った 彼女は悲しそうな顔で俯いていた わたしは なんと答えたら良いのかわからず ただ黙って頷いた
彼らはまた同じ位置に戻って正座となった わたしも部屋の片隅に座った 淋しいお葬式だ・・・と思った 写真やら線香やらはなかった 花もなかった 弔問客も少なかった もしかしたらお葬式とはまた違うものなのかもしれない
ふと、そこに懐かしい友人がいるのに気付いた(十数年ぶりの再会だった) 彼はとても疲れた表情をしていたが、わたしの姿を見たときほんの少しだけど驚き、そしてわずかに微笑んだ(ように見えた) わたしは顔がこわばってしまってうまく表情を作ることが出来なかった ぎこちなく口元を動かしただけになってしまい申し訳なく思った
「で、どうするよ」 正座したままその友人が言った どれくらいの時間が経ったのだろう わたしたち以外はもう誰もいなかった 「わからん」と、彼は苦しそうに答えた 彼女は黙ったまま眼を閉じうなだれていた
どうやらわたしは来てはいけないときに来てしまったようだ しかも、出て行くタイミングをも逸したらしい が、もうどうにもならない そのまま空気のように座っているしかなさそうだ
「島はどうなる」 「わからん わからんがどうにかせんと」 ふたりは難しげな顔で話している
わたしは、終わりのない話題だ・・と心の中で思い、すっかり途方に暮れてしまう そのときふと、さっき通ってきた商店街での人々の言葉が浮かんできた 「投票場所はこちらです 選挙会場はこちらです」
でもわたしには選挙権がないのよ・・・
そのことで、なぜかとても救われた気持ちなる
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