小ネタ日記ex
※小ネタとか日記とか何やら適当に書いたり書かなかったりしているメモ帳みたいなもの。
※気が向いた時に書き込まれますが、根本的に校正とか読み直しとかをしないので、誤字脱字、日本語としておかしい箇所などは軽く見なかった振りをしてやって下さい。
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再録:1月25日(笛/郭英士)。
2011年02月19日(土)
今日から年上期間。
イトコというのは、自分の父母の兄弟の子どもの関係を示す語彙である。戸籍法で言うなら四親等の関係に当たり、同法の定める三親等以内の関係ではないので婚姻は可能であるが、それは蛇足なのでさておき。 三文字でイトコといっても、日本語では漢字によってその内実が異なる。おじあるいはおばが、自分の父母より年上の兄弟か年下かで伯父か叔父か、と分かれるように、イトコも男女によって従兄弟、従姉妹、という違いに始まり、年齢差によって従兄、従弟、従姉、従妹、と細かく分かれるのだ。 そんな面倒な日本語表記でいうと、郭英士の従妹は『妹』の字面通り、彼より年下に当たる。たとえ同じ学年であろうが何だろうが、彼女は彼の妹格なのだ。
「…これでまた年下になっちゃったなー」
あーあ、と大仰なためいきをついて件の彼女はクッションごとベッドに倒れ込んだ。 真後ろからそれを見ながら、英士は脱ぎ散らかした彼女のコートやらマフラーを拾った。
「別に今更上も下もないでしょ」 「だって英士のくせに私より年上なんてずるくない!?」 「…だったら自分のコートぐらい自分でハンガーにかけたら」
じろりと横目で睨んだが、英士のベッドで引っくり返っている彼女は首だけ相手のほうを向けた。
「だって英士がやってくれるもんね?」 「…そういうこと言ってる限り一生年下だよ」
この姫様体質、と今日から数ヶ月間完全に年下になる従妹に英士は悪態を吐いてみたが向こうは気にしていない。
「だって今日もー疲れたー。人多すぎ歩きすぎつーかーれーたー」 「しょうがないでしょ、人多いところ行ったんだから」 「英士ー」 「なに」 「脚もんでー」 「踏むよ」
英士は自分のコートを脱ぎながら即座に言い返す。向こうが無念そうに半身を起こす気配があった。かったるそうに長くなってきた髪を手櫛で引っ張りながら、彼の従妹はふいと横を向く。
「いーじゃない、そのぐらい。けち」 「へぇ?」
そうでなくても今日色々世話を焼いてきた気のする従兄として英士は若干感じるものがあった。 ときどき思うのだがこの従妹は自分の存在にありがたみとかそういうものはないのだろうか。…あるにはあるのだろうが、さっぱり見せようとしないあたりどうしようもない。
「…脚だっけ?」
ふっと息を吐いて尋ねると、彼女は意外そうに首を傾げた。
「やってくれるの?」 「言っとくけど、脚だけで済むなんて思ってないよね?」 「は? いや英士そんなベタな」
わざと適当に脱いだままだったコートをそのあたりに放って、ベッドに片膝を乗せるとスプリングがきしむ音がした。 もうヤケだ。英士はひきつった顔になった従妹ににっこりと笑う。
「それ、誘い文句でいいんでしょ?」 「さそ、誘ってない誘ってない誘ってないってばぎゃー!」
肩のあたりに伸ばした腕を当てて自分ごとベッドに倒してみると、見事に抵抗された。それも当然で、英士がやったのは位置を少し変えたプロレス技のラリアットに近い。
「…若い女の子としてその叫び声はどうかな」 「若いから女の子なの! 英士より若いんだからね!」 「さっきと言ってること違うんだけど」
ついでなので起き上がろうとした相手の首を、英士は背後から腕で固める。
「ちょ、英士苦しい苦しい!」 「ああごめん」 「…いやだから離そうよ。あとお願いだから間接技はやめてね。そういうのは一馬くんに」 「一馬に何か恨みでも?」 「いや、なんとなく一馬くん丈夫そうだから」 「ひとの親友に失礼な。俺は一馬より結人のほうが一度シメたいね」 「英士も結構失礼だと思うよ」 「そうでもないでしょ」
しれっと言うと、座ったまま片腕でホールドされている彼女がぐいと英士の腕を押し出し、輪から抜けると向き直った。
「英士」 「なに」 「誕生日おめでとう。大好きよ」
無敵の笑顔で告げられ、英士が拍子抜けた隙に従妹はベッドから降りドアのほうへ逃亡を試みていた。
「…すごい逃げ方だね」 「いやほら、さっき買ってきたケーキあるでしょ? あれ食べよ。持ってくるから」
じゃそういうことで、と早口で言いながらドアの外へ逃げていく従妹を、英士はわざわざ引きとめようとは思わなかった。少しらしくなかったかもしれないと思いながら、先ほど放り出したコートを取り上げ、丁寧に伸ばしながらハンガーに掛ける。 十七になり、身長も中学生の頃より伸びた。成長期を過ぎた従妹とは、背丈の差は増えるばかりだ。コート一つ取っても並べるとサイズの差が明らかで、些細な年の差よりそちらのほうが気になる。
(そのくせ相変わらず決め台詞は変わらないし)
一体あの従妹はいくつまで大好きを繰り返すのだろうか。
「…別にいいけどね」
この感想も、一体いつまで思い続けることか。 小さく笑ってしまう自分を認め、英士は先ほどと同じ場所に腰を落ち着けて従妹を待つ。 そそくさと部屋を出て行ったとき耳のあたりを赤くしていた彼女が一階でどんな顔をしているか考えると、少しだけおかしかった。
誕生日おめでとうございます。
************************* 2004年の英士誕生日ネタでした! ※当時の英士さんの誕生日は17歳とかではありません。
いずみさんからのリクエストで、「各キャラ誕生日ネタを」とのことでしたので、日記がこっちに移行してからあまり書いていなかった英士さんと従妹を出してみました。
字面だけで「同じ学年の従妹」と決めたのが、デフォルト名の靜さんです。 いまさらですが、「しずか」と読みます。以前「せい」かと思ってました、という意見があったので(そういえばそのほかのヒロインズは読みにすると三文字が多い)。
もう一つ。 メールフォームを、目次ページ以外にもつけてみました。 この日記本文ページの下にあります。 過去再録のリクエストはストックが切れるまで受け付けさせていただきますので、ふと思い出したものがありましたらいつでもお寄せ下さいませ〜。 そして新作、新作を、ね…(がんばります)(真田止まっててすみません…)。
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再録:掌(笛/三上亮)。
2011年02月13日(日)
一番大切なものほど一番上手く愛せない。
「知ってるわよ、そんなこと」
青年にしてみれば決死の思いを、彼女は即座に切り捨てた。 決闘場のように二人の間を潮の香りが勢いよく通りすぎていく。 冬の海。予報では雨か雪になるという曇天の空の下、無人の砂浜で対峙する彼らの空気は切迫していた。 彼女は風に混じる砂粒に顔をしかめ、流された髪を手櫛で直しながら彼を見据える。
「あのね三上、いまさらあなたに私のこと一番に考えろなんて言わない。出来るわけない人にそんなこと期待するわけないでしょう?」
普段より早口の彼女の目だけが少し泣きそうだ。悲しいのではない。もどかしいのだ。自分の気持ちを上手く表現出来ない自分自身が。 似た者同士なのだと、三上は以前から考えていたことをさらに確信した。 大事だからこそ慎重で、傷つけたくも傷つきたくもない。相手のことになると器用に立ち回れない。嫌われたくないと、その一心が素直にさせてくれない。 ただ、好きなだけなのに。 その言葉を上手くいかなくなるたび幾度繰り返しただろう。
「…出来ないことを、して欲しいなんて思わない。そっちもそうでしょう? 私に私でなくなれなんて無茶言うほど馬鹿には見えないもの。私もそう。素直に感動したり素直に笑ったりする三上と四六時中いたいなんて絶対思わない」
さらに早くなる口調。日頃落ち付いた喋りをする彼女にしては珍しい。 三上はそれを止めたり阻もうとは思わない。よくわかっている。早口は、三上と同じように不器用な彼女が精一杯気持ちを伝えようとする前兆だ。
「私は、上手く愛して欲しいなんて思わない」
はじめて彼女の手が三上に伸ばされた。 男物のコートを掴む女の手。白い指先が三上の心臓の上から彼を捕らえる。 泣きそうでも強い瞳。凛として揺らがない彼女の強さ。稀に弱く脆いが、時に激しくひたむきだ。 負けた、と三上は心の中で呟く。ここでさらに逃げたら彼女は二度と手に入らない。
「…俺、マジでサッカーしか出来ねえぞ」 「サッカーが出来るからプロの世界にいるじゃない」 「…まだJ2チームだし」 「今期3位だったんだから、次も可能性あるでしょう?」 「長男だぞ」 「私が末っ子だからバランス取れていいじゃない」 「…もし移籍とかしたら転勤だぞ」 「行けるところまではついていってあげるわよ」 「………」 「これでも多少は覚悟してるのよ」
多少どころか充分だ。 ためいきにならないよう苦心し、三上は冬の海岸線を目の端に捉える。雪は降るだろうか。降らずとも構わないが、出来るなら彼女と一緒に見たい。 上手く愛せないかもしれない。この先もずっと、心配や苦労を掛けるかもしれない。 それでも、構わないと言う彼女に甘えてもいいのだろうか。 逆に泣きたくなりながら三上はふと気付く。いつの間に、自分以外の人間がいなければ駄目なのだと自覚してしまっているのか。そんな男は弱いだけだと十代の頃思っていたはずだったというのに。 それなのに、今の自分を十代の頃ほど嫌いだとは思わない。 彼女に会って、別れて再会して、最後に辿り着いたのは『三上亮』を嫌いではない自分だ。 誰かを愛すること。自分を好きになること。それを覚える間、胸の中に在った面影。
「三上」
促す声。やさしい笑み。支えてくれる手。 言葉は、行動は一つしかない。
「…ずっと一緒にいろよ」
胸に当てられた手を掴む。支えを求めて引き寄せる。肩口に額を押し付けた。 熱くなった耳できっと泣きかけたことを悟られた。彼女は笑わず、受け止めその手で彼の背中を撫でた。
「…言われなくても、今更離れるわけないでしょう?」
お互い明確な言葉にはならない。そう出来ない。 わかりやすさだけが気持ちを伝える手段ではない。しょうがない人だと小さく笑う彼女は結婚の二文字を言えない三上を責める気は微塵もない。肩の重みも笑って許せる。 完全に理解することは難しいかもしれない。けれどきっと、認めることは出来る。 ふと見上げた空と海の境目に、白い何かが舞おうとしていた。
*************************** 微妙っぽいですが、正規更新の三上話『白色挿花』の続きっぽく。 …という感じで、2003年11月24日より、再録です。
リクエストくださったアヒルさん、ありがとうございました! 元ネタがミスチルの曲だというヒントを元に、この曲の発売時期から逆算して探しました。 た、たぶんこれだと思うのですが、どうでしょう…?(違ってたらすみません)
当時コメント。
> 完全に人間同士が同化出来るとは思えない。だけど、いいところと悪いところを認め合って、許容したり譲り合ったりすることは出来ると思います。そうなれたらいいと思います。
今もそう思います。
あっちこっちちらぱっているのを集めようキャンペーンということで、再録リクは当面受け付けております。 先日からこそっと小ネタ用メールフォームをつけてみました。 ここの一番下です。 何かありましたらお気軽にどうぞ〜。 ジャンル・キャラ・こういう場面だった気がする、といったヒントを下さると、探すのに大変助かります(だいたいでいいですので)。
特になくても、このキャラのやつ、と言っていただければ何か引っこ抜いてきます(私が読むに耐えうるものを…)。 小ネタでフォロー前提だった三上は、鉄壁ですが。
前回募集したことで早速何通がリクいただき、本当にありがとうございます! これまでメール下さったとか、はじめましてが今回だとか、そういうのはお気になさらず! 私まったく気になりません。 だってメールって送るの、勇気いると思うので、何かきっかけないとむずかしいですよね〜…みたいな(私がそう)。
話変わって、雪が降ったりとこの寒さとその前の暖かさの差でか、私の胃も大荒れ模様となりました。 雪の連休は、何日かぼーっとベッドからそれを眺めました。 枕元がすぐ小窓で庭を眺められる(そして公道に面していない)って、意外とぜいたくっぽい?と思う小市民です。
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