小ネタ日記ex

※小ネタとか日記とか何やら適当に書いたり書かなかったりしているメモ帳みたいなもの。
※気が向いた時に書き込まれますが、根本的に校正とか読み直しとかをしないので、誤字脱字、日本語としておかしい箇所などは軽く見なかった振りをしてやって下さい。

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再録:ふじしろくんとかさいくん8(笛/藤代と笠井)。
2010年03月16日(火)

 その日、藤代誠二の機嫌は遥か上空にあった。










 やわらかな早春の光が差す、慣れた寮の廊下を歌いながら闊歩するその表情は今日の太陽と同じ色をしている。
 藤代は春が好きだった。
 暖かい陽気と、のどかな風景。心安まるのと同時に浮かれた気分が目を覚ます。
 調子に乗って二番まで歌い出しながら、彼は自室のドアを開けた。


「…っくしゅ!!」


 その途端聞こえたのは、部屋の中にいた笠井の大きなくしゃみだった。
 その音があまりにも突然で、藤代は歌うのをやめる。

「びっくししたー」
「…変な日本語を使うなよ」

 黒い目を丸くしかけた藤代を、口許を手で押さえている笠井が軽く睨んだ。その左目が少し赤い。
 完全に部屋に入り、藤代はドアを閉めた。
 笠井は右手の甲で目許をこすっている。

「あ! 竹巳、目かゆいときって掻いちゃダメなんだぞ!」

 びしりと藤代が強い語調で言うと、笠井は眉間に皺を寄せた。

「わかってるけど、かゆいものはかゆいんだから」
「目薬差してほっとけって言われてたじゃん」
「…藤代に花粉症の辛さはわかんないよ」

 笠井の声音は弱く、拗ねたように口を尖らせる。
 どちらかというといつもと逆の構図だった。
 笠井は藤代の制止にも関わらず、椅子に座ったまま左目の瞼の上を揉みほぐすように手の甲を上下させている。

「辛そうだよなー、花粉症って」
「いつかお前も思い知れ」

 不意に笠井の開いている右目が強く光った。
 あ、機嫌悪そう。
 先ほどの自分とは対極の精神状態にある親友を慮って、藤代は反論せず曖昧な笑いを見せた。笠井の機嫌が悪いときは逆らわないに限る。怖いから。
 目下のところ恨むべきはスギ花粉だ。しかし、これがまだ五月あたりになると別の草花の花粉になるということも藤代は知っていた。

「薬は?」
「飲んでない。あれ眠くなって集中力落ちるし」
「飲めよ。目かゆいよりマシじゃん?」
「嫌だ。断固拒否する」

 右目よりやや弱いという左目を真っ赤にしておいて、嫌だも何もない。
 藤代はそう思うが、飲み薬の類を苦手とする笠井を説得する話術が彼にはない。

「だいたい病院の薬効き悪いし、いいよ、俺は時期が過ぎるの待つよ」

 はあ、と語尾にためいきが重なった。
 本当に辛そうな様子だったが、生まれてこのかた花粉症というものの経験がない藤代にはいま一つ共感し辛い。
 藤代は春が好きだが、笠井はそうではないのだ。

「ああもう春なんて大っ嫌いだ!!」

 とうとう笠井が叫んだ。目に涙が滲んでいるのは悲哀ではなく痒いからだ。
 くそ、と彼らしくない罵声がその後に続いた。

「…かわいそうだなあ、マジで」
「俺は同情よりもまず体質改善の秘訣が欲しいよ」

 ふふふと乾いた笑いを張り付けて、笠井が余所を向いた。
 しかしこればかりは友人とはいえ他人の藤代にはどうしようもない。笠井もわかってはいるのだが、言わずにはいられないのだ。

 笠井の苦労はあと数週間ほど続く。








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 花粉症にまつわる再録です!
 いきなりシリーズの8から引っ張り出しましたが、シリーズとはいえ全く話の繋がりはありませぬ。

 花粉症というと、デビューの年を迎えた人というのは大体「これは花粉症じゃないから!」とやたら必死に否定している気がする。今年も3人ぐらい見た。
 ハハハそんなこと言ったって、時期性のものだって来年になったらすぐわかるんだぜ?
 さっさと認めちゃえYO!
 そして洗濯物を完全部屋干しにするといいのさ…(この時期、特に寝具を外干してはいけませぬ)。

 前の部署の先輩も、「いや俺のこれはただの鼻炎だから!」と最初の年は言い張ってましたが、二年目からは誰がどう見ても重度の花粉症の症状でした。
 その先輩、数年過ぎたいまは、時期が来ると病院に通ってます。

 ちなみに私は二十代初期に発症しましたが、それほどひどい症状は出て来ないです。
 目がかゆいのと、鼻がかゆいのと、肌がかゆいのぐらいで。
 アトピー肌なので、ひどいときは肌が真っ赤にかぶれて熱を持ち、えらいことになります。
 それに猫アレルギーが加算されると、目も顔も真っ赤、というえらいことに。
 猫が近くにいる&生理前&花粉症、のトリプルアタックを食らったときほどおそろしいものはない。
 鼻水症状はほとんどないのがまだ良いところか。

 実のところ写真撮られるのが嫌いになった最大の原因であるほどに、アトピー肌はコンプレックスなのです(子どもの頃アトピー肌の自分の写真を見てすごいショックを受けた)。
 今年はあまり顔がかゆくなりませぬように、と願がけしてみる。






再録:卒業(笛/木田圭介)(大学生)。
2010年03月11日(木)

 桜にはまだ早いけれど。










 薄曇りの朝は昼に近づくにつれて消え去り、三時を過ぎる頃には早春の青空が臨めるようになった。

「きーだーっ! こっちこっち!」

 何やら大荷物を抱えた振り袖と袴姿の声が、その学校の前で待ち人を捜していた彼を呼んだ。
 遠くからでも彼女の朱地に白い桜が散った振り袖が人目を引くが、着物以上に整った繊細な顔立ちがすれ違う者を振り返らせる。たとえ本人がそれに頓着せず、優美に歩かずにブーツの踵を高らかに鳴らしながら小走りになっていても。

「走るなよ。転ぶぞ」
「んなヘマするわけないでしょ。いいからこれ一度車に置いてきて、そしたらあっち来て」

 一方的に言うと、彼女は木田に花束や卒業記念品と印字されている紙袋を渡した。
 その拍子に結い上げた髪がさらりと揺れた。先日の成人式での純粋な振り袖姿もそれはそれで似合っていたが、袴にブーツという女学生スタイルも彼女にはよく似合っていた。
 押し切られるより先に荷物を受け取った木田は荷物よりも彼女のその格好のほうが気になって仕方ない。

「なによ。似合わないって言いたいわけ?」

 木田の視線に気付いた彼女はやや不機嫌そうな顔を先に作った。

「そんなこと言ってない」
「…じゃあ、似合うの一言ぐらい言えないの」
「俺が言わなくてもどうせ他のやつに言われただろ」

 木田の不用意な一言は、にっこり笑った彼女の笑顔と靴の上から思いきり踏み下ろされたブーツの踵で返ってきた。

「あたしは、あんたに言って欲しいって言ってるの!」

 浮かべるのはたおやかな笑顔のくせに、口調はきつい。
 表情と口調が全く合っていない。いい加減慣れた木田にはさして衝撃はないが、この学校で出来た友達とやらが最初にそれを見たらさぞ驚いたことだろう。

「…黙ってれば綺麗だと思うが」

 責められて素直に薄情するのも悔しく思え、木田がそんな憎まれ口を叩くと、今度は平手で頭をはたかれた。
 わざわざ長身の木田に合わせて背伸びをした彼女は思ったことは即座に行動するタイプだ。

「どうしてそうあんたって一言余計なの」
「…あのな、それがわざわざ休みに迎えに来てやった人間に対する態度か」
「うるさい。どうせ四大生は春休み中でしょ。暇なら付き合いなさいよ。こっちは朝から着付けやら何やらですっごい大変なんだからね」

 成人式にも聞いた覚えのある愚痴をぶつけられ、木田はこれ以上何か言うのはやめようと心に決める。苛立った女には逆らわないほうが無難だ。
 腕を組んだ彼女は口の中だけで「まあいっか」と呟いた。

「ともかく、それ置いたら正門のほうに来てね! みんなで写真撮りたいから」

 要するに臨時カメラマンにしたいわけだな。
 確認するのも無意味に思え、木田はその言葉を飲み込んだ。
 どうせ短大の卒業式に車で迎えに来いと言われた時点で今日一日使いっ走りにさせられることは覚悟の上だった。

「はいはい」
「んじゃよろしくねー」

 軽く手を振って、彼女は踵を返した。
 ひらりと舞う和装の端に、木田はそういえばと言っていなかったことを思い出す。

「なあ」
「ん?」
「卒業おめでとう」

 かつん、とブーツのヒールが止まる直前の音を弾いた。
 振り返る彼女が、出会った中学生の頃と変わらぬ無邪気な笑顔を見せた。


「ありがと」


 卒業おめでとうございます。








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 再録はどこまで続くのか。
 最後のブーツを鳴らして振り返る姿が書きたくて書いた記憶があります(2003年当時)。

 実家に行ったら、またしても兄が買ってるマンガと私の買ってるマンガが重なっていました。
 私らはいいかげん、ハガレンを買うときには連絡し合うという習慣をつけたほうがいいと思う(何冊ダブっているのか…)。
 今回はバグマンの新刊がダブりました。
 他人ならいざ知らず、貸し借り簡単な身内でマンガの購入が重なると、非常に口惜しい。
 私はカヤちゃん派(服の好みは青樹さん派)ですが、兄は亜豆さん派だそうです。
 ラッキーマンならひしょかちゃん派です。




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