小ネタ日記ex
※小ネタとか日記とか何やら適当に書いたり書かなかったりしているメモ帳みたいなもの。
※気が向いた時に書き込まれますが、根本的に校正とか読み直しとかをしないので、誤字脱字、日本語としておかしい箇所などは軽く見なかった振りをしてやって下さい。
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タイニープリンセス(種/シン・アスカ)(長編下書き)。
2007年04月28日(土)
※あまりの長さにエンピツさんから「原稿用紙20枚で納めてね」と言われてしまったので、別ページです。
タイニープリンセス
続きがいつ出るのかさっぱりわからないので、途中切れでも構わない方のみどうぞ。
…最近種の小ネタ書いてないなぁ、ということで、以前企画で出そうとしたもののあまりの設定の微妙っぷりに没入りしたものを引っ張り出してみました。
若トダカ護衛隊長と小カガリのネタでいこうかとも思ったのですが、先に二十代シンと秘密のお姫様が出ました。私は本当に結構シンが好きなのだな、と最近原作シンを観ているとよく思います。
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もしも君が(笛/渋沢と三上と彩)(ロミジュリパラレル)。
2007年04月27日(金)
たとえば君がジュリエットだったら。
堅い石畳の上を、馬車がにぎやかに駆け抜けていった。
空中都市ネオ・ヴェローナは石造りの街だ。雨上がりの湿った匂いが、暗い色彩の町並みを包み、石の上を風が涼やかに渡っていく。
春の女神は今が舞いどきだ。この街へ訪れてからというもの、時折恵みの雨を降らせた後はずっと花を咲かせる陽気が続いている。
「…ねえ、あの馬車、何様のつもりかしら」
中央広場へと続く道の途中で、フードを目深に被った少女が低い声で隣に呟いた。顔を覗き込めば、柳眉をひそめた不快げな顔であることはすぐに知れただろう。
渋沢克朗は神殿騎士の証である長剣を佩いた姿で軽く息を吐いた。
「貴族だろう。侯爵家だな」
「どうしてわかるの?」
「紋章が見えた」
「貴族だって何だって、あんな暴走馬車を公道でのさばらせるなんて危ないじゃない。このあたりは子どもだって多くいるのよ」
「奴らに交通道徳はない」
渋沢がきっぱりと言い下すと、ちょうど彼の足元で水溜りが跳ねた。
素っ気無い紺色の詰襟長衣と金色の縁取りのある服は神殿騎士ならば誰でも同じ格好だったが、彼が着ると並の貴族よりも風格がある。
「…だからといって、どうして皆放っておくのよ」
「だからといって、君に出来ることは何も無い」
おとなしく黙っていろ、と暗黙的に告げる幼馴染の騎士に、彼女は悔しげに唇を噛む。
貴族が平民を支配するのが当然であるネオ・ヴェローナにおいて、その程度で逐一統治者である大公に陳情したところで無駄であることを、渋沢はよく知っているに違いない。
「渋沢」
「広場に近づけば人も増す。フードは取るな」
穏やかそうな顔をしながら厳しく言ってくる渋沢に、少女は束の間不愉快さを覚えた。本来ならば従者格であるはずの相手に命令されるのは、血が許さない。
しかしそれも家が廃された今、何ら意味を持たない主従関係だ。すぐにそう思い直し、言われたよりさらにフードを深く被り、顔を隠す。
すると渋沢は少し笑ったようだった。
「…悪いな、暑いだろう」
「平気よ、この程度」
「そうか」
目的地である礼拝堂は、中央広場の南に面した場所にある。六角形を象った広場に二人が足を踏み入れると、そこには不自然な人だかりが出来ていた。
「何だ?」
「渋沢、あれ!」
少女が鋭く渋沢に視線を送ると、彼もすぐ人だかりの理由を見つけた。まだ十になるかならないかというぐらいの幼女が、宮廷衛兵に足蹴にされている。
痛々しい子どもの泣き声が辺りに響いているが、周囲の人間たちは囲んで見守るだけで、誰も何も言わない。
かっとなった少女が脚を踏み出したとき、渋沢の強い力が腕を掴んでくる。
「離しなさい!」
「行くな」
「だからといって、見逃せるわけがないでしょう! どうして放っておけるの」
「手を出せば貴族院の連中に罰せられるのはこちらだ」
渋沢の厳然とした目に気圧され、少女は反論に詰まった。それがどうした、と言ってしまいたいのに、そうできないだけの理由がある。
彼女の腕を無理やり引き、人だかりから引き離しながら、渋沢は低い声でたしなめる。
「俺だってわかってる。だけど」
「だけど何」
「君を守りたい」
さらりと言われたはずの言葉に、彼女のほうは泣きたくなった。けれど彼のその決意を疑うことは忠誠心を疑うことでもあり、主の身としてそれは出来ない。
力が抜けた主に気づいたのか、渋沢は腕を掴む力を緩めた。
その隙に、彼女はゆっくりと歩みを止める。広場の中央にいる子どもの声は聞こえなくなっていた。
「…気持ちは、すごく嬉しいわ」
でも、と突然彼女は忠実な従者の手を振り払う。
「何もせず、傷ついた民から背を向けるのも私は許せない」
突如身を翻し、渋沢が追いにくいよう人の波に向かって走り出す。
守れる力が今あるのなら、今ここで使いたい。後先を考えている余裕はなかった。小さな子どもが横暴な権力の犠牲になる国を、前大公である父は必ず嘆くはずだから。
「どきなさい!」
声を張り上げて、民衆の隙間を縫う。
転げるように広場の中央に出たとき、奇妙な歓声が聞こえた。
「…おい、誰が泣いた子どもに暴力振るえって命じた?」
彼女の目の前で、艶やかな黒髪が陽光を弾いていた。
鮮やかな青のマントの肩留めの輝石が、その黒髪と同じように光を弾く。わずかな風に髪を揺らしながら、その青年は傷ついた子どもを守るように兵士の前に立ちはだかっていた。
「所属と名前言え。俺から上司に伝えてやる」
それは、力がなければ言えない脅しだった。
そして彼は子どもを立たせ、一緒にいた従者らしき短髪の少年に預けると暴行していた兵士たちをまた別の兵に引き渡す。采配は見事だった。
そのうちに、彼が何者なのか把握した誰かの声が、ざわざわと波紋のように民衆に伝わっていく。
「亮様じゃないのか、あれは」
「三上家の次期大公か!」
また貴族だ。相手の正体を知り、少女は一層悔しさを募らせた。自分が子どもを守れなかったことよりも、貴族が貴族をかばう茶番に腹が立った。
「どうせ助けるなら、もっと早く来ればいいでしょう!」
仁王立ちになり、声を張り上げれば視線が一斉に自分に向くのを感じた。その空気の流れが前髪に当たっていることから、被っていたはずのフードが取れ、顔を晒していることに気づいたがもう後には引けない。
黒髪の彼も振り向く。
強い、黒曜の双眸だった。端正な顔立ちが引きつり、彼女を睨む。
「…んだと?」
「言った通りよ。偽善で正義面しないで」
「お前、何だ」
「…通りすがりの市民よ」
「名前は」
「あなたに名乗る名なんてないわ」
誰に対して名乗る名も持ち合わせていないことは隠し、彼女はせせら笑った。きっと相手は激昂するだろうと思っていたが、予想に反して彼は口の端を歪めた皮肉げな笑い方を見せただけだった。
その目だけは、やけに楽しそうに彼女を見ていた。
「気の強ェ女」
「余計なお世話よ」
衆人環視に晒されることへの恐怖はあったが、この男に弱気な顔を見せたくないあまり、ただただきつく睨みつけて平静を装う。
「余計なことをしたのは君だ」
「…っ、渋沢!」
不意に後ろから声を掛けられ、動揺した隙に覚えのある手に腕を捕まれる。
「姫が失礼を致しました。無作法な真似をお許し下さい」
琥珀色の髪をした神殿騎士が、慇懃に詫びる。黒髪の相手が面白くなさそうに鼻で息を吐くと、それが了承とだとばかりに渋沢は少女を自分のほうへ引き寄せ、脚を逆方向へ向かせる。
「行くなと言っただろう」
「…ごめんなさい」
結局何も出来なかった上に、顔まで晒した。守ると言ってくれた彼に返す言葉は、謝罪以外出て来なかった。
「おい!」
急に声が降ってきた。振り返ったのは必然だった。
見ればそこにある、黒髪の下の強い瞬き。
「騎士に問う。その女の名は」
まるで君主の物言いだ。何という傲慢かと、彼女が憤りかけたとき、渋沢がかすかに笑った。媚びへつらう笑い方ではなく、何を馬鹿なことを、とでも言いたげな余裕が見て取れる。
「かりそめの呼び名に何の意味が?」
どうせ二度と会わないんだからな。
あまりにかすかに呟かれた続きの言葉は、少女にしか聞こえなかった。
騎士は青年に礼を返すこともなく、黙って背を向けた。その手に引かれながら、彼女は思わず黒髪の青年を振り返る。
目が合い、外せなくなる。あれほど高慢な貴族に見えた青年は、騎士の拒絶に衝撃を受けたのか顔を少し歪めていた。その顔がどこか寂しげで、胸をつく。
「…彩よ!」
届いて欲しいと願いながら、彼女は彼に言った。
「彩。覚えておいて」
なぜそう言ってしまったのかはわからない。
余計に苛立ったような渋沢にとうとう肩を抱かれてその場を連れ出されながら、彩は見えなくなるまで青年と視線を合わせていた。
「どういうつもりだ」
「…わかってる。軽率だったことは謝るわ」
すべての予定を取りやめ、生活している寺院に戻った彩は、渋沢の説教を覚悟しながらゆっくりと帽子を取った。長い髪が肩に流れ落ちる。
整った眉目を怒りに近い形に変えながら、渋沢が深い息を吐き出す。
「わかってないだろう。もしあの場で、君の顔を覚えている奴がいたらどうする」
「私が顔を出して生活していたのは四歳の頃までで、しかも相手は貴族ばっかりよ。あの場所でわかるわけないでしょう」
「わかる奴だっている。君は四歳の頃から顔は変わっていない」
「…ああ、そう」
外套を取り、手早く振って埃を落としながらフックに掛ける。
四歳の頃過ごしていた邸宅で今も暮らしていたのなら、外出の身支度を自分でするようにはならなかっただろう。
「それに、どうしてあいつに名前を教えた」
「ただの気まぐれよ」
「そんなわけあるか」
昔なじみは、彩ほど「気まぐれ」が似合う奴はいないと固く信じているだろう。しかし彩自身にも気まぐれとしか思えないのだから仕方ない。
「…あなたがあんまりすげなく答えるからでしょう」
「あの男に答える名などない」
暗く厳しい顔つきになった渋沢に、彩は奇妙な不安を覚えた。
この街の建物の例に漏れず、石で作られた寺院の奥は静かだ。回廊を渡る風の音だけが耳に届く。
「あいつは三上家の嫡男だ」
明朗な渋沢とは思えない、陰を帯びた声だった。
聞きたくない家名に、彩は思わず視線を逸らす。
三上の家は、彩の失った家名とは対を成す。どちらもこのネオ・ヴェローナでは大公家と呼ばれる。しかし、彩の本来の家名はすでに断絶したと公には公表されている。
「俺たちの一族の仇の息子だ」
憎悪と憤激と、悲哀と復讐心。そんなものがない交ぜになった渋沢の声がいたたまれなくなり、彩はさらに視線を彷徨わせる。
あの青年が三上の嫡男であることよりも、渋沢のその声のほうが余程胸に痛い。
三上の家に陥れられ、地位を追われ、一族を皆殺しにされた過去をどうでもいいとは思わない。幸せだった四歳までの記憶を忘れることは出来ない。そして、今も一族の復興を目指す渋沢や生き残った一族たちを疎ましいと思ったことはない。
けれど、長じるにつれ憎しみを募らせる親友を見るのはつらかった。
「あの人、寂しそうだったのよ」
椅子の一つに腰掛け、彩は軽く天井を仰いだ。
拒絶されたときに瞳を過ぎった色。黒色の目から、少しだけその強さが翳った気がした。
あんな顔を、渋沢がしたことがあるような気がした。
「…それだけよ」
渋沢が言ったように、きっともう二度と会わない。
家を失った彩は生涯寺院を出ることはない。世俗でこの存在が明るみに出れば、革命によって大公家を奪った三上の家は黙っていないだろう。会わなければ、何も感じずに終わるだろう。
最後まで振り切れなかった視線の意味も、考えずに済む。
「…あの人、名前何ていうの」
それでも思わず訊いてしまったのがどうしてなのか、彩にもわからない。
不承不承ではあったが、渋沢は答えてくれた。
「三上亮だ」
口に出して響きを確認してみたい衝動に駆られたが、渋沢の顔を見た彩はそうはせず、ただ「そう」とささやいた。
昼間は晴れていたはずの空から、春の雷鳴が近づいてくる気配がしていた。
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適当に考えて適当に書いていたら三渋の方向に転がりそうな気配が濃厚になってきました。どうなのこれ。
というわけで、アニメのロミジュリパラレルで三上ー!と最初思ったというのに、だんだん変わってきてしまいアレうんコレは? みたいなことに(つまりは意味不明)。
復讐鬼さながらの渋沢さんが書きたかったんだと思います。
わけわからん文章、と思いつつもとりあえず書いたので出してみることにしました。この日記はネタ出し帖も兼ねてます。小ネタは勢いが大事。
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