小ネタ日記ex
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Place that not is here(笛/種)(渋沢と三上).
2005年02月16日(水)
コズミック・イラ71年7月1日。
淡い紅の色をした優美な鳥がドッグという籠に繋がれていた。 すらりと長い首を持つ鳥の印象に似たその宇宙戦艦はまだ就航式を済ませておらず、数日後に控えたお披露目の円舞を待つ乙女のような初々しささえある。 白い服を着た渋沢克朗は特殊硝子越しにそれを見ながら、口許に誇らしげな笑みを浮かべた。しかしその笑みはどこか皮肉なものを含んでいるようにも見える。 「…ザフト最新鋭艦、”エターナル”…か」 永久を意味するその名を、誰がつけたものか。求めるべき永遠が何であるのかも知らず、ただ自分たちの未来が恒久のものであると信じているのだろうか。 茶の髪を一振りした渋沢に、別の声が掛かった。 「ZGMF−X1〇A”フリーダム”と、X〇9A”ジャスティス”の専用艦だ」 すでに周知の事実をまるでためいきのように言った旧友に、渋沢克朗は軽く視線をそちらに向ける。黒い髪に白い士官服の三上亮が苦渋を噛み締めるように眉根を寄せていた。 「ったく、あの二機の為に造ったってのに、両方とも消えてるとはな」 「消えたわけじゃないさ」 「こっちになけりゃ同じことだ」 吐き捨てるような三上の口調には、苦味以上の屈辱が滲んでいた。 この戦争の早期解決の為に、という名目で作られたNジャマーキャンセラー搭載モビルスーツ。禁じられた核を再び呼び戻してまで何故自分たちがこれを作ったのか、奪った者たちは本当に理解しているのだろうか。三上の声にはそんな憤りも含まれていた。 ジャスティス。フリーダム。…この手に、真の正義と解放を。そう願い続けたコーディネイターたち。ナチュラルから生まれ出でたはずが、その祖から妬まれ宇宙へ追われた自分たち。 「…知ってるか? フリーダムのパイロットは、地球軍籍のコーディネイターだとさ」 皮肉というにはあまりにもやるせない事実を口にした三上に、渋沢は苦笑した。 「よく調べたな。左遷されても腐ってなかったのか」 「うっせーよ。広報課なんか飛ばされても情報なんて調べ方次第でいくらでも入ってくる」 「…余計なことを知ると、やりにくくなるぞ」 上官の物品横領とその横流しの証拠を探り過ぎたが故に前線から後方勤務へと左遷になった友人に、渋沢は再度の忠告のつもりで言った。 ところが三上は鼻でせせら笑った。 「そりゃたとえば、お前があれに乗ることか?」 三上が示した先には、護り手がいないまま就航を待つばかりの”エターナル”があった。 渋沢はすぐには返事をしなかった。ただ、その琥珀の瞳で三上を見据え、かすかに笑った。 「何のことだ、と言ってみるのがお約束ってやつか?」 「蛇の道は蛇だとでも言ってろ」 焦ることなく軍服の懐から拳銃を抜き取る三上を渋沢は黙って見逃した。銃口を向けられても渋沢の端然とした笑みは崩れない。 ザフト最新鋭艦”エターナル”の奪取。現政権であるザラ派と対立する、いわゆる穏健派であるクライン派によってそれが計画されているのを三上が知ったのはほんの数時間前だ。その協力者に渋沢克朗の名が連ねられているときは、一瞬だけ納得もしてしまった自分を三上は認めたくなかった。その思いのままに、彼は親友に銃を向けた。 渋沢は、そう残念がる様子もなく苦笑した。 「まあ、機密とはいえ多少の漏れは生じるものだな」 「…お前がクライン派と通じているのは前々から知ってた」 渋沢の言葉に構わず、友に銃を突きつけた三上は固い声音で言う。 「アスラン・ザラがジャスティスを持たずに戻ってきた。それが合図だったのか」 「違うな。ザラ議長の息子のことは計画になかった。本来の就航に合わせて行く予定だったが、まあ番狂わせは戦場の常だ」 「ふざけんな! 黙って行かせると思ってるのか!」 「なら、俺を撃って議長に突き出すか? 憲兵の真似事をして裏切り者を突き出し、その報酬を得るか? そうすれば左遷の日々も終わるだろうな。お前も再びエースパイロットの地位に戻れる」 「渋沢!!」 揶揄するような渋沢の様子に、三上が激昂して怒鳴る。渋沢は自分も言い過ぎたと苦笑し、肩の力をわずかに抜いた。 「これでも軍医の資格があるからな、俺でも彼らの役に立てる」 「…モビルスーツ乗りが本業のくせに何言ってんだ」 「合流する艦にはナチュラルも多いと聞いている。だからだ。プラントに来る前は地球の大学にいたんだ。お前も知っているだろう?」 コーディネイターとナチュラルでは身体の構造は同じものの、その治療法が異なるものがある。そもそもコーディネイターは病気や怪我に強い遺伝子を備えて生まれてくるものであるだけに、ナチュラルほど医療技術を必要としないのだ。 軍医としてザフトに入隊志願したものの、実際は戦闘要員として配備されることのほうが多かったことは渋沢にとって不本意な日々だった。その結果、戦闘能力を高く評価され隊長として前線に立つことが多かった日々も。 「…三上は、俺たちがそんなにナチュラルより優れていると思っているのか?」 「…当たり前だ。そうでなきゃ、戦争なんて出来るか!」 三上の両親はナチュラルだ。それを知っていて尚、渋沢は問いかける。 「俺たちのどこが彼らより優れている? 傷の治りが早く、先天的に病原体には強い。だがそれだけだ。心臓を撃たれれば死ぬ、失血が多ければ死ぬ。それに何の違いがある?」 自分たちは不死身でも、不老不死でもない。ただナチュラルよりも多くの可能性が生まれながらに備えているだけで、彼らと命の重さに変わりはない。 どんなに強く賢く美しく生まれても、戦場で死ぬ者に何の違いがあろうというのか。 救いたくても救えなかった部下の死を渋沢は戦場でいくつも見てきた。圧倒的な爆発によって宇宙に散った者たちに、コーディネイターもナチュラルもあるものか。 「そんな理由で、俺たちを裏切っていく気か」 きつく睨む三上の黒色の双眸は、渋沢の決断を決して認めない者のそれだった。 「…そんな?」 笑みを浮かべた渋沢の顔に、初めて怒気が含まれた。 「それなら俺たちが優れているのは人を殺すことだけだと、世界中に広めて終わるのか!!」 渋沢はそんな事実を認めない。三上が同胞への裏切りを認めないように、同胞全員に宿る可能性を負のことだけに潰させない。 助けられる命がある、救える魂があるのなら、そのために自分は生まれたのだと思いたい。 「戦って守れる命があることを否定はしない。だが、本当にそれだけでいいのか? 同じ人間同士殺し合って、優劣を決めるのか? 期待されて生まれた俺たちの未来は、そんなものでいいのか?」 コーディネイターの叡智とは、他者を滅ぼすことが目的で生み出されたとは渋沢は思わない。より優れたものと呼ばれながら、出来ることは力の限りで相手を殺すだけのものだとは思いたくない。 「じゃあ! 黙ってプラントを墜とさせろとでも言う気か!! 医者としての自分を使いたいならプラントにいたって同じことだろ!!」 悲痛ささえ感じさせる友人の黒い双眸に、渋沢は静かに首を振った。 「敵対味方だけでは、どちらかが完全疲弊するか、両方が相打ちになるかしなければ終わらない。…調停者が必要だ」 「お前がなるってか! それに!!」 三上は銃を突きつけたまま強くせせら笑う。それも違うと渋沢は首を振った。 「俺は所詮ただの脇役だ。ラクス・クラインがその責を負ってくれるだろう」 「小娘に何が出来る」 「プラントが愛した歌姫が、平和の歌を歌う。パトリック・ザラが叫ぶ復讐論に対抗出来るのは彼女の歌ぐらいだからな」 「ただの理想論だ! 歌程度で戦争が終わってたまるか!」 それでも、その理想を捨て去ることが出来ない人たちがいる。 一途な三上の瞳に、自分のものと似ていながらも異なる感情を悟り、渋沢はそっと息を吐いた。 「…お前に俺と同じ道を行けとは言わない」 一緒に行けたら、どれだけ心強く感じられても。 「でも俺は往く。あの艦で」 「渋沢…!」 三上が顔を歪め、右手の指の角度を変える。本来情に厚い三上が長年の友人を撃たねばならない葛藤に揺れているのをわかっていて尚、渋沢は笑んだ。 「…ごめんな、三上」 「黙れ!」 「裏切っていて、悪かった」 それは渋沢の本心だった。 ザフトにいながら、ずっと反逆者のラクス・クラインの一派と通じていた。彼女が軍内部で行ったフリーダム奪取にも手を貸し、情報を流した。そしてザフト内で奔走しプラントを守ろうと戦っていた仲間を裏切っていた。 自分の正義のために、周囲の人たちを裏切り続けていた。 忘れてはならない自分の罪。渋沢はゆっくりと首を巡らせ、歌姫のものとなる艦を見た。 「…たかが十幾つの少女のカリスマに縋らなければ終わりに出来ないとは、俺たちも大概情けないとは思うな。シーゲル・クラインを発見したのはお前の情報か?」 何気なさを装って付け加えられた一言に、三上が一瞬息を呑んだ。 彼はぐっと眉間に力を入れながら、感情を抑制した声を出す。 「…違う。俺も探ってはいたが、間に合わなかった」 「そうか」 嘘ではない。渋沢は三上の言をそう感じた。 ザフトに忠誠を誓い、プラントのために生きても三上の信条にパトリック・ザラへの忠心はない。 「俺の隊の半分はここに残る」 「…だから何だ」 「言ってみただけだ」 こう行っておけば、残った部下の処遇は三上が何とかしてくれるだろう。そんな後始末を押し付ける魂胆の渋沢に、三上は思い切り舌打ちした。 「面倒ばっか残していく気かよ」 「逆でも構わないぞ」 「ざけんな。俺にだって部下がいんだよ」 「俺と違って、非戦闘員の軍人が、な」 戦争は前線の兵隊だけでは成り立たない。後方で物資や人員の補給を支える者がいなければ戦い続けることは不可能だ。 何が言いたいのだと三上が聞き返す前に、渋沢が口を開いた。 「エターナルが奪取されれば混乱は必至だ。何とかしてくれ。出来るだろう、情報部のお前なら。捏造でも詭弁でもいい、支えてくれ」 「…………」 「ザフトを内部から瓦解させるわけにいかないんだ」 急激な温度変化は周囲に与える影響が大きい。クライン派が求めているのは戦争の早期終結であり、ザフトの戦力を削ぎ地球軍に付け入れられる隙を作ることではない。 敵も味方も、もうこれ以上殺し合うべきではない。歌姫が訴えたいのはそれだけだ。 「やってくれ、三上」 離反はしても、その滅亡を望むわけではない。それが自分勝手な考えであることは渋沢もわかっていた。その願いを託せる相手はそう多くない。 時計を見ることも、銃口を見ることもなく、渋沢は三上の脇を抜けた。 「渋沢!!」 「お前が左遷されてよかったよ」 三上が後方にさえいれば、戦場で銃を向け合うことにはならない。最後の笑みを以って付け加えられたその言葉に、三上は言葉に詰まる。友の決意は最早人情で動かせないところに在るのだと知った。 気付けば身体に沿って降ろしていた銃を、三上はもう上げられなかった。 「…俺だって、緊急事態になれば前線に戻るぞ」 「そうか。それなら、そのときはお前の判断に任せるさ」 「…お前、マジときどき大馬鹿じゃねぇか」 「ただの意気地なしだ。ギリギリになるまで表舞台に立とうともしなかった。唯々諾々と流される振りをして、腹で思うだけで結局ここまで何も動かなかった」 繰言には果てがない。自分でそれを悟った渋沢は、息を吐くことで親友との会話を切り上げた。 斜め後方にいる三上が、あらゆる葛藤に揺れているのを痛いほど感じた。 「―――プラントを頼む」 白い軍服の横で、渋沢の拳がかたく握られる。 三上はすぐには答えられなかった。言われなくてもわかってる。そんな空気を互いに感じ取れるほど同じ時間を過ごしてきた。 「…そんなん、全部終わってから自分で何とかしろ」 往ってしまうのなら、同じ道を歩いて行けないのなら。 せめて、生き残っていつかまた会えたならいい。 それが、すれ違った正義の在り方に、三上がかろうじて出せた結論だった。 三上の後ろで、渋沢は小さく笑ったようだった。雰囲気でそれが伝わる。かすかな、穏やかで公平な渋沢の笑い方を何年も見てきた。 それきり遠ざかっていく長身の友の足音に、三上は決して振り返ろうとしなかった。
コズミック・イラ71年7月1日。ラクス・クライン一派によってエターナルが強奪されたという報せがザフト上層部を揺るがすのは、その一時間後だった。
************************ 何やってんの。 …としか思えない、種パラレルで笛。もう何が何やら。 以前書いて仕舞っておいたものを引っ張り出してみました。 一応前(?)のようなものはこちら。色々遊びすぎだと自分でも思う。 でも笛ポタとか学園種とかあるなら、笛種(なんだか種笛なんだか)もいいじゃないですかー…みたいな(結局は自分の趣味)。
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昨今の事情と彼らの場合(デス種/レイとルナ)
2005年02月13日(日)
薔薇より甘い匂いがした。
彼女が彼を見つけたのは、ザフト士官アカデミーの寮の入り口だった。
「あらレイ、何ぼーっと突っ立ってるの?」
気安い間柄で、ルナマリアが軽く肩を叩くと金髪の彼が振り向く。半拍遅れて肩を叩いた鮮やかな金髪にルナマリアは思いがけず眩しさを覚えた。
柔らかな金髪のレイは、ルナマリアの姿に眉一つ動かさず淡々と口を開く。
「ちょうどいい。何か袋のようなものを持っていないか?」
「袋?」
一体何だと、ルナマリアはレイの士官学校の制服の影に当たるほうを覗き込む。各部屋番号が貼ってあるメールボックス。電子メールではない配達物を一時的に保管する場所だ。
「…あーららら」
その場所を見たルナマリアの口から、思わず苦笑の声が漏れた。
メールボックスの蓋が半開きになってしまうほど溢れた、レイ宛ての小包の群。かたちや大きさは様々だが、皆一様に包装が鮮やかだ。
2月中旬のこの時期と考えれば、この包みの中は少女であるルナマリアには簡単に予測がつく。
「チョコの大漁ね」
「暇な奴はどこにでもいるものだな」
ためいきがちになるレイの言葉は、皮肉ではなく単純に感想を述べているだけだ。それを察知し、この男相手に負が悪かったとルナマリアは贈り主の彼女たちにかすかな同情を寄せた。
「貰っておけば? いい夜食になるでしょ」
「あまりこういうものは好きではないな。腹になかなか溜まらない」
「……………」
軍隊の男たちの食欲がどれだけのものなのか、ルナマリアもよく知っているが、いかにも貴公子然としたレイにそう言われるのは未だ違和感がある。
世の中には需要と供給が上手いバランスを取れないところがあるが、レイ・ザ・バレルと乙女のバレンタインもまた当人同士の意識に大きな隔たりがあるようだった。眉目秀麗の佳人とはいえ霞を食べて生きているわけではなく、成長期のレイの食欲は立派に同年代の平均を超える。
「ないよりあったほうがいいじゃない。返しに行くのも面倒でしょ? 貰っちゃいなさい」
もう運ぶのを手伝う気分でルナマリアはさっさとメールボックスを開いた。勢いで落ちそうになった端の一つを手で押さえ、立ったままのレイにぽいぽいと渡していく。
「…物好きも多いな」
「レイ、それあんまり外で言わないほうがいいわ」
あなたほど淡白なのも少ないんだから。ルナマリアは小さく笑った。
レイの腕の中に鮮やかなスカイブルーのリボンがひらりと舞う。濃茶、ピンク、純白、包み紙やリボン、飾りの花、どの包みも少女から背伸びした印象を受けるのは、レイの個性を考慮した結果なのかもしれない。
同年代から一段抜き出た怜悧な容貌と、冷淡ささえ感じる表情の浮き沈みのなさ。そのミステリアスなところが同じ士官学校の少女たちには人気だが、一歩近い位置にいるルナマリアからするとレイはただのツッコミが得手の小姑だ。
「しかし、こういうものは受け取ったら礼をしなければならないのではないか?」
「あら、そういうのは知ってるんだ」
やや大仰に肩をすくめて見せたルナマリアに対し、レイは心外そうに眉間にわずかな皺を刻んだ。珍しいものを目の当たりにし、ルナマリアは楽しげに笑う。
「返すも返さないも、レイの勝手よ。私としては、相手の意思に関わらず勝手に送ってくるような知らない人間にわざわざお金と手間かけてお礼するのも考えものだけど」
「…そうか」
「でも、贈った側はお礼とか返事とか色々考えながら待っちゃうものよねー」
「……どっちなんだ」
腕一杯に包みを抱えて憮然としたレイを見て、ルナマリアはますます楽しくなる。普段やり込められているのは自分が多いだけに、相手のこういう顔がとても面白い。
くるりとメールボックスに背中を預け、ルナマリアはレイに向かって小首を傾げた。
「好きなようにすれば?」
「…ほとほとお前は俺を困らせるのが楽しくて仕方ないようだな」
「何言ってるのよ。滅多に困ってなんかくれないくせに」
いつもいつも、自分が年上の顔してくるくせに。
そう呟くように見上げて唇を尖らせる少女の顔をした彼女に、レイは自分の行動を省みたが、稀に困惑させてくるのは向こうのほうが多い気がした。
「…お前よりもシンに相談したほうがよさそうだな」
「ちょっと、それひどくない?」
「暇なら残ったのを持って部屋まで付き合え。暇だろう」
「断定するなら『暇なら』なんてつけないで欲しいもんだわ」
ぶつぶつと文句を言いつつも、ルナマリアは最後に一つ残っていた淡いベージュに濃い紅のリボンをかけた長方形の包みを手に取った。両腕にチョコレートを抱えているレイでは、部屋のドア一つ開けるのもままならないだろう。
揺れる赤いベルベッドのリボン。このリボンも決して安物ではない。まだ任官もしていない身の上で、受け取ってもらえるかもわからない包みになぜ金銭をかけるかもレイにはどうでもいいことなのだろう。
やめといたほうがいいわ、こんな男。
彼の友人としてそれを忠告してやりたいが、口にすれば泣き出してしまう子が目に浮かび、言葉にしたことはない。
ルナマリアは不意に顔をレイに向けた。
「レイ、胃腸は丈夫?」
「いきなり何だ」
「下痢とか便秘とかよくするほう?」
「…頼むからお前は少し慎みという言葉を思い出せ」
眉をひそめ周囲をそれとなく見渡すレイに頓着せず、ルナマリアは息を吸って言い放つ。
「何日かかってもいいから、ちゃんと全部一人で食べるのよ。わかった?」
「…だから、急に何だと言うんだ」
尤もな相手の疑問に、ルナマリアは視線を揺らがせずに胸を張る。
「私だって女の子の気持ちはわかるもの」
「……………」
言いたいだけ言うと、身を翻して寮の階段へ向かって行く颯爽とした少女の後姿。数歩先に行くそれを見ながら、金髪の彼は疑問を浮かべずにはいられなかった。
「…お前に女を語られてもな」
女の子、を自認するのなら、先ほどの台詞は少々いただけないのが一般常識というものだろう。
それでも彼女は、レイの腕の中にある甘い菓子を贈ってきた相手と同じ生き物なのだ。納得しかねる部分があっても、同じなのだ。
女心についての研究はその数秒で切り上げ、レイは紅色の髪を揺らす少女の後を追った。
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友情なのか恋愛なのかよくわからないレイルナが好物の遠子です。
こっちでオール種を書くのは初めてです(これまでは上のほうにあるメモ帳)。サンライズ二次創作ということで、検索機能つきのエンピツで書くのは憚っていたのですが、様子を見てきたところさほど検索にも引っかからないようなので、こっちでも種系書いてもいいかな、と。
好意も敵意もさっぱりとした気性のルナマリーが好きです。ついでにバレルさんが変なところで淡白ゆえの面倒くさがりだったり、人間関係にはぼんやりしてる人だと楽しいな、という妄想です。
…しかしなぜ、シンとレイは仲が良いのであろうか(どうやって親しくなったんだ)(成績順で振り分けられるごとに顔合わせていたから、というオチですか?)
学園もので種をやるのなら、迷わず私はデス種赤服組の士官学校時代を書く(…学園?)
通常学園もの、というとたぶんパラレルなんでしょうねー。…でも普段学園ものは絶対(笛で)書いてますから(同じものは飽きる理屈)。
そんなこんなのレイルナでバレンタイン小ネタ。
某Aづまさんのところのルナマリアがすごく可愛かったので、何となくああマリー書きたいなあ、と。てへ。私信ですみませんがものすごく可愛いと思います、あのルナマリア。
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