2014年06月21日(土)...混濁

 交差点では、複眼の様な紅い瞳がじっと此方を見詰めていた。漆黒の海に幾つもの白波が平行に走り、何処までも続いている。青い煌めきに導かれ、誰しもがふわふわと渡ってゆく。如何して。其れが不思議で堪らない。
 一歩、踏み出せば溺れて仕舞いそうで、躊躇ったまましゃがみ込んだ。気持ちが悪く、頭が割れそうに、痛い。引き攣れた胃がぐっ、と収縮するのが解る。食道を刺激する其れを、飲み込む。
 もう、駄目かもしれない、と思う反面、世界が、揺ら揺ら揺らめいて綺麗で、蛍光色に彩られた天上と、闇にも似た地平の彼方に、安心が泳いでいる気がした。昔から、慣れ親しんだ光景。明日、目覚めれば全部、夢に変わる今の、素晴らしさと、此の、美しい視界を、共有出来る誰か、は居なくとも、大丈夫だと、知っている。
 声が、聞こえた。

>帰ろう

2014年06月13日(金)...苦果

 全ては、自業自得だと、解っている。
 明日、を拒み呪う様に過ごしたあの永い日々の痕が、今更ながらに、傷む。本の数年、癒える筈も無い。後、何年、此の微温湯に浸って居れば、取り戻すのだろう。

2014年06月04日(水)...初夏

 生温い、と言うより、茹だる様な暑さが肌に纏わり付いていた。日傘で区切った世界の、其の先は酷く眩しくて、全てが億劫になる。きらきらと照り付ける日差しの下に、住む場所等、無い様な気がした。ブラインドを鎖した部屋の隅で、只、丸くなって居るのが良い。

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