2006年08月31日(木)...邂逅

 してあげる、其の補助動詞にどきりとする。其の言い種通りで構わなかったのに。

2006年08月14日(月)...風物詩

 バーベキュー、花火、かき氷、神経衰弱、大富豪。陽射しの下の待ち合わせや買い出し、炭の匂いや空気を揺らがせる熱。何時から、放棄していたのだろう。

2006年08月12日(土)...最後

 相応しいものは何ひとつ選べず、ただ時間が過ぎ去ってゆくのを待っているだけだった。更新されてゆく年齢に、気持ちが追い着かない。

2006年08月10日(木)...悪癖

 回数を重ねる度に嗜虐心が刺激されて、駆け引きの中に少し本気が混ざった。

2006年08月09日(水)...疼く

 本心で無い処から引き出された言葉は結論を回避して、有耶無耶に溶かした。何時の間にか身に付いた其れは円滑を優先して、感情を封じてゆく。少しも過ぎらなかったと云えば嘘になる、結末が少しだけ胸を刺した。

2006年08月08日(火)...台風

 最上階と屋上を繋ぐ非常階段に座って、風に軋む世界を見て居た。ワンピースの裾が翻って、凭れた柵に絡まる。切欠が欲しい、そう、何処かで解っていた。

2006年08月07日(月)...呼び出し

 懐かしい声を聞いて、出向いた先のカラオケボックスは予想以上の健全さで、煙草の匂いだけがただ充満していた。

2006年08月05日(土)...逆戻り

 正気で居る時間が少しずつ短くなっているのが解る。また、あの頃の様に全てを喰われて仕舞うのだろうか。退廃の膜を通して眺める世界は輪郭が酷く曖昧で、色彩さえ淡く滲んでいる。僅か一瞬訪れた視界が晴れるその瞬間にも、禍々しいビビッドが何処までも付着して、視野を塗り込めていた。地面が、ゆっくりと陥没して、横断歩道が点滅を繰り返している。頭が、鈍く、胃がきりきりと痛んだ。

2006年08月04日(金)...7011号室

 エアコンの風に冷やされたベッドカバーがひんやりと身体に沁み込む。分厚いカーテンを透かして届く日差しは僅かで、季節や時間の感覚を失った世界は薄暗くオレンジ色をしていた。

2006年08月03日(木)...美容院

 天井を彩るライトと磨りガラスから覗く晴天、パッションフルーツの香りと生温い水に、漬された脳が緩々と解けてゆく。眼を細めて、何も無い午後に揺れる幸福と所在無さを見ていた。
 ふわふわと漂う様な感覚が四六時中付き纏って、浮付いた自由を手に薄れた存在意義を探して居る。しなければならないことが消えて、世界との繋がりが途絶えた気がしていた。

2006年08月02日(水)...夏休み

 待ってて、と渡された真っ白な2時間を、ただ持て余して居た。繁華街の一角に座す雑居ビルの、非常階段に座り込んで生温く停滞した空気を吸い込む。昨日の寝不足が祟って、酷くだるい。壁に寄せた頬に触れる冷たさが頭痛を緩和していた。

2006年08月01日(火)...開放

 もし、明日が眠りに塗り潰されて仕舞っても未来には少しの影響も無い、そう思うと世界が一転してきらきらと耀いて見えた。

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