VITA HOMOSEXUALIS
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サナトリウムで私を射精させた車椅子の男性は、米人の牧師と同性結婚すると言って私のもとを去った。その頃は同性婚という制度はどこの国にもなく、その人だけの心の満足なのだろうと思った。
私はしばらく一人でぶらぶらしていたが、また「薔薇族」を買って読み、浪人と称する19歳の男の子と会った。
晩秋のある日、私の前に現れたのは整った顔立ちをした背の高い男だった。自分の一族はみな医者で、自分も医学部を目指して浪人していると言った。
私たちはとりあえず体のことは考えずつき合うことにした。
彼はバレエを習っていたそうで、舞台にも立ったことがあると言っていた。彼は私をクラシック音楽の演奏会に連れて行った。そうすると彼は一般客とは違う入り口から入り、中にいる係のような人と知り合いらしく、いろいろ談笑しているのであった。
そういう社会は私の住んでいる社会とは全く別のものであった。
彼は中野にマンションを持っていた。親に買ってもらったといい、見晴らしの良い2LDKに一人で住んでいた。
それもまた私には想像もできない社会の出来事であった。
私には彼を好きだとか愛するとかいう気持ちは生まれなかった。だが、私の知らない世界のことを知りたいという気持ちが湧いてきた。
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