眼鏡越し
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もう会えない人が育てていた花は
ここから見えるベランダに置かれたままになっている。
ご主人さまはもういないので
代わりに水をやりたいと思うのだけれど
見えるのに行けないそこにはどうしても手が届かなくて
ただ毎日見つめるばかり。
けれども花は雨風だけですくすくと育ち
心配ご無用、と全身で訴えかけられているようで
わたしはなんだか損した気分になった。
今日もベランダの花を眺める。
揺れていた。
揺れてみた。
返事はない。
あたりまえか。
強い風。
会えない人は、どこかで元気かな。
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