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■ 無題2-15
緊張しなければならないはずなのに、俺の中はぼんやりと水の中にいるみたいに輪郭がはっきりしなかった。
「聞いてる?」 「聞いてますよ」
覗き込んでくる愛らしい笑顔に、ぎこちなく笑い返す。
「夏は――私も余裕がなくって、あんなこと言っちゃったけど。でも昨日言われた事、驚いたんだけど嬉しいなあって思ったのよね」
息苦しい。 それが緊張感だと気付くまで、数秒かかった。 押さえきれないこの感情を、受け止めてくれるかもしれないと思えば、自然と鼓動が早くなる。 付き合っていた時は、最後まで言えなかった。 別れようと言われた時も、体裁を気にして引き止めることさえ出来なかった。
「クールだよね、シュウくんて。そういうところ、やっぱり好きだなって」
寒さで平常より白くなった先輩の頬に、僅かに赤みが差す。 それを眺めるようにして聞きながら、まるで他人の事を言われているような気がした。
早まった鼓動が、急速に静まる。
熱に浮かされたようにして口にした告白。 知って欲しい。聞いて欲しい。考えて欲しい。俺のことだけを。勝手で押し付けがましいそんな気持ちさえ知らずに、上っ面だけを認められた気がした。 息苦しさは相変わらずで、それが何に対して起因するものかも分からずに、不意に可笑しくなった。
2008年01月17日(木)
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