舌の色はピンク
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そしたら毎日クリスマスイヴでもあるんだぜ。
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実際毎日クリスマスだったらどうだ。 季節感無視のイルミネーション常灯。 労基法無視の週休0日サンタクロース。 ありがたみのないネタ切れプレゼント。 日々焼かれては余り捨てられる七面鳥。 演歌歌手殺しのクリスマスソング縛り。
ろくなもんじゃないな。 メリットといえばクリスマスツリーの置き場に困らない程度で、 やはりこういうイベントは年一くらいがちょうどいいようだ。 やはりとか言うまでもなく。
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じゃあクリスマスが20年に一度だったらどうだ。 その先はきみが考えてみるがいい。
2014年12月18日(木) |
トーリマシミュレート |
電車内の乗客は誰も襲われる心構えができていないように見える。 つまり通り魔を想定していない。
通り魔は犯行現場に電車を選んでもいいんじゃないかと思って。 いやだめなんだけど。絶対だめ。だめだからな。言ったからな。 まぁ例のごとく現実と切り離して考えてみたわけです。 が逃げようのない狭さは通り魔によって優位に働きもすれば 即自組み伏せられるだろう災いも招かれると合点。 無法には無法の精神で叩きのめされて終わりだ。
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…プロレスラーだったら?
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車両の端っこからスタミナ充溢のプロレスラーが 殺意をもって乗客をのしていくシミュレーションをしてみたら。 彼は徒手空拳でスタート。 車内は満員の7〜8割。 まずはじめの10秒で5人は仕留めるだろう。 まだ序盤につき拳を痛めぬよう掌底で顎先貫く格好だ。 その後乗客たちは狂騒する。 大抵は離脱を試みるが誰もが我先にと逃げたがるため かえって押しくらまんじゅうよろしく自滅していく。 逃げ場などないのだ。 中には腕自慢もいる。 単に体格のいい若者、格闘技経験者、自衛隊出身の壮年… 合わせて5人程が立ち向かう。 が、赤の他人同士が突然に打ち合わせもなく連携できようはずもない。 どころか互いの動きが邪魔になる。 すでに10人は血祭りにあげ体の暖まったプロレスラー、難なく各個撃破。 徐々に進撃。 車床が死屍累々に埋まっていく。 サラリーマンがネクタイを構えた。 我の強い腕自慢連中とは違い奴隷根性の付和雷同で足並み揃え、 屈強なプロレスラーの末端および首元を縛り締めていく作戦らしい。 これにはプロレスラーもたじろいだ。 なにしろサラリーマン十数人がネクタイを両手に装備した光景は圧巻。 しばしにらみ合う。 そこでプロレスラーは足元のやせ細った老人を前方へ投擲した。 中距離攻撃だ! 老体はひとりに命中しただけだったが均衡が破れ サラリーマンは一斉に突撃してしまった。 腕っ節に覚え有りの連中が先ほど演じた失敗、 素人ならばなおさら酷に終劇するのは目に見えている。 ところがこの時、プロレスラーの足へどこからか手が伸びた。 やられたはずの体格いい若者だ! さしものプロレスラーも一撃では致命打に及ばなかったものと見え、 若者がっしりしがみつきプロレスラーとうとう体勢崩す。 膝が折れ、よろめいた。 サラリーマンのネクタイが十数本迫ってくる。 その瞬間電車が揺れた。 阿鼻叫喚の声が車両を渡ってついに車掌のもとへ届き、 急ブレーキ緊急停止したのだ。 サラリーマンは全員転げた。 もともと日々の就労で腰が弱っているところに実戦の緊張感、 今まさに襲いかかろうとする前傾姿勢と 足元の死屍累々に不安定な体軸は容易く揺さぶられ、こけた。 こうなるとプロレスラーも寝技を披露してやりたくなる。 ただし立ち技よりもKOに時間をくう。 電車を止められてしまったいま、いつ援軍が押し寄せるかもわからず、 一人あたりにかける時は惜しまねばならない。 こう考えている合間にも体格いい若者の頭を肘で破壊しているほどだ。 まだ体力は十分ある。 そのために過酷なトレーニングに励んできたのだからへこたれてはいられない。 先輩見てますか。オレ強くなりましたよ。 己を鼓舞して立った。がんばれプロレスラー、僕は君を勝たせるつもりだ。 スーツのシワを気にして咄嗟に起き上れないサラリーマンの頭を 自慢のウェイトをもって的確に踏み潰しながらなお進む。 緊急連絡、緊急連絡。車内アナウンスが響いた。 今冷静な指示をなされては形勢がどう転ぶかわからない。 向こうの出方を心得ておきたい下心もあるにはあるが、 せっかくの気勢が削がれても危うい。 情報は一切遮断されねばならない。 周りを見渡せば手荷物はたくさんある。 半死の婦人のバッグからスマホを取り出し怪力にものをいわせスピーカーに叩きつけた。 自分の番がくるまでにと片想いの彼女へメッセージを打っていた 学生のスマホも操作途中のまま宙を舞った。 この惨劇をネットの海に投稿し世間を賑やかす中心人物となって それを足がかりにネットアイドルへの道を目論んでいた OLのスマホは動画録画中のまま粉々になった。 唐突の殺戮にインスピレーションを得て 稀代のメロディが浮かび専用のアプリに記録していた バンドマンのスマホはとくべつ綺麗な破裂音を奏でた。 アナウンスが止んだ。 電車が再び動き出す。 発車しようが足を掬われようがオレはもう倒れない、 なぜならそれだけの修行を積んできたのだから…あの日を思い出せ… 闘志再燃。 力を温存する局面は過ぎた。 全力解禁で打投極の連発により蟻どもを瞬殺していく。 もとより威圧充満の風貌は返り血に染まって一層悪鬼めき、 生き残りは悉皆足が竦んで動けない。 ラストスパート。あと10人ほどで全滅達成できる。 体中震わせて護身用スタンガンを差し向けてきた女もいた。 その頃には盾の肉塊はたくさんあったから易々凌いだ。 それに倣って、前にいる男を盾に突進してきた男もいた。 卑怯者め親に子に恥ずかしくないのかと叫んだら動きが止まったので 人体の脆さを教えてやった。 さすがに息が荒くなってくる。 しかしあと数人。たった数人で終わりだ。 ここで電車が止まる。駅に到着したのだ。 ホームには武装済の鉄道警察が立ち並んでいる。 しかしドアが開かない。 どうやら暴漢には銃刀かなにかの殺傷武器ありとにらんで、 まずは慎重に車内の様子を伺っているらしい。 一方で窓という窓は血にまみれている。 おかげで車両の奥隅でがたがた震えるしかない生存者をすぐには確認できない。 いや一部では確認できていたのかもしれない。 しれないが、テロマニュアルを積んだ特殊部隊でもない一介の制服だ、 かつてない義憤に駆られようと自己保身が本能的に先立つ。 急ごしらえの武装では銃火器に太刀打ちできる装備であるはずもないのだ。 見殺しにする腹も同然の慎重さで体制を整える。 これでは襲い手としても慌てようがない。 呼吸を静め、ゆっくり車両奥隅へ歩みを進める。 そして最奥へ到達した。 プロレスラーは勝った。 その後彼がどうなったかは僕の関知しないところである。
2014年12月16日(火) |
もっと大切なものもなくしてないかい |
先日傘をなくした。 骨組みは折れに折れ、ビニール部分は破損著しく、 雨にも風にも到底耐えうるものではない満身創痍の有様でありながら なお見てくれだけは傘の図像を結んで、 本来ならば壊れて候無用御免と見なされ捨てられるところを 露先と中棒が無事なばかりに現役を強いられてきた傘だ。 僕によって現役を強いられてきた。 さしたる愛着もなかったが せめて己が手で始末してやりたかったなとも思う。
一方で誰かの手に渡っていたならそれは喜ばしい。 雨にも風にも到底耐えうるものではないあの乞食傘が 誰かの身を雨粒から数滴でも凌いでくれたのなら もともとの持ち主としては冥利につきる。
ところで今日手袋をなくした。 安物ながら厚手で防寒には至極頼もしく これで一冬泣かずに済むと無尽蔵の安堵を与えてくれた、 買ったばかりのお気に入りだった。 過ごした時間は短いが愛着はあった。
誰かの手に渡っていたらを思うと その手を切り落としてやりたい。 なに、なくしたのはおまえのミスなんだから おまえの手を切り落とせ手落ちだけにって? なかなかうまいことをいうじゃないか。 そんなことはどうでもいいから手袋をくれ。 あと傘もくれ。あとポテチ買ってこい。
東急東横線の学芸大学駅西口から2分ほど歩いた路地裏に、僕の気に入る紅茶専門店があった。老女主人が切り盛りするこの店は15席にも満たない喫茶室がメインの見るからに細々した経営で、『ティールームラビニア』というその名が書かれた看板すらどうか見落として欲しいとの祈りが込められているような小さい地味なものだった。かつてひと目で気に入った。喫茶室は木の香りと茶葉の香りと焼き菓子の香り、窓枠から差し込む季節折々の光線、だれかしら一人は歩いている外の通りの景色とがあいまって、敷坪以上の広々した空間を保っていた。そのわりに飾り気ない内装が一層の寛ぎを誘う。目立つ装飾品といえば店内のどこからでも視角に入る鑑賞花程度で、この花器が春にも雪にも夕暮れにもよく似合った。僕が初めて訪れたのは8年ほど前だったか、当時まだ一人暮らしに慣れない中で、安寧を求めしばしば行った。愛想の良い老女主人が淹れてくれる紅茶をじっくり、その日買った本か漫画かを読んだり読まなかったりしているうちに渋みきってしまう紅茶を一口すするごとに、コップの水で洗い流す瞬間がなによりの幸福だった。店内に目立たない装飾品はたくさんあった。僕が好んでそれ目当てに席を決めていた品はいかにも欧州の味わいの風情で、むき出しの歯車が作動するとブリキ人形数体が踊りだす仕掛けの、いうなれば玩具だったのかもしれない木工細工が、どうかするほど愛おしく、眺めに眺めて2時間経ていたこともあった。客層は有閑の婦人が多く揃い、料理教室の放課後めいた和気は傍目にも安らぎの音楽も同然だった。憩いの索引のような店だった。ドアを開けて出るとどの道もそれは帰り道となった。ついでの事情を差し込んだりせず、どこに寄り道しようとも心揺り動かされることもなく、いつも必ず帰り道になった。そういう店だった。家を越してからは年に一度だけ、決まって挑発的に寒い冬の日に来店していた。いずれの冬の日も変わらず弛緩した。誓いを履行するごとく弛緩した。年を経るごとに周りの人間も各々マチの店に通じていく、その点僕にとってはラビニアは心強い一種の誇りだった。岸の向こうの天狗がどれだけ、小洒落た、美味しい、あるいは安らぐ店に親しんでいても、脳裏に楽園を過ぎらせて、外連味なく胸を張れた。行こうが行くまいが懐に忍ばせていつでも加護を惜しまないお守り、それもひどく美しい一つの貝殻だった。今日ラビニアの閉店を確認して去来したものは喪失感よりも自立を促された心境に近い。僕は大人になった。緩みたいならいくつかのすべを心得てる。観想郷なら今の住処で間に合うだろう。いつか大人に飽いた頃には構わず化けて出てきて欲しい。待ち合わせもせず待っている。
攻守が交代しない競技があったら。
例えばわかりやすく格闘技で。 まず入門時にオフェンス希望かディフェンス希望か決める。 あとはずっと一定。 オフェンスならオフェンスの選手となる。 ジムではディフェンス選手を殴る蹴るする練習に明け暮れ、 ひたすら攻撃力を鍛える。 一方ディフェンス選手もそこはプロ、 回避・防御の技術を極め、 いかな暴力にも耐えうる肉体づくりに余念がない。
もちろんオフェンス層の割合は高くなる。 当たり前だ。誰だって暴れまわるほうが楽しい。 が、ギャラはディフェンス側の方が圧倒的に高い。 加えて客の人気。渋いファンはオフェンスになど見向きもしない。 にわかのファンほどディフェンスに野次飛ばすが、なに、効くものか。 そこはプロ、メンタル面の防備もばっちりである。
隠れた魅力として、実生活でも役立つのはディフェンス側だ。 他者からの信頼度も高い。 就職活動や賃貸の審査でも好評価となるだろう。 その点オフェンス選手は悲惨。 すぐ犯罪者予備軍として扱われるし、 実際犯罪者予備軍でもあるようだ。 あなたはそれでもオフェンス選手になりたいといえますか。
発熱の確認のため額へ他者の手をあてがうあの芸、 感じとれる熱は能動者と受動者の相対的な温度差に過ぎず 一方の絶対値なんて計れようはずもないのに あれでいったい何を明らかにできるというのか。 真実究明の意欲が足りないんじゃないか。 怠慢。諦念。横着。 でなければ思い上がりだ。 自分の手が厳正に恒温維持できているとでも盲信しているのか。 まさかな。 寒ければ手は冷える。そんなこと君にもわかってる。 いいんだよ。素直になろう。 君の手は君の生きる日常のなかで、 食べたり怒ったり恋したり歌ったり、花を摘んだり、 誰かを傷つけたり夕闇に怯えたり星に願いを託したり、 そんな何気ない息遣いひとつで、冷えもすれば温まりもする。 嘘をつかなくていい。君は真実に生きろ。 君の手だけが偽物なんだ。わかったね。さあ切り落とせ。 血の温もりより他に真実は求めるな。まだ間に合うぞ。私は間に合った!
もう何度も寒いって口に出して言っちゃってる。 それも自分が最も忌み嫌うシチュエーションで。
例えば夏の方がありがちなケース、 熱い陽射しからようやく逃れ 冷房のよくきいた屋内に入り込むやいなや 人は「ハァーあっつい」とか言う。 あたりまえみたいに言う。 あれが嫌なんです。 どれだけ体が火照ってるかしらんけど ようやく涼める環境へ身を置けたのだろ、 その瞬間に暑いとかいうな、 涼めてる主にも失礼だし、 なんというか過去のことをいうな。 いまこの瞬間に目を向けろ。 「ハァーすずしい」って言え。 そう思うんです。
が、忌みながら自身も今冬同じことをしている。 布団に入るや、風呂に浸かるや、ストーブにあたるや、 「うー寒っ」 この一言が脊髄から高速で這い出る。 滑稽だ。知能の低さをにじませる。 もっともっと律さねばならない。 ちのうのひくさをかくすために。
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最近よく目にするガムだかなんだかのキャッチコピー、
「息はほぼ、顔」
この一文が見せつけて憚らない、 鼻息の荒さと面の皮の厚さといったら…。 こっちのため息と赤面が到底抑えられない。 恥ずかしい。 こうしてここで取り沙汰するのすら恥ずかしい。 息苦しい。 正面から顔向けできない。
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