指から生える糸が
いつからか気になるようになり
ことあるごとに手繰り寄せ
いつかピンと張るのではないかと
いくら手繰り寄せても
あっちからもこっちからも
糸は出てきて
それはもう赤どころではない
カラフルな糸なもので
思わずセーターなど
それぞれに編んであげたり
あまりに見境なく出てくるので
白金の錠をかけてみたり
したこともあったのだけれど
いつの間にか錠前は壊れて
白く跡が残った指からでも
いまだに糸が出てきてしまうから
裏切りやら言い訳やら猫の毛やら
一緒に織り込んだ
およそオシャレとは言い難い
絨毯をこさえ続け
たまに織り目を数えて懐かしんだり
色目の変わったところをなでては
溜め息をついたりして
昔はよくもつれてしまったものだと
上手に手繰って織り続けていることを
誇らしくも思う
2009年11月20日(金)

秋模様

託された祈りが色を溜め
届かぬ想いが木々を染め
あぶれた熱が
夕焼けへと帰る季節
もうすぐ置き去りの約束が
乾いた音を足元に散らします
思い出しさえすれば
糧になれなかった優しさが
錆びたトタンをぽとりぽとり
濡らす音も聞くことができる
追い越していく影と
使い古しのセンチメンタリズムを
木枯らしが吹き飛ばす
ひとつ前の季節
2009年11月10日(火)

地球照

君よ、遠く戯れる
美しきさまを横顔に残して
指つなぎ撫であいし暗黒の宙を
背に隠し後ずさり、逃げるように


やがて星の波間に消えゆくのか
絶え間なく腫れ続くこの世界で
なす術なく返すうたなく
跡形もなく想い散らす前に


瞬くほどの距離、こんなにも
こんなにも君を呼び続ける
君くれし眼差しかき集めて
闇に堕ちるたび、輝こう


この海のうねりの果てまで
この星の宴のついまで
青白き手で君の夜を
幾度も、幾度でもなぞるために
2009年11月05日(木)
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