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  月読 後日談


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   ぎむれっと-40話 -キリリク話
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2008年02月26日(火)
ぎむれっと――または、ろんぐ・ぐっどばい 14) Side K


「え?」
と木遁の印を結んだテンゾウがオレを見た。

表情こそ変えなかったが、ひどく戸惑っているように見えた。
だがすぐに、印を組みなおす。
さすがと言うべきか、その間、1秒もなかった。
地が盛り上がり、ヤツらが体勢を崩すのを狙って、オレは跳んだ。

――木遁が発動しなかった……。

戸惑っているのはオレも同じだったが、その事実は一時棚上げだ。
ここはどこだ? とか、なぜテンゾウが? とか、すべて棚上げにしているのだ。
もうひとつやふたつ棚上げにしても、棚板が落ちることはあるまい。

ひとりが印を組む。火遁だ。森を焼かれるのは、まずい。
「水牢の術!」
影分身を繰り出し、燃え上がりかけた火ごと、3人を水牢に閉じ込めた。
3つの球体に3人のオレ。
本体のオレは右手にチャクラを集める。
殺してはいけない、生け捕りが命令だ。

「ギャ!」

水でできた球体に軽く触れると、バチという音とともに影分身が消え、球体がはじけた。
――ちょっと、強すぎたか、とオレは、次々と地に伏すヤツらをみやる。

「水に雷……ですか」
トンと背後に立ったテンゾウが、感情の伺えない声でつぶやいた。
「ま、軽い電気ショック?」
「自分の影分身ごと?」
「そのための影分身でしょ」
そこらじゅう水浸しではあるが、静寂が戻る。
ホーという梟の鳴き声が聞こえた。

「さーて。式を飛ばさないと」
「あ、待ってください、先輩」

センパイ? とオレはテンゾウを振り返った。
オレが暗部を離れて以来、テンゾウは面と向かってオレを先輩と呼ばなくなった
オレが暗にやめろと言ったからだ。
それでも任務で組んだりすると昔のクセが出て、先輩と呼ばれることもあるにはあったが。

「少し……少しだけ、待ってください、お願いします」
オレは無言でテンゾウを見る。
違和感の最たるものは、ヘッドギアをつけていないことだ。
暗部装束に、面もヘッドギアもなしのテンゾウ。
いや、面もヘッドギアも装着していないのは、何か突発的な出来事があったからとも考えられる。
「ボクの任務にも関わりがあるので、頼みます」
いつものテンゾウだ。テンゾウのはずだ。
オレは周囲を見回した。別に、第三者がいる気配もない。

おかしいだろ?
いくら任務中、それも戦闘の後とはいえ、半年振りに会う恋人に対して、その態度は。

だが、疑問は口にせず、オレは答えた。
「ん。別にいーよ」
「すみません」
テンゾウはどうやら極秘の任務に就いていたらしい。
こいつらはオレのターゲットだが、同時にテンゾウの任務ともかかわりがあるのだろう。
でなければ、ここにテンゾウがいるはずがない。

「あー。ここは、どこだ?」
とりあえず、オレは間抜けな質問をした。
「詳しい場所は告げられません」
「じゃ、今はいつだ?」
「今は……」
さらに間抜けな質問に、テンゾウが戸惑うことなく答えるところを見ると、オレが時空間忍術によってここに跳んできたことはわかっているらしい。
テンゾウの答えを信じるとすれば、オレが本来いるべき時代のいるべき時間のようだ。

村に着いた初日、オレは時空の歪みを確かめるとともに、そこに結界を張った。
そして、かつて5家族が住んでいた廃屋をつぶさに調べた。
結界内に入り、印を組むと、術は問題なく発動した。
暗部のだれが試しても開かなかった時空の歪みは、オレを難なく過去へ連れて行ってくれる。
この前とんだ時代に飛び、何も変わっていないことを確かめ、また戻ってきてから、村長と面会した。
そして時空の歪みがあること、それを利用した者がいることのみ伝えた。
もうしばらく村に滞在し調査したいと希望する。これは、“敵”を追うための口実だ。
許可が得られれば仕事がやりやすい。
長は、快くオレが実験を行うことを許可し、その間は、森への接近を村人たちに禁じると約束してくれた。
これでオレは村の人たちを万が一にも巻き込んだりする心配をせずに、仮説を試すことができる。
オレの仮説が正しければ、移動先の照準を、時代ではなく人に合わせることも可能なはず――つまり、その術を使えば、ヤツらがいつの時代にいても、たどり着ける。
ただし制限はあって、彼らが時空の歪みの近くにいるときに限られるわけだが……。そこは問題ないだろう。よほどのことがない限り、彼らはその近くに居を構えているはずだ。

オレの仮説は実証された。
ちょうど、どこかに飛ぼうとしていた3人に遭遇し戦闘となり、そのままここへ飛んできた。
そして、テンゾウと再会した……はずなのだが。
オレはテンゾウを見る。
テンゾウもオレを見る。

このテンゾウはオレの知っているテンゾウなのだろうか?
もしかしたら、同時並行している別の世界のテンゾウだったりして……。
笑えない冗談だ。
「ん〜、いつまで待てばいい?」
オレが口を開くのと、先ほどテンゾウがかばって逃がした男が姿を現すのとが同時だった。
もうひとり、子どもが一緒だ。
「モズ」
とテンゾウが言うと子どもが走ってテンゾウに飛びついた。
「トキ! 無事? 大丈夫?」
そして、オレを見て「あ」と言った。
「や、どーも」
こんな子ども、知らないぞ、と思いつつ、一応、ニッコリ笑ってやると、その子はビクンと体をすくませてテンゾウの腹の辺りに顔を埋めた。
「やめてください先輩、怯えてるじゃないですか」
この口調は、テンゾウ以外の何者でもない。
「失礼な。脅したりしてないじゃない〜」
「先輩の風体は怪しすぎるんです」
そして、テンゾウは屈みこんだ。
「どうした? モズ」
「あのひと、あのひとだよ、トキ」
「カ……彼が、どうしたんだ?」
「前に感じた気配、あのひとのだ」
テンゾウは屈んだままオレを見た。黒目の勝った大きな目が、じっと下から見上げてくる。
オレは首を傾げた。
オレの気配? オレ、そんなに気配、駄々漏れだったか?
「この子はちょっと特殊な感知能力の持ち主なんです」
「ふうん」
特殊な感知能力ね。
「トキ、長からの伝言だ。そちらの方も一緒に、長の家へ、と」
どうやらここでテンゾウはトキと呼ばれているらしい。
「こいつらは?」
テンゾウにかけたオレの言葉に、その男が答える。
「私どもの村で、しばらくお預かりしてもよろしいでしょうか?」
「普通に縛ったりしたんじゃ、逃げられるよ」
「はい。承知してます。心得のある者もおりますから」
「そ。ならいいよ」
まだテンゾウに張り付いている子どもを横目に見て、オレは男の後に従った。
額宛こそつけていないが、男の身のこなしは忍のそれだった。



2008年02月18日(月)
ぎむれっと――または、ろんぐ・ぐっどばい 13) Side T


「そうか、それ以前の記憶はないのか」
ハギが杯を傾けながら言うのに、ボクは頷く。鴨肉の焼ける香ばしい匂いが部屋に満ちていた。
「忍とは、時に過酷な運命を背負わされるものなのだな」
わずかに痛むコメカミが煩わしい。

ハギは隠れ里の現状をあまり知らない。幼いころのわずかな記憶があるだけだ。
当時は、ようやく隠れ里が隠れ里として機能し始めたころ――木の葉の里も二代目さまのもと、アカデミーが設立され、スリーマンセル制度が確立されたころだ。
まだ政情は安定しておらず、騒然とした時代とはいえ、黎明期特有の活気に満ちていたと聞いている。
だからだろうか、生活がつらかったという覚えはないそうだ。
「だが、父や母は、違ったのであろうな」
両親は里を抜け、結果父とははぐれ、それでも母はここに辿りついたとき安堵したようだったと、遠い記憶を探りながら話してくれた。
ハギの母は、里の話も父の話も決してしないまま、数年前に他界したそうだ。
だから自分がどこの里の出身かも知らないそうだ。おそらく長は知っているだろうし、聞けば教えてくれるだろうが、別に知りたくもないとハギは言う。
その言葉とは裏腹に、ハギには釈然としない想いがあるようだ。
父と生涯会えなくても母は幸せだったのだろうか?
自分と違って外の世界を知っている母は、この村で朽ちていくことに抵抗はなかったのだろうか?
今の生活に不満があるわけではないが、両親がなぜ危険を犯してまで里を抜けたかったのか、その理由を聞かされなかったことが残念だと彼は言う。
ハギ自身はこの里で妻を娶ったが病弱な娘だったそうで、母が亡くなるよりよほど前に病死したそうだ。
夫婦仲は良かったが子はできず、子を成すことができなかったと嘆くハギを、母は「子を成すためだけにひとは生まれてくるわけではありません」と諭した。
「珍しく厳しい表情だった。きっと母の過去と何かかかわりがあるのだろうな」

そんなハギにボクは、この里に潜り込むために用意されたストーリーを語った。
だが、そのストーリーは作り事ではない。ボクの心情が違うだけで、事実あったことなのだ。
「その程度の過去を背負っている者はたくさんいますから」
カカシ先輩も、たくさん背負っている。
ご尊父の自死を目の当たりにし、スリーマンセルの仲間を目の前でなくし、さらに師を亡くしている。
すべて子どものころの話だ。
そして己の術を伝授した部下の里抜け……。ほかのふたりも、それぞれ別の師に就いた。
「オレの不徳の致すところなんだろーね、みんなオレの前からいなくなる……」
飄々と、いつもの眠そうな顔でボソリと呟く先輩が、胸中にどれほどの悲しみを抱えているのか、ボクごときにわかるはずもない。
だからボクは。
――ボクだけは、いつもあなたのそばに……。
ズキン! とコメカミの痛みが激しくなった。
「大丈夫か?」
「あ。はい。大丈夫です」
いったい、なんだと言うのだろう、この頭痛は。

ハギは気遣わしげにボクの顔を見ていたが、やがてグイと杯を空け、うつむいた。
「東の結界に……何か干渉してくるものがあるのか?」
うつむいたままのハギの表情は読めない。
「干渉? そんな気配を感じるのですか?」
「いや……わからない。俺は、いわゆる忍としての能力をあまり持っていない。そんな俺が、なぜ守り番に選ばれたのか、俺自身不思議なぐらいだ」
でも、何かを感じるから、ハギはこうしてボクの家にやってきた。
「ただ、な。あそこは、俺にとって特別な場所に思えるときがある」
顔をあげたハギは、今度はまっすぐボクを見た。
「特別な?」
「ああ。初めて守り番としてあそこに立ったとき、こう……なんといえばいいか……ひどく青臭いんだが、ここに俺の居場所があった、とでも言えばいいのか」
「実際、守り番に任命されたのは若いころのことなんでしょう?」
「まあ、そうなんだが」
照れたように言って、ハギはボクが注いだ酒をまた飲み干し、うつむいた。
朝の早い村は、まだ深夜とも呼べぬ刻限なのに、しんと静まり返っている。
そのなかに、ボクは夜に動く生き物たちの気配を当たり前のように感知している。
だが、それはボクが忍だからなのだろう。
かすかな気配を感じずに生きているひともたくさんいる、いやそのほうがきっと多いのだろう。

そんな物思いにとらわれたとき、パタパタと近づく足音を遠くに聞いた。
これは。
――モズ!
咄嗟に立ち上がり、プロテクターとクナイホルダーと忍刀を手に、縁側に続く掃き出しを開けて庭に跳んだボクを、ハギが呆然と見ているのがわかった。
だが、いまはモズが先だ。
低い垣根を跳び越え暗い道を走る。走りながら装備を整える。
向こうからモズが走ってきて、ボクの胸に飛び込んだ。
「来る! 何か来る! 今! もうすぐ――」
ボクはモズを抱きしめ、それから離し、屈んで目線を合わせた。
「ボクの家にハギがいる。一緒に長の家に行って、報告するんだ。いいね」
コクンと頷いたモズに、「ボクは東の結界に向かう」と告げる。
「わかった」とモズの足音が遠ざかるより早く、ボクは森の東に向かった。

ハギの言う意味とは異なるが、あそこは、特別な場所なのだ、きっと。
あとで長に確かめないとなんとも言えないが、かつてはあそこに時空の歪みがあったのだろう。
あるいは、歪みこそがこの村の入り口だったのかもしれない。
いつの時代か、何かが起こり、歪みは封印され、村には結界が張られた。
そして今、何かが起ころうとしている。
ボクがここに潜入を命じられたのは、その“何か”に関わりがある。

東の結界に近づくにつれ、鼓動が高まる。
いくら走ろうとも息など乱しはしないしないはずの忍であるボクが。
これは、何かの予兆か? だとしたら、吉兆であってほしいものだ。
地を蹴って、枝から枝へと跳ぶ。
振り返った東の守り番が驚きで目を見開く向こう、空間が歪むのが見えた。
森の木々が揺らぐ。
「退け!」
ボクの声に、守り番が枝から降り、後方に跳んだ。

ザワと枝がしなり、葉がざわめき、突然、現れた人影――。

――先輩!

白銀が闇に浮かんだ。

クナイを構える向こうに、3人の男――ひとりが印を組み終わった両手を解くのが見えた。
先輩の背後につけようとするより早く、おそらく先輩ともどもここに飛んできた敵である3人の間に動揺が走る。
「おい」
印を組んだ相手をひとりが振り返るが、印を組んだ男自身が、驚きに硬直している。
先輩のクナイが飛んだ。
チャクラを練り上げようとした刹那
「術はだめだ!」
と先輩の声が闇を裂き、姿が消えた。上方へ跳んだのだ。

「長の家へ!」
ボクは東の守り番に叫んだ。
ここは戦闘の場になる。
いくら訓練をつんだとはいえ、上忍クラスの戦闘に巻き込まれたら、戦慣れしていない村の守り番など、まっさきに犠牲になるだろう。
「行かすか」
敵らしい一人が投げる手裏剣を弾きながら、ボクは走った。
忍刀を抜き去り、東の守り番を追おうとした男の道を塞ぐ。

なぜ先輩がここに? とか、この事態はどうしたことだ? とか、そんな余計なことは一切ボクの頭から消え、暗部で先輩とバディを組んでいたころのように、視界の端で先輩を捕らえながら、敵――と決めていいのかどうか、わからないが、先輩の敵ならボクにとっても敵だろう、と判断した――と対峙する。
この数ヶ月、戦闘らしい戦闘には出会っていないが、勘は鈍っていない。

「ここから正午の方角に移動」
先輩の声を耳に、結界から遠ざかるよう敵を追い込む。
時空の歪みの近くで術を発動するのは、なんらかの危険が伴うのだろう。
相手も戦闘には慣れているようで、こちらの意図を察して抵抗を試みるが、3人相手に先輩とふたりなら、造作もない。

「テンゾウ、拘束!」

先輩の声にボクの身体が自然と動き、自分でも知らない間に両手を合わせていた。



2008年02月11日(月)
ぎむれっと――または、ろんぐ・ぐっどばい 12) Side K


「もう一度、あの村に?」
うず高く詰まれた書類の谷間から顔をあげた綱手さまに命じられ、オレは内心ドキリとした。まるで自分の考えを読まれていたかのようだ。だが、五代目はオレの言葉に
「なんだ、文句があるのか?」
と眉間にシワを寄せる。
「いえいえ。今回は、どんな名目で?」
ふん、と言うと、一枚の書類が差し出された。
「名目も何も。正式な任務依頼だ」
「任務?」
「村長から直々の指名だ」
「村長から?」
オレが書類を受け取ると、ああ、と頷いた五代目はデスクに肘をついた。ざっと依頼書に目を通す。
「そこにもある通り、あのときの記憶操作がお粗末なものだったのだろう。長が、記憶と事実の齟齬に気づいた。村の子どもたちのなかにも、そういう者が何人かいる。何が起きたのかきちんと調査をしてほしいという依頼だ」
「調査も何も……オレが知っている事実を、差しさわりがない程度に告げれば、それで終わり……」
ギロリと睨み上げられ、オレは言葉をつぐんだ。
「依頼は依頼。きちんと報酬はいただく。里のためだ」
無言で頷く。下手なことは言わぬが花だ。
「そして、もうひとつ。再度、時空の歪みを広げる術を使って欲しい」
「再度?」
「ああ。あのあと密かに暗部を派遣したが、だれも時空の歪みを開くことができなかった」
「印の組み方は間違っていないはずですが……」
「印を組んだだけで術が発動するなら、アカデミーなどいらない」
しかし、チャクラの量でもコントロールの仕方でもないはずだ。
暗部なら、オレと同等以上のチャクラ量とコントロール力を持ったものがいるだろう。
少なくともテンゾウは……そのひとりだ。
「なんらかのプラスアルファの要素が必要だ、ということなのだろう?」
「だったら、オレが行っても無駄かもしれませんよ」
「無駄なら無駄でもいい。無駄だとわかる、それも一つの成果だ」
正式な調査依頼が来ているのだから、この機会を利用すればいい、そういうことだ。

「ついては、これだけはおまえの耳に入れておく」
書類を返しながら、オレは姿勢を正した。
「今回の村長のように、ヤツラの記憶操作は完璧ではない。だから、どこかの時代にさらわれた忍の子どもがいたとしたら、その形跡は何らかの形で残っているはずだ。そこで、それぞれの隠れ里に調査協力を依頼した」
「情報を、公開したのですか?」
オレは驚いて綱手姫を見た。よく火の国が納得したものだ。
「こういうときのために、任務上知りえた不祥事を黙ってやっているんじゃないか」
ニッと笑った顔は、亡き三代目にも負けず劣らずの狸振りだ。
「どこの里も、まあ表向きは喜んで協力してくれたよ」
「で?」
当然、それぞれの隠れ里に暗部が派遣されただろう。五代目の目的は結果報告などではなく、その依頼を受けて里がどう動くかを探ることだからだ。
そんな任務に忙殺されていたのだとしたら、テンゾウも大忙しだったことだろう。
「驚いたことに、今回、どこの里も真面目に取り組んでくれたよ。多少の温度差はあったがね」
「つまり」
「ああ」
「やはり、抜け忍の仕業ですか」

シンと執務室が静まり返った。この静寂こそが、前振りなのだ。
任務のほんとうの意味を知ることになる、その前兆であり、同時に、忍の本能を揺さぶる呼び水ともなる。

「ひとつ、興味深い報告がある」
ふぅ、と五代目がため息をつく。
オレの緊張が高まる。

「霧隠れの里に、あの鬼人の殺戮から逃れた者がいることがわかった」
卒業試験に臨んだ同級生すべてを殺した鬼人、桃地再不斬の最後は忍としての哀しみに満ちていた。だが、すでに亡骸となった白を見つめるヤツの顔が安らいでいたのも、思い出す。
彼に殺された子どもたちは、彼のそんな未来をどう思うだろう。
「逃れた、というのは?」
「単純な話さ。当日、腹を下していて試験の始まる前、トイレに走った。それだけで失格だが、それがまあ、幸いしたんだな」
「なるほど……」
「目の当たりにした惨劇に昏倒し、だからこそ惨殺の犠牲者にもならず、その代わり寝付いたそうだ。結局、忍にはならず、里の片隅で暗器を作って生計を立てている、で、その男が妙な事を言っていた」
五代目の目つきが鋭くなった。
「試験の後、死体がひとつ消えている、と言うんだ」
「消えて? まさか」
「再不斬のしでかしたことは、さすがにあの里にあっても驚異的な出来事だったらしく、詳細な記録が残っている。もちろん記録は封印され一般人が見ることは出来ない。今回、霧隠れの暗部が、記録を紐解いて詳細に調べたところ、確かに、試験に臨んだ者の数と殺戮後の死体数に齟齬があることがわかった。当時は、あまりの惨状だったから、切り刻まれほかの死体にでも紛れたかと思われていたようだ」
「ちょ……ちょっと待ってください」
オレは急いで情報を整理する。
「その消えたひとりが、あるいは?」
「今回の人身売買組織の摘発時に消えた二人のうちのひとりかどうかはわからない。が、同じ手口を何度も使っているとしたら」

そういうことか――。
時空間忍術を使って過去から人を連れてきても、ひとが一人消えた不自然は残る。
だからオレは、ヤツらは未来から人をさらってきているのかもしれないと思っていたのだ。
オレが飛ばされたのは過去だが、未来にも飛ばすことができると思った根拠は、あの移動の際に見たテンゾウの姿に起因している。
いずれにせよ、想像でしかない。だが、否定できるだけの材料もない。ほんとうに一瞬で、テンゾウだと認識するのだけで精一杯、それ以上の観察はできなかった。
だからこそ、一瞬の印象、勘を信じるのだとしたら、あれは――遠くない未来のテンゾウの姿だ。
だから、彼らの術は過去未来を自由に行き来できる可能性もあると読んでいた。
だが、彼らにとってよりリスクが少ないのは、過去なのか未来なのか、そこだけに照準を絞れば。
未来を変えることで過去が歪まないとも限らない。それは予測不可能だが、過去なら……。
それに、彼らが本来存在する世界が「今」とは限らないということもありうる。
そうだとすればオレにとっては未来だが、彼らにとっては過去という事態もありうるのだ。
つまり……。

「過去において“早い死”が確定している者――それが獲物、ですか」
険しい顔で五代目が頷く。
「おまえはもうすぐ死ぬ、それも悲惨な死を迎える、その事実を信じない者には、少し先の未来を見せればいい、もうすぐおまえはこうなるぞ、と。そして、死になくなければ、チャンスをやる、と?」
オレの言葉に、五代目の眉間のしわが深くなる。
「今、殺されるよりは、たとえいつとは知らぬ時代、だれともわからぬ相手に売られたとしてもチャンスがあれば生き残る確率の高いほうを選ぶ者もいるだろう」
「相手が音の里じゃ、似たり寄ったりのような気もしますがね」
「今回は、たまたまだ。売られる先は必ずしも隠れ里とは限らない、むしろ貴族や王族の後宮あたりで働かされるか、慰み者になるか」
「それだったら、逃げ出して自由を手にすることも可能……ですか」
もし、そうなら。
決まった己の運命を、それも哀しい運命を変えようという意志を持つ者なら。
「人身売買組織ごときに、怯えたりひるんだりはしませんね」
「そういうことだ」

オビトなら、どうするだろう、とオレは考える。
そしてオレは、そういう形でオビトが生き延びてくれていたら、どう思うだろう。
むろん答は出ない。
むしろ答を出そうとする行為が、オビトの死に対する冒涜のように思える。
オレは左目をそっと押さえた。

「はたけカカシ。謹んで任務を拝命いたします」
「行ってくれ」
「御意」



2008年02月04日(月)
ぎむれっと――または、ろんぐ・ぐっどばい 11) Side T


怯えるモズを宥め帰宅させると、ゲンブは難しい顔をした。
「あそこには、時空の歪みがあるのか?」
「いえ……歪みがあると断言することはできません。あるなら、もっと……それを象徴するような出来事があるでしょうから」
「しかし、モズの発言は」
「はい。無視することもできません」
ボクのなかでは、ある仮説がかなり明確な姿をとり始めていたが、それをゲンブに告げていいものか判断がつかなかった。
「時空間忍術の影響を受けやすいポイントである可能性も」
「……なるほど」
「そういった術を使う場合、戦闘が伴うことも多いでしょうから、モズの発言もわかります」
「いずれかで起こっている戦闘の気配も一緒に伝わってくる、ということか」
「……おそらくは」
慎重に選んだ言葉は、ひとまずゲンブを納得させたようだ。
「しかし、あれの能力は……何を媒体にしているのだろう」
それについてもボクには仮説があったが、口をつぐんでいた。ゲンブが信用できないということではなく、ハギの言ったことが気にかかっていたのだ。
ボクには伝えるように、という長の言葉は、きっと今回の任務の鍵となっている。
だから、それに関連しそうな事柄については、うかつに口にすべきではない、そう判断したのだ。
「休んでいるところを、悪かったな」
「……いえ」
ボクは一礼して、ゲンブの家を辞した。

秋の日は傾き始め、山影が里を覆っていた。
日没の光芒を放つ太陽から、視線を北へ、東へと巡らせる。
東の空はもう藍に彩られ、夜の到来を告げている。
家への道を辿りながら、ボクはカカシ先輩のことを考えた。
ボクは、自分でも気づかぬうちに、あのひとに懸想していたのか?
尊敬していた。それはほんとうのことだ。だが、先ほどの己の動揺は……。
長い間、尊敬と憧憬だとばかり思っていたこの感情は、まぎれもなく恋慕というやつではないのか?

目を閉じるまでもなく、浮かんでくる先輩の姿。
先陣を切って走る。
敵の暗器をクナイ一本で防ぎ、道を切り開く。
瞬時に相手の術をコピーし、まるで呪術を返すかのように同じ術をぶつけ動揺を誘い、止めを刺す。
仲間以上に信頼している忍犬に敵を追わせ、追い詰め、大技を仕掛けて一網打尽にする。
そして、雷切。
あの鳥の囀りを聞くと、いつも思ったものだ。
この戦闘は、ボクらのものだ、ボクらが勝つ。
先輩が力尽きるまで雷切を発動せずにすむように、ボクらは一層、奮起した。
殲滅した敵の骸を前に、いつも先輩は無表情だった。時に無表情のまま手を合わせた。
倒すまでは敵と味方、だが、死んでしまえば、いずれも忍という同胞。
ボクたちは勧善懲悪のヒーローではない。
依頼のまま、時には人を欺き殺める忍を生業にしている。
先輩は、忍の矛盾と誇りを同時に抱えて生きていた。
決して折れることのない釘のように。
どんなに戦闘に倦み疲れているように見えても、先輩の芯にはいつも木の葉の忍としての誇りが一本通っていた。

「会いたい」
言葉に出して、実感する。それが、紛れもない本心であることを。
――あなたのいる木の葉の里に帰りたい。
喉元を絞められたかのように、熱い塊が喉を塞いだ。
ボクを、里に繋ぎとめているのは、先輩なのかもしれない。

こうやって里を離れ、潜入任務などしなければ、きっと気づくことなどなかった……。

なんとしても、今回の任務を終え、里に戻らなくては、戻ってそして……。
いや、何も告げなくていい。
今までのように、暗部時代の先輩後輩のままでいい。
時折、一緒に酒を酌み交わす、気心の知れた存在であれば、それでいい。
ともに戦ってきた時間は長い、その記憶こそがボクの財産だ。
「っつ」
ズキンと、こめかみが痛む。
「またか……」
ため息をつきながら、指先でこめかみをトントンと宥めた。

「お帰りなさい」
帰宅すると隣の娘さんが鍋を抱えて立っていた。
「これ、煮物です。お嫌いでなければ」
昆布出汁と野菜と醤油の香りが鼻先をくすぐる。ぐぅ、と腹が鳴りそうなほど、いい匂いだ。
だが、ボクは首を振った。
「お心遣いだけ、ありがたく頂戴しておきます」
娘さんの笑顔が凍る。
――ボクはここに骨を埋めることはできないのです。だから、ごめんなさい。
「どうぞ、ご家族と召し上がってください。身の回りのことは煮炊きも含めて自分でできるので」
深く礼をするボクの耳に、パタパタという足音が遠ざかった。
――カカシ先輩……。あなたのせいですよ。
先輩は、まったくなんの関係もない。自分でもわかっている。でも、そうとでも言わないことには、この気持ちのもって行き場所がなかった。
娘さんの好意には気づいていた。
ボクが、北の守り番に任命される前、ここよりもう少し西にある集合住宅の一室に住んでいた頃からだから、打算ではないこともわかっていた。
だからこそ、受け入れるわけにはいかない。
守り番に任命され、空き家だったこの家をあてがわれたときには、長はボクがこの娘さんを娶ることを期待しているのかと思ったほどだ。
だが、その手の圧力は感じなかった。
長の意図は、わからない。そうやすやすと腹を探らせてくれるとも思えなかったが、やはり腹立たしいことに変わりはない。

ため息をひとつついて、家に入り、電気をつける。
釜にあるのは冷や飯。貯蔵庫には、保存のきく根菜類があったが、しなびた菜っ葉を取り出す。
最後の干し肉のひとカケラも取り出す。
鍋にきざんだ菜っ葉と干し肉、冷や飯を入れ、雑炊をつくる。仕上げに卵をふたつ。
明日は、どこぞの農家から鶏を一羽、買ってこよう、ついでに酒作りの一家から焼酎を一瓶。
今日は、雑炊と漬物、前にゲンブからもらった濁り酒で、夕飯だ。
ポリポリと糠づけをかじりながら、これも隣家の娘さんからもらったものだったな、と思う。
――そういえば、先輩は漬物が好きだったな。
糠を分けてもらえば、自分で糠づけぐらいつくれるだろう。
ここで漬物を漬けても先輩に食べてもらえるわけでもないのに、と自嘲する。
自嘲してから、先輩はどこで漬物を食べたのだっけ? と首を傾げた。
どこかでそんな会話を交わした気がするのだが……。
『ここの糠づけ食べちゃうと、居酒屋でお新香たのめなくなっちゃうね〜』
そんな先輩のセリフも覚えている。そしてボクは、香の物をつまみながら日本酒を飲んでいる先輩の横で、豚肉のしょうが焼きをおかずに丼飯をかっこんでいる。
『脂身嫌いなくせに、しょうが焼き好きなテンゾウって変』
そんなことを言われたのも覚えているのに、どこの店か思い出せない。
こんなに物覚えが悪くて、よく忍が勤まっているものだ。

「お〜い。いいか?」
表からハギの声がしたのは、雑炊も漬物も腹に収め終わったときだった。
「お疲れ様です」
戸を開けると、ハギは「邪魔していいか?」と聞いた。
「ええ、もちろん。でも……」
ハギが手にしている酒瓶を見て、何かつまみになるものがあっただろうかと考える。
「いい、いい。つまみも持参だ」
身体の後ろに隠していた左手には……。
「どうりで物騒な臭いがしたわけですね」
「ああ、さっき。一羽絞めてもらってきた。おまえ、捌けるだろう? 鴨鍋といこうや」
「ねぎ、あったかなぁ」と貯蔵庫を覗くボクの背後で、ハギが笑った。