カゼノトオリミチ
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うす灰色の
墨を流したような空
もう
初夏の便りが
花ひらく
タツナミソウ
雑草のようにたくましく
そして美しい
いつの間にか
名の通り
さざ波を立てるように
咲いている
ざあざあと いきなりの
音に驚き窓辺に行くと
雨が降りだしていた
四月の終わりの雨は
容赦なく
若葉たちを洗うように
降りつける
ああ 心地良い
初夏に移りゆく
力強い雨の午後
柿の若葉が
つやつやと
灰色の世界の中にまぶしい
ここに桜はないけれど
川面に流れる花いかだ
ずっと上の街のほうから
桜咲いたと知らせつつ
ゆるりと流れてやってくる
花びらたちはにぎやかに
岩の瀬に寄りひとやすみ
おしゃべりしては風にのり
また川下へと流れゆく
わたしは古本屋の帰り
片手にうれしい重みを感じ
いそいそ歩く川のヘリ
上手からさくら知らせる花いかだ
ナツ
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natu
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