カゼノトオリミチ
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2014年04月21日(月)  物語





しずかにしずかに

時は 春の雨にぬれ



うすみずいろとうすむらさきの

しずかな炎が 

心の 奥の チイサナ箱で

揺れている

気付かぬふりして しまってある



手でにぎりしめて

消してしまったとしても



物語は それでも続く



しずかな雨の日

しずかにしずかに

暮らしている



雨にぬれても

はらはらと

めくられてゆく 日々



物語は それでも続く






2014年04月15日(火) 夢の国




川沿いのハナミズキは

早々と初夏の光を

浴びて白く輝く

さくらのなごりが

その下の川面にまだ

浮かんでいるのに



ずいぶん今年の春は

急ぎ足で去ってゆく

くふん と鼻でないて

横たわった老犬は

菜の花かすめて吹いてきた風と

なにやら話している様子



だんだん太陽傾いて

二時をまわれば

今日が淋しくなってゆくから



春が翳ってゆく前に

見えない瞳をなお閉じて

行ったことない夢の国

風のおみやげ

遠い国の波の音 子守唄に



うとうととして

春の日は またひとつ

過ぎてゆく

ゆっくり おやすみ









2014年04月08日(火) さくら





はらはら はらはら

散る散る さくら

幼子にも 知らされる

その切なさ



さくらは

散るために咲くのかな

だから

少しの 寂しさが 

ほんのり こころにあるね



駅へ急ぐ人にまぎれ

でもちょっぴり

やさしくも なれる

今年も 咲いてくれて

ありがとう



はらはら 雨に

散った後

排水溝に 流れゆく

水たまりの花びらを

いとしく思う 



曇りの午後

ぶわっと 舞う

春の嵐に

いっそ こうあれ というように

いさぎよく散る



毎年

駅への桜並木を

その道を 歩くだけなのに

さくらはいろんなこと

教えてくれる



花のあとには

ふくよかな緑の葉を

広げるけれど

それは わざわざ

誰の目にも

止まらぬように 

気配をかくし 音もなく






natu