カゼノトオリミチ
もくじ過去未来


2013年03月22日(金) はるのかぜ




こんな日は覚えている
こんな日は思い出す

川沿いの土手に
ねころべば
うす水色に広がる空

白い綿雲が
午後へ 午後へと
流れてゆくこと

さやさや
雑草が音を
奏でていること

耳の中の
ミツバチの
羽音のつぶやき

暖かな太陽は

そろそろ
帰ろうと
語りかける

風が西向きになると
魔法が解ける

菜の花のニオイが
遠い記憶を
ノックして

なぜだか
さびしくなる前に

はこべらや
オオイヌフグリが

はるのかぜに
ちいさく
震えているよ





2013年03月14日(木) 紅梅はらり


冷たい外を歩くと

ココロの澱が

はがれてゆく

黙っていなさい

枝の小鳥が

並んでるコトバを

ついばめば

はらり

紅い花びらが散る

心地よい

寒の戻り

春はこの

小さき山をひとつ

またひとつ

超えて来る

それまで

口を閉ざすのだ

おしゃべりは

小鳥たちに

まかせて








2013年03月12日(火) 旅人

この感覚

表す言葉を探してる

頭の中がゆっくり

空洞化してゆく

思考は

いつでも空回り

内側へ内側へと

巻き込むように

ヒトリ

ココロの世界を

彷徨う

そこは例えば

胃の内壁のよう

生暖かく

ゆっくり動く

孤立という

コトバが

どこかをかすめてゆく

受け取るだけじゃあ

ダメなんだ

問いかけは

自分自身に

答えも

自分自身に






2013年03月05日(火) 啓蟄に


証がねむる

木蓮の

指先ほころび

季節はつづく


証がねむる

細い枝の指す方向

約束の日に

芽吹きほころぶ


土の中

うごめくものたち

目をさます


啓蟄の日に

母なる大地より

一輪の使者


どこまでも白い花

名はニゲル









2013年03月03日(日) 冬の白い花




この手のひら
そっと合わせ

ココロの中に
語りかける

それは
短い手紙のよう
書き損じの
ハガキのよう

空には
淡いはるかぜ

風に
記し足りない
コトバを放つよ

この便り
いつか誰かに
届くかな

合わせた手のひら
そっと開けば

冬の
白い花が
微笑んで咲いた




natu