カゼノトオリミチ
もくじ|過去|未来
秋分の日をさかいに
ちゃんと太陽と月は
暑さと寒さの
つじつまを合わせてる
急に
毛布が恋しい夜が来て
明けた朝には
雨の音
そして
ピアノのトレモロ と
ぽうぽうぽう と
ひとりぼちの 鳩の声
ヤマボウシの葉も
冷たい雨に
染まりゆく
今日 季節は
ひらり ひるがえった
庭の隅から
生まれる 夕暮れたちも
あわい紫から
墨色へ 衣装を変え
湿り気を含んだ
空気の粒は 重たく
ふと ひとりでいれば
ざわわ 今夜の風の便り
西の国の 枯れ草の波を
揺らしてきたのか
ひんやり なんだか
背筋まで ぞくぞくする
虫も鳴かない
この
秋になった 夜に
シュウメイギクの 白い花びら
秋が来たよと告げている
午後の太陽が オレンジ色を帯びてきて
風に揺れる洗濯物 どこかさびしそう
この辺りにも 秋が来ましたって
つぶやくコトバは 一縷の風の糸となり
遠くへ帰る トリの羽に もぐりこみ
西の国へと 届きますよう
ねえたぶん コトバは空を飛ぶ
そう信じたい
届きますように
秋がそおっと ふところに入り込む
さらした二の腕の うすい皮膚にはりついて
少しさみしい キモチにさせる
うす紫の夕暮れが この庭の隅っこに
生まれる時間も 早くなり
チイサナ茂みの あちこちで ひそひそと音がする
土の上の湿り気と 鼻をくすぐる 九月の風は
知っているようで 知らないニオイ
よそゆきの 遠くから来たニオイ
なぜだかワタシは ココロのなかで
手をあわせている
おそらく 秋のかみさまに
こらこら
なみだ
なんでいま出る
まったくもう
ココロが ふうわり
この低気圧に
包まれて
ココロのネジが
緩んだね
でももう だいじょうぶ
さらさらと
ねこじゃらし揺らして
季節はうごいているよ
ココロも 秋へと
変わってゆける
フト
不安になるかい
また今日が来て
まかれたネジで 動き出す
フト
こんな チイサナ
心臓の鼓動が 頼りなくて
不安になるかい
朝は 誰にでもくる
なぜか
わからないけれど
この世に 生をいただいて
果てる日までは
生きてゆくのだよ
ヒトも
スズメも 老犬も
朝日を ふたたび
みるために 眠るのかな
natu
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