カゼノトオリミチ
もくじ過去未来


2011年02月24日(木) 春の砂浜へ




うん そうそう

だまって 針はすすむ

若草色の糸は すすむ

さっきから

春のトリたちの 声がする

お前たちの ウタを

ずうっと聞いているよ

土の中の 虫たちのあくび

カタバミのつぼみが

ひっそり 小首をかしげたこと

トリたちは うたう

とおい砂浜に 吹く風にも

ハルノ カオリガ スル と

ふと

こころが いま 飛ぶ

コトバをみんな

春の波に 捨てにいく

トリたちが 見た とおい砂浜へ

あの日のコトバも

さっきまで

針がひろった コトバたちも





2011年02月16日(水) 色糸




糸色は

細く長い
ココロの迷路から

いつかのキオク

鼻の先へふわり
たぐりよせ
よびさます

ピピピと空に
浅い春のトリが鳴き

ひと刺し

朱色の
糸を手繰れば
南天の
実のなる路地裏へ

草色の糸には

空き地で遊ぶ
ランドセルが
見え隠れ

この午後
ここにいるワタシと

キオクの中に
まだ棲む日々とを

針の先の色糸は

ひと刺し
ひと刺し
行ったり来たり

ゆっくりゆっくり
時間旅行






2011年02月01日(火) キサラギ




電線から
幼い鳥のさえずり

玄関脇で
淡い光のニオイを感じて

ホソイこころの糸が
そおっと 鳴る

ワタシのどこかで
春が
チイサク目を覚ます

覚まさなくて いいのに

歌はもう 歌えないのに

瞳を閉じたままの
カナリヤは

草色の風に
産毛を震わせ

柔らかな土の上で
エサをついばむ

叶わぬ夢
ばかりをみている

これから
やがて
めぐり来る春は

記憶ばかりを
呼び覚ます

いちいち 
いちいち

ムネがイタイ

だから
もう

歌わないと言ったのに





natu