カゼノトオリミチ
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2010年10月25日(月) とおめいな季節




ゆるい灰色雲の下で
キイキイと
ヒヨドリたちは
いっそう声を響かせる

柿の枝で
ハナミズキの枝で

美味しいものが
ここにあるよと 鳴き交わす

しとしと雨の朝
季節は急ぎ足

とおめいな空気を
いっぱいに吸い込むと
私は

季節を映す
ガラスびんになってる

茜色の葉や
朱色のバラの実と

枯れ草の丘を
吹いてきた風に
つられて躍り出た
子スズメのうぶ毛やら

この秋の軌跡を
いとおしく抱きしめる

さざ波のように
繰り返す日々も
寄せ来る静かな冬も

ここでこうして
とおめいな手のひらで

受け止めてゆく

しなやかな季節の流れに
包まれて
励まされて
ガラスびんのなかで



2010年10月15日(金) こげ茶の秋




こげ茶の糸はお天気の日に

ひなたでまどろむ

ワンのしっぽの色ね



チリチリ小さな楽隊の

終わらない演奏会と

更けゆく夜の秒針を

ひとつひとつ拾っては

こげ茶の秋を 縫いとる作業



くふんくふんと

眠るワンのため息も ぬくもりも

その証も込めて

布を拾う



林檎色した紅茶で染めた

四角い布のはしっこに

深まる秋を 縫いとってゆく











2010年10月02日(土) 10月の精




水色のずっと遠くにある
3本のとんがり帽子が

西へと傾き始めた
温かいオレンジ色に
染まってる

誰かが物差しで
計ったように
おんなじ高さで

鳥たちの合図には
きっと

「あの3本のとんがり帽子の」

って言葉が
使われてる

水色には
ふわふわの雲が浮かび

肌には風が冷たくなった

風の進路を南の国から
氷の国のほうへと
変えたのも

3本の大杉の木の
頭を揃えて切ったのも

思いがけず「コンニチワ」と
ワタシの口から

小さなコトバが
飛び出したのも

どれもみんな
10月の精のお仕事の
仕業なのかも知れません







natu