カゼノトオリミチ
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2009年08月28日(金) ユメのかけら




夕暮れの風は
日ごとに 透き通り

ベランダで 耳を澄ますよ

キミの声が 聞こえてこないか
風の色に
ちぎれた会話の断片が

コトバの切れ端が
言葉のリズムの 一拍が
まざっていないかと

耳を澄ますよ

気づけば 陽は落ちて
秋の薄絹の裾が
音もなく
ワタシの背中に近付いていた

結んだ手の指から
捉まえたはずの ユメのかけらを
はらり 落して
吹きすぎる 風


2009年08月25日(火) 8月は終わらない




8月の日めくりは
いったい何枚あるのだろう

夕べ眼を閉じて

眼を開けるとそこには
また新しい1日が
きちんと笑ってる

もう
何度も朝を迎えました
でも
8月は終わらない

風は
朝が来るたび
透き通ってゆく

残り少なくなったはずの
日めくりが
パラパラと
焦ったように
身を揺するけれど

不思議と
8月は終わらない

何度目覚めても
また今日も
8月の朝がそこにいる




2009年08月21日(金) 秋風




しめった分厚いてのひらの
血管のおくから
とおめいな風が ひとすじ ふたすじ
流れはじめて

水面に輝く
キラキラの膜の下に
音もなく
たゆたうものが
白い肌から染み出して

この夕暮れに秋が生まれる
庭の木陰の奥で
あなたのまつ毛の先で
ひっそり

ラベンダ色の街をさまよう
犬と私
空は茜
道には 炭色が流れはじめて

帰り道がもう わからなくなりそうで
ひと
ひとり ひとりが ゆうらり
歩いてゆく ふらふらと

みんな ひとりを生きている
そんなふうに あきらめて
タメイキ してみる

秋風に たゆとおてみよう
夕暮れに
白い肌が浮かんでいる 
うす紫を まとっている


2009年08月10日(月) カタンコトン




今日の朝

つと 席を立つ

飲みかけのコップは 汗をかき

洗い桶に 皿や箸が

放り込まれたまま

薄手のカーディガン羽織り

電車に乗っている



カタンコトン

乾いた線路の音



夏休みの私鉄は

色んな人が乗っているから

誰も気にしない



携帯画面で

張り巡らされた地下鉄路線図を

目でなぞる

このまま地下へすべり込み

何処へでも行ける

何処へ行こう

街中は悲しい

公園も寂しい

デパートも

駅ビルも

ただただ



水族館ならどうだろう

薄暗い通路をはさんだ

ガラスの前で

足のすくむまで

サカナを眺めるのはどうだろう



natu