カゼノトオリミチ
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2008年02月26日(火) 浅い春 くもりの午後




うす灰色の午後 西の空は

大陸から届いた 細かい砂粒に 

低く覆われ

わずかな雲の隙間から 淡い水色が 覗く



ホコリだらけのベランダに

行き場をなくした オモイばかりが

吹き溜まり なぜ

もう 季節が動くのか



ああ いつもそうだ 浅い春には

土色の風に吹かれ

まとまりなく 毛羽立つ 雛鳥の胸毛のように

ざわざわと ココロが あわ立ち

これから どこへ散ってゆけばいいのか

心の準備もままならず 立ち尽くす



ゆうゆうと 黒いつばさで 風に乗る

カラスになりたい

強い風を 受けて

淡い春を   

右から左へ ナナメに横切り

飛んでみたい




2008年02月24日(日) 風のベランダ




木立が 震える朝も

みぞれ混じる 雨の午後も

屋根の上 凍る月が 輝く夜も



同じ空の下 息をしている

それだけは 確か。



…たぶん。



よろこびは 届かなくても

かなしみも 拾うこと 出来なくても



吐き出した 息の粒は

浅い春の空気に 溶け込み

排気ガスと一緒に この街にも 届く



存在の わずかな気配を 感じとろうと

ワタシは今日も

耳を澄ます

風の ベランダで





2008年02月17日(日) 遠く 遠いね




小さな街に溶け込むよう

5時の教会の鐘が 鳴ると

路地のあちこちから 生まれる風

いろんなもの 連れてくる

それは

湿ったニオイのむかし話ばかり



ワタシは

頬に 張り付く髪の毛を

振り払う

いやいや するように 



街はずれの 坂の向こうの雲

たそがれ色に染まり

そおいえば

あなたの存在は その雲のようで

立ち止まる



遠く 遠いね

自転車のペタル つま先つついて 言い聞かせる

遠いよ 遠いね 

だから

もう いいよ



たそがれ時の風は 私を見つけては

むかし話を したがるね



この坂道を 滑走路にしたら

届くかな

あの雲まで




2008年02月10日(日) ふゆのおさんぽ




北風の午後のお散歩

陽だまりで 鼻をすりつけ さがしもの

ワタシは 生垣のむこうに

紅色の梅が ほころんだのをみつける



お庭の橙の実を

黒いカラスが 悠々とつつくのを

柵の間に 鼻先つっこみ

じりじり 見ている茶色い子

ワタシは 橙の実の青空に映えるのを

うっとり眺めている



角を曲がると ぴゅうと吹く

冷たい風が 嬉しいの シッポを追いかけ

くるりとまわる

ワタシは 遠くのベランダで 忙しくはためく

白い洗濯物たちを ぼんやりみている






2008年02月06日(水) 映画 サラエボの花




感情などいらない

鉛いろの空の下 歩くには



あなたの爪を 切りながら

どうして 伝わらない いいえ 伝えられない



誰が 望んだろう 消せない 昨日を



今までも この先も

苦しくても 捨て去りたくても

大切なあなたは 私の宝物



重いまぶた 閉じれば 

明日が やってくる

守るしか ない  一輪の花

あなたの 笑顔



黒く塗りつぶした 記憶と共に





2008年02月01日(金) まだまだ春は遠いよ




向かい風が 思いのほか まぁるくて

口ずさんだ 歌が ほろりとさせて

自転車のペダル せかせか 踏んだ



こんな どこかの 遠い町まで

あなたの歌が 風にのって 流れてきて

どこの誰とも 知らぬ 私にさえ

頬ずりしていった ような 錯覚

カゴの長ネギが ゆれる



傾きかけた太陽が

道路を金色の道に かえる 魔法

親子連れの シルエットを 横切る のらねこ

春は まだ 遠いね なんだか

届かなくって

そんなこと わかってて でも

涙が でちゃうよ




natu