日記
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2012年11月30日(金) 江森三国志・2

姜維と同じく孔明を破滅させる張本人として描かれた劉禅については、善良
だけど凡庸で無能という既存のイメージからずいぶんと黒くなったなあと、そのくらい。


諸葛均は、魏のスパイになった動機が弱い。
孔明の傍で孔明のやり様を見ていて憎むようになった、というなら分かりますが。

それ以前、最初から孔明を裏切っていて、しかもそれについての後ろめたさも
何もなく、当然のように憎んでさえいる。
妻子を人質に取られてやむなく実の兄の孔明を裏切るなら、もっと罪の意識
や後ろめたさがあってしかるべきと思うのですが。
三顧の礼以前に、肉親の孔明を裏切って平然としているだけの何かがあった
設定なのかな?
今回は、10巻のうち2巻が手に入らなかったので、そこに何か出て来たなら
納得ですが……

姉から、かつて孔明が身を持って自分たちを守ってくれていたと聞いて、その日の
内に自害してしまうあたりを見ても、さしたる理由もなく兄を裏切っていたとしか。


それと関羽。
正史にもあるエピソードから、意外に小人物的解釈をされていて、作中の孔明も

関羽はもっと恥を知る武人だったはずだ。もっと大きな人物だったはずだ。
孔明は限りなく情けなかった。

と嘆いて?います。
ファンの中にも「関羽を見る目が変わった」とおっしゃっている方も居ました。

ただ、個人的には「関羽もああ見えて可愛いとこあるじゃないか、あっはっは」と
笑っておしまいになるレベルじゃないかという気がします(笑)。

と、言うか逆にこれは良いとその単純さをついて都合良く利用出来た気もする
のですが………

本気で失望しているこの作品の孔明を見ていると、自分が思い入れた人物に対する
純粋さと、それ故の弱さを感じます。


馬謖の解釈は好きですね〜。
ものすごいリアリティ。
普通の人間ならこうなっちゃうよな、という。
人物としては、銀英伝のトゥルナイゼンとすごくかぶります(笑)


そうそう除庶。
これもあまりに本来のイメージと離れているので、重なりませんね。
姜維ほど憎たらしいイメージも無い。
作品内で非業の最期を遂げているので、読者としてはそこで溜飲を下げて
しまっているのかも。

しかし、均ほどではないにしても、やはり孔明を殺したいまでに憎む動機が
弱い気もするかなあ。
その点、鳳統が孔明を憎む心情には、ごく自然に共感出来ますね。
この作品の鳳統が孔明のような存在にコンプレックスを抱くのは、ごく当たり前に
見えます。




2012年11月29日(木) 江森三国志・1

膨大な参考資料に基づくその綿密な時代考証と、人物や人間関係描写の
秀逸さで、一部から非常に高い評価と圧倒的支持を受けながら、決して
メジャーに語られることは無い。

赤壁から五丈原までの、諸葛孔明を主人公とした、知る人ぞ知るいわく
つきの三国志です。
私個人は三国志を元にしたパロディーと受けとめています。
と、言うかあまりにも救いのない終わり様なので、そう思わないと精神的に
立ち直れないかも知れませんね。

勿論人間や国家に永遠の命など無い以上、別に孔明に限らず、全ての歴史の
物語を追って行けば、最終的に死と滅びで終わるわけですが、大枠の事実は
変わらなくとも書き手の意図によってずいぶん変わるものです(苦笑)


変わると言えば人物の印象。
孔明本人は性格や感覚的に「女性」の部分が多すぎて、本来の孔明と重なる
ことはないのですが、周囲の人物の印象がもう(笑)

どんなに「これはパロディだ」と自分に言い聞かせてもこのヤローと怒りを
禁じ得ない(笑)
その、悪い方に印象が変わった代表が何と言っても姜維でしょう。

本来、姜維と言えば美形の好青年、孔明の死後も忠義を尽くして蜀と共に
滅びた悲劇の武将として、器や能力の議論はともかく、悪く思われたり嫌われ
たり等はあまりない人物です。

それが江森三国志では、孔明にこれ以上無い悲惨な死と滅びをもたらした張本人
として描かれるわけです。
しかも可愛がられ、慕っていたはずの孔明を破滅させるに転じた、その動機が
イマイチ弱いため、余計に読者は張り倒してやりたい衝動にかられる(笑)。

その動機の弱さが、作者の意図的なものか、それとも作者としてはもっと
説得力を持たせたかったのに失敗したのかは分かりません。

読者としては、その後の歴史上の姜維の運命を思い出しては張り倒したい衝動を
押さえるしか無いですね、もう(笑)


長くなったので続く。


なつき