土曜日は出掛けて。 植物園とか、食事とか、カラオケとか。 いつも通り、全てを支払ってもらうあたし。 男になら罪悪感は芽生えない。 華になら、 最初の頃は、ずっと嫌だったし、困ってた。 今はもう、慣れた。 店員さんが意外そうな顔をするけど、 あたしは笑顔で「ごちそうさま」と言う。 そういう関係。 華にあげたプレゼントは、ささやかなもので、 指輪に比べれば、お金なんてあんまりかけていない。 煙草3ケース、手作りクッキー、 いたく感激された。 そんなものだけで、日頃のあたしの行いは帳消しにされる。 なんて安いんだろう。 次の日は一日家の中で。 ごろごろしながら、過ごした。 ゆっくりと流れる週末の時間。 華は、あたしに、何の痕跡も残さずに帰った。
今日は、華の誕生日。 あたしは仕事。あいつも仕事。 しかも。 ちょっと貧血だとか、微妙な天気で偏頭痛だとか。 そんなんで、楽しい日では、ない。 プレゼントは、先週末のお出掛けで買ったから。 ケータイストラップになるように加工した、黒猫のジジと。 ユニコーンが彫られた大きめのリング。 もう用意するものはない。 なんて。 まあ、本当はそっちが本命だったわけじゃない。 なにを用意したかは、渡した後で。 大したものじゃありませんけど。 雨が、降りそうで降らない一日は、重くて、苦しい。 雨が、降り出した後の一日は、苦しくて、寂しい。 わがまま、な、このカラダ。 あなたが迎えた、今日は、29回目。 曇り空の一日でした。 なんにも、あげたくなくなっちゃう。 あたしは、あまのじゃくだ。
どろどろになる、あたし。 どろどろに溶ける。 このまま、奥深くまで沈んでしまえばいい。 何の悩みも不安もない、沼の底へ。 それでも。 あなたに縋る、この腕を、切り落としてよ。 浅ましく強請る、この穴を塞いでよ。 呼吸もいらない。 何もいらない。 最高の瞬間で殺してくれてもいいよ。 どうしたいんだろう。 あなたの指先は、あたしを捕らえて、いた。 確実に。 刹那だけれど。 それが永遠というやつになっちゃえばいいのに。
老けたな、って。 アレルギーのせいか、年のせいか、季節柄か、 肌がボロボロ。 伸ばした髪には、白いのが混じる。 まだ二十代なのに…。 あたしは。 きっと今まで、いろんなものを燃やして生きてた。 その反動、かな。 戻らない過去を、ときどき揺すり起こして、愛でる。 至らないあたしの愚かさを笑って、今のことを考える。 あたしは、何を捨てて、何を手に入れたんだろう。 柔らかな毛並みの動物を二匹。 明日も分からぬ日々を削って、いる。 冷たくなっていく。あたし。 子供みたい。 ふしだらな子供。
慣れていたはずなのに。 忘れている。 痛みに、内側を抉る指先に、恐怖を覚える。 欲しいと思ったはずなのに、身が竦む。 どうして。 どうして? 愛とはなんなのでしょうか。 欲望はどこへ向いているのでしょうか。 もう何年、ここにいるのか、数えることも出来ないぐらいに。 あたしは確かに、ここにいるのに。 あなたが欲しいのか。 ただ足りないだけなのか。分からないの。 何も言わずにキスして。優しくしてくれたらいいのに。 あなたの獣に、怯えてる。 許したのはあたしなのに。 怖がっているのも、あたしだ。 その欲に、情に、答えられるだけの強さはどこへいったんだろう。 離れれば、求めるのに、求められると、怖い。
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