暴かれた真光日本語版
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2004年06月30日(水) 100 hachiouji

最終更新日:2002.10.30 HOME


週刊新潮1995年4月27日号140-143頁
「八王子に四十五万坪を買った『○○真光』」 (原文のまま)




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 東京・新宿区信濃町と山梨県上九一色村の共通点は何か。どちらも宗教法人の土地買占めで、住民を大いに憤慨させた地域である。前者は創価学会、後者はいわずと知れたオウム真理教。浄財とやらが不動産に化けたほんの一例だ。そのオウム騒動の折も折、都下八王子市からこれまた新興宗教による山林買占め話が聞えてきた。買占めに走る地元不動産屋のバックに、”手かざし”で知られる「○○真光」の名が。

 買占めが進んでいるのは、八王子市北西部の上恩方、小津と呼ばれる山間の一帯である。市街化調整区域であることに加え、一部には市行造林といって市が林業振興以外には使わせないという規制をかけている部分もある。つまりシロウト目には、さほど魅力があるようには見えない土地柄だ。ただ、二十一世紀へ向けての圏央道(千葉、茨城、埼玉、東京、神奈川にまたがる総延長二百七十キロの環状高速道路)構想があって、その計画上の八王子北インターチェンジのすぐ西側に、この買占め地域はある。

 買占め話は、地元不動産業者の間では一年前から取沙汰されていたようだが、この問題が八王子市議会で取り上げられたのが、去る三月二十八日のことだった。質問に立ったのは、自然保護の立場から圏央道構想そのもに反対の立場をとる福富りえ子市会議員。目下、市議選に奔走中の福富氏がいう。

「今年の二月、ある地主さんから相談を受けたんです。どうも計画されている八王子北インターの西側の山林がかなり買い占められているようだということでしたので、私も調査してみました。そうしたら、ある業者が膨大な面積を買い占めていることが判明しました。山林ですから、実測による縄延びを考慮すると、買占め面積は約四十五万坪にもなるんです。それが大盛という地元の不動産業者なのですが、ある地主さんには国際会議場を造るからといってみたり、ある地主さんには林業体験場をつくるといってみたり、相手によっていろんな理由をつけて近づいているんです。しかも、売買の承諾をしたら翌日には億単位の現金を持ってくるというような感じだったそうです」

 そこで、それほどの羽振りをきかす業者についても調べてみると、ちょっと事情がちがっていた。

「大盛という会社の年商は五千万円程度でした。それなのに、買った土地には抵当権がまったく設定されていないこともわかりました。坪数から計算すると、総額で百三十億円もの資金が投下されたと考えられるんですが、こういう規模の会社がどうしてそんな巨額を投入できたのか、ますます疑問が深まっていったのです」

 福富議員は、業者が市の開発規制の網を知りながら、山林を買いまくったのは、その裏に何らかの政治力があるからではないか、とも問い質した。大盛社長の村上生氏と波多野重雄市長の関わり、また八王子市も含まれる東京十一区選出の伊藤公介代議士(自民党)との関係に言及したのである。
 
さらに大盛の資金源として、ある宗教団体が噂になっているとも指摘したが、

「結局は疑惑がますます深まったという感じですね」 と、福富氏。

「市長も市も、この買占めのことは私が質問するまでまったく知らなかったといっているんです。市行造林地が含まれているのにですよ。こちらは具体的に質問しているにも拘らず、肝心なところは答えないんです」

 市側の答弁は要するに、この土地売買に政治的な背景はなく、あくまで民間同士の経済活動として見守るしかないというものだったのである。

<キャッシュでポーンと>

 大盛なる不動産業者は、実にこまめに買占めに動いた。金額にして数百万円単位から一億円を超えるものまで。地主側を売る気にさせたのは、やはりこの業者の金払いの良さだった。

 地元の森林組合の理事長でもある原武さんの話。

「山を売ってくれという話は、七、八年くらい前からいろんな業者がいってきましてね。ゴルフ場をつくりたいからとか、植林をしたいからとか、いろんな理由をいってましたね。大盛は五、六年前から、営業の人や社長さんが来たりしましたよ。たしか国際会議場を造りたいとかいってました。他の業者はいざ契約という段になっても金が出なかったんですね。まあ、うちの方も、相続のことやら子供の分家やらで、とにかく金が必要だったんです」

 大盛側のいう国際会議場造りを、原さんが鵜呑みにしていたわけではない。

「半信半疑っていうか、まあ三割くらいかな。こっちにすれば、要はきちんとカネを払ってくれるのかどうかが問題なわけでね。まあここならば大丈夫だろうと思ったわけですよ。実際、契約の時にはある銀行で司法書士も立ち会って金をもらいましたしね。いくつかの金融機関の小切手でしたよ」

 菱山忠三郎さんは植物研究家にして自然保護活動家としても知られた人。この人も相続税対策から泣く泣く、山の一部を手放した。

「私の立場上、山を売ることにはそりゃ抵抗がありました。しかし相続税を払わなければここで生活することができなくなりますし、仕方がなかったんです。正直なところ、大盛に買ってもらって助かったというところですよ。近所の人から、別の人は他の業者と土地を売る話を進めていたけれど、直前になってダメになったという話や、大盛なら安心だよという話は聞いていたんです」

 売値は都合一億二、三千万円ほどになったようだ。

「私と付き合いのある青梅信用金庫で契約し、すぐに口座にはおカネが振り込まれました。大盛にはそれなりの会社がバックにいるものだと思っていました」

 もう一人、番場武さんはこういう。

「去年の四月だったか、大盛さんが挨拶にきて”お宅の土地を買いたいのだが”といわれました。ちょうど前の年の雪でうちの山の杉が全部駄目になっちゃった。三年前から買いたいという申し出はあったんだけど、そのとき、これはいい機会だ、と思って売りました。うちは一反ちょっと売っただけで、全部で六百万円ぐらいだったかな。他の不動産業者は、提示する金額がいくらか高めでも、いつ払うという点がはっきりわからない。それに比べて大盛の方は、司法書士のとこへ行って権利証を交換し、契約が決まればすぐキャッシュでポーンと払ってくれた」

 ただし、売ったほうにしても、自分たちの山林が将来どうなるのかは、誰もわかってはいない。

 番場さんが続ける。

「あそこは市街化調整区域でそう簡単に開発できない。私が売った山だって、すごい高い山なんだから。それにあそこらへんは一見杉林だけど、薄い土壌の下はすごく硬い岩盤だよ。何かつくるにしても、どうやってあそこにつくるつもりなのかね。大盛はあの土地を特に売るつもりはない、というようなことをいってたけどね」

<社長夫人が熱心な信者>

 そこで、大盛の資金源である。なにしろ大盛の村上生社長自身が、この買い占めにスポンサーがいることを隠そうとはしないのだ。

 ある不動産業者が語る。

「買い占められているのは、公簿(登記簿)上は四十数万平米ですが、実測の際の縄延びを考慮すると約四十五万坪ぐらいになるんですよ。これをあのあたりの坪単価の相場三万円前後で計算すると最大で百三十億円くらいの買収資金になるんです。金主はどうやら○○真光っていう新興宗教らしいんです」

 何でも、村上・大盛社長の弘子夫人が熱心な○○真光の信者で、それが縁になったという。村上社長は全日本不動産協会多摩南支部長のポストにもあって、交際範囲も広い。こんな声もある。

「村上社長は仕事のターゲットとして、いろいろな宗教団体と関わりを持とうとしていたようです。そのために奥さんを真如苑や立正佼成会の信者にさせたと以前いっていたくらいですが、いまは○○真光一本のようですよ。仕事のことで村上社長が"真光はいいぞ”というのを何度か聞いたことがありますよ」

”手かざし”で知られる○○真光は教え主と呼ばれる岡田恵珠教祖のもとに信者数は公称四十六万人。海外もいれると八十万人になるという。

 S界真光文明教団を創始した故・岡田光玉を救い主と崇めるが、教団組織としては文明教団から分派独立し、昭和五十三年に○○真光として宗教法人の認証を得ている。本部は岐阜県高山にあり、昭和五十九年には総工費三百五十億円ともいわれた世界総本山を完成させた。

 村上社長はどう応じるか。

「たしかにうちがあの山林を買ってますよ。現時点では大雑把にいって、(公簿で)四十五万から五十万平米弱というところだと思います。でも投下資金は、総額でも四十億円ぐらいです。あの山林周辺のことを調べ始めたのは平成元年くらいからですが、私としては市街地はもう高くて手が出せなかった。それといろんな業者が我先にと開発しておく中、緑豊かな八王子を何とかして守らなきゃならないという思いもありました」

 妙に生真面目である。

「資金については、たしかにうちだけで調達できる額ではありません。はっきりいって、スポンサーはおります。私の、この緑を守るという趣旨に賛同してくれる協力者がいるんです。ただそれがどこなのかについては、いえません。我我にも企業秘密というものがありますからね」

「真光かどうかを含めて、スポンサーについては一切申しあげられません」

 ○○真光を決して否定し切ってしまうわけではない。

 弘子夫人によれば――三十一歳の時に数カ所をガンに冒され余命いくばくのない状態だったが、友人である○○真光信者の紹介で入った病院で一命をとりとめることができた――それが真光入信のきっかけとなったという。

 再び村上社長。

「私自身は信者ではありませんが、まあ信じていないといえば嘘になりますか。だって家内がそういう(ガン)状況の時には、ほんとに神様に祈りましたからね」

 八王子という土地柄、くだんの山林買い占めが創価学会絡みではないかという見方もある。が、村上社長いわく、「学会ですか? そりゃ私も仕事につながるようなこともあるかと、いろんなところに顔を出したりはしてますよ。でも今回の件は関係ありませんよ」

 ○○真光に対する反応とは明らかに違うのだ。

<「オウムでなくてよかった」>

 冒頭の福富議員が議会で言及していた山林買い占めと政治家との関係については、不動産業界でも憶測が飛び交っている。

その最たるものは、大盛の村上社長と東京十一区選出の伊藤公介代議士の関わりで、村上社長が伊藤公介後援会のメンバーでもあることから、買占めの背後に伊藤氏からのシークレット情報があったのではないかというものだ。

 村上氏は言下に否定する。

「たしかに伊藤代議士の後援会にも入っていますし、選挙も手伝っていますよ。しかし、山林の件で何か伊藤さんに聞いたこともないし、あの山林は別に圏央道なんてなくても構わないんですから。伊藤さんとは非常に親しくはしましたけど、何か恩恵を受けたとかいうことはありません」

 伊藤代議士にとっては、不都合な話が重なるが、村上社長と浅からぬ関係にある○○真光とも、伊藤代議士は因縁がある。教団が発行する「真光」誌の一九九〇年七月号に、教祖と並ぶ河野洋平、伊藤公介両議員の姿があるのだ。

 当の伊藤代議士は怒り心頭である。

「私は大盛の土地取引については全く知りません。もう煙も何もない話です。国会議員をやってますので、紹介したりとか橋渡しをすることはありますよ。しかし、この件については全く相談を受けていませんよ。私は八王子市議の福富議員さんに、根も葉もない話で私の名前を出したことで、抗議の電話を入れたんですが、返事をくれないんですね。とんでもないですよ」

「(○○真光との関係は)私もこういう仕事をやってますから、いろんな宗教団体にお世話になっています。真光が幕張メッセで何かやった時に、誰かしかるべき人に講演をやってもらえないかということで、河野さんを紹介したんですよ。その縁で写真に写ったということです」

 さて、伊藤代議士が関わりを全面的に否定しても、なお本題の山林買占めと○○真光の関係である。

 ○○真光広報部からは、明確な返事が来ない。

「現段階として具体的なコメントを出せる内容がありませんでした」

 というファックスによる曖昧模糊とした回答のみ。

 敢えてはっきりした答えを避けたとお見受けしたが、ある消息通がこう語った。

「大盛をやめた元幹部から聞いたんですが、村上社長があれほど大量に山林を買収することになったのは、たまたま買えた数千坪から、十万坪(実測)くらい買い集めた時点で、真光の方に話をあげたことからだそうです。教団の資産としてどうかっていう感じでね。そうしたら教団から、もっとまとまったものを、という指示が出たっていうんです。それでばあーっと買い込んでいったと。教団では経理担当の女性がこの件を担当しているということでした」

 売った地主たちからは、”とりあえずオウムでなくてよかった”という声が、いや冗談ではなく、上っている。



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『現代』(講談社月刊誌)1995.7 129頁

 東京・八王子市の山林買収が話題になっている。「大盛」よいう不動産業者が平成三年から買い進めているもので、すでに四十億円が投入されている。しかし平成五年三月の決算における大盛の売上げは約六千万円とあって、ダミー説が有力だ。「岐阜の崇教真光という教団がバックにいるが、それもダミー。背後にはもっと大きな力が」と地元の不動産業者。どこやらの話と似ているようで。

『財界展望』1995.7 41頁

〔東京・八王子市の山林を買い占めた企業が不動産業界で話題〕

 オウムじゃなくてよかった――都下八王子市の市民の間では、そんな囁きが交わされている。というのも市の北西部の山林約四五万坪余りが、ひそかに何者かに買い占められていることが最近になって発覚したからで、その買い占めの本尊が、どうやら新興宗教団体なのではないかという指摘が出始めていたからだ。

 すでに一部週刊誌でもそのあたりについては報じているが、実は、今度はその騒ぎの余波が、全日本不動産協会という業界団体にまで波及し、いまや東京中の不動産業者が注目するに至っている。

 そもそもの発端となった八王子での買い占めについて簡単に触れておくと、買い占められているのは、現在国が計画している千葉、埼玉、東京、神奈川を環状線で結ぶ圏央道という高速の八王子南インターの予定地の西側の山林約四五万坪(実測分)余りが、大盛という会社によって買占められているというもの。買い占めは平成三年頃から始まっているようだが、相場から掛算すると、100億円余りの資金が投下されていることが考えられる。

 ところが、それらの土地には一切、抵当権がついておらず、しかも、大盛というのは資本金も5000万円程度の会社で、とてもそんな巨額の資金を自己調達できるとは思えないという疑問が出たのだが、どうも、この会社はダミーで、実際には「崇教真光」という新興宗教団体が資金元なのではないかという指摘が地元の不動産業者たちの間で上がり始めた――という経緯だった。ちなみに、大盛側は買い占めは認めるものの資金元についてはノーコメントだし、教団側も否定も肯定もしない。

 で、それがなぜ不動産協会にまで波及したのかについて、都内のさる不動産業者がこういう。

「実はその大盛の社長は、協会の多摩南支部の支部長をつとめていたんだが、この問題が発覚したことで、さる四月に開かれた支部総会で、再選を否決されてしまったんです。要するに、あの買い占めの件はマスコミにも取り上げられ、市議会でも問題にされるほど、何か疑惑があるような指摘が多い。だから、何らかの結論が出るまでは、とりあえず公職の立場からはおりるべきじゃないか。問題の決着がついてからまた立候補すればいいじゃないか、という意見が会員の多数を占めたんです」

 ところが、大盛側がこの決議をスンナリ受け入れなかったようなのだ。

「その総会の議事録や新役員の名簿とかを上部団体である東京都本部に上げようとしたところ、本部が受け取れないというんです。聞いてみると、大盛側が本部に対し、支部総会の議事運営に問題があるから決議は無効であるという異議申し立てをしてたんですよ」

 この業者によれば、なぜ大盛がそこまで支部長のポストにこだわるのか理解できない、あるいは、そのポストにどうしてもいなければならない理由でもあるのかなどという疑問の声が会員の間から上がっているという。この種の団体の幹部ポストの魅力といえば、政治・行政の側と近い関係になれるということしか考えられないともいうのだが・・・・。

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