2022年08月27日(土) |
環れぬ家 / 佐伯 一麦 |
十代で捨てた家だった。姉も兄も寄りつかない家だった。老父は心臓病を患い、認知症が進む。老母は介護に疲弊していた。作家は妻とともに親を支えることになった。総合病院への入院も介護施設への入所も拒む父、世間体と因襲に縛られる母。
この小説を連載中の2011年3月11日に、東日本大震災が起きる。
著者の妻の献身に頭が下がる。 義母からきついことを言われても、柚子は都合のいいように「翻訳する」という超絶技巧を発揮することもしばしばある。 こういう人が姑ならいいのだが柚子には子供がいない。
細かく区切られているのに、なかなか読み進められなかった。
2022年08月20日(土) |
海峡の南 / 伊藤 たかみ |
祖父の危篤の報を受け、〈僕〉は はとこの歩美とともに父の故郷・北海道へ渡る。若き日に関西に出奔した父は、金儲けを企てては失敗し、母にも愛想を尽かされ、もう何年も音信不通のままだ。親族に促され父を捜す〈僕〉は、記憶をたどるうち「北海道とナイチ(内地)」で父が見せた全く別の面を強く意識しだす。海峡を越えて何を得、何を失ったのか、居場所はあったのか。それは30を過ぎても足場の定まらない自身への問いかけへと重なってゆき……。
ー 文藝春秋 ー
海峡の南 → 北海道からみたら ナイチ だ。
洋 と歩美 の関係、いいなぁ。
2022年08月14日(日) |
悲願花 / 下村 敦史 |
一家心中の生き残りでも、私を愛せますか? 夜闇に輝くパレード、大好物ばかりのご馳走、笑顔の父と母。 家族で遊園地に行ったあの日、幸子は夢のような時間を過ごした。 そして―― 両親は家に火をつけて一家心中を図り、幸子だけが生き残った。
工場の事務員として働き始めた幸子は、桐生隆哉と出会い、惹かれ合うようになる。しかし、幸子は隆哉に「一家心中の生き残り」であることを告げられずにいた。隆哉の部屋で料理を作ろうとした幸子は、コンロの火を見てパニックを起こしてしまう。
過去に決別しようと両親の墓を訪れた幸子は、雪絵という女性に出会う。 「あたしが、子供たちを殺したんです」 子供たちを乗せた車で海に飛び込み、一家心中を図ったシングルマザーの雪絵は、生き残ってしまったのだという。
彼女は、墓地から蘇った母だった。
雪絵との運命的な出会いにより、幸子の人生が大きく動き出す。
ー 小学館 ー
最期のどんでん返しにびっくり!!
この物語の中での 彼岸花 の 花期は長いようだ。
それでもタイトルは彼岸花ではなく悲願花なのだ。
3年くらい前に自閉症スペクトラム と診断された娘との関係に苦しむ。
娘も辛いだろうが 私も苦しい。
何でこんな障害のある体に産んだ、と 攻められた。
でも私だって 娘の顔色を伺うような毎日がしんどい。
脳幹部梗塞で入院してる主人の症状よりも、 娘のご機嫌の方が気になるなんて。。。
内容説明 「Kのことを書く。Kとは、ぼくの死んだ配偶者で、本名を桂子といった。」詩への志を抱く仲間として出会い、結婚したKとの暮らしは苦労の連続ながら子供にも恵まれ落ち着くかに見えたが、「ぼく」が小説を書くようになると家庭から遠ざけられる。幼い娘と繭のなかのように暮らし、詩作や学問に傾注していった彼女の孤高の魂を、最期まで寄り添った同志として丁寧に描き出した純真無垢の私小説。逝きし妻への切なる鎮魂の書。
ー 講談社 ー
死んだ人は、遺族にとっては、しばらくは外出していてふと帰ってくるような気がする。Kもそんな気がしてならなかったが、もちろん、そんなことはない。 〜 ぼくはなんとか、Kを見とどけることが出来たことを、満足している。だがそれは、同時に解放でもあったかもしれない。
|