いい加減エエ年をしているわりに物知らずな私は ”林住期” を著者の造語だと思って読み始めたが、古代インドでは人生を4つの時期に区切るという。
90歳、100歳も珍しくなった今 「学生期」(がくしょうき) 0〜24歳 「家住期」(かじゅうき) 25〜49歳 「林住期」(りんじゅうき) 50〜74歳 「遊行期」(ゆぎょうき) 75〜90歳 というような区切り方をして、残りの人生をいかに生きるかという指南書。
著者がこれを書いたのは「林住期」の終わりころのようだが、私はまさに「林住期」真っ只中。
「家住期」までは家族や社会のために身を粉にして働いてきたのだから、林住期」からは自分のために生きようというものだ。
私も親を見送って、子供が家を出ていったらそれこそ自分の思うように生きてやろう・・・と思っていたがそれもこれも健康であってこその話。 誰にも気兼ねしないで自分の思うように生きられると思っていたのだが、私の場合、健康問題が大きく立ちはだかった。
より良く生きたら、より良く死ねるという約束事というか保障もないのだから これから迎える「遊行期」にいかに繋いでいくか。。。
取りあえずは腹式呼吸を心掛けてみよう。。。
若冲については、鶏の絵ばかりを描いたという知識しか持っていなかった。
ウィキペディアでは生涯、妻帯しなかったとあるが、この物語では絵に没頭して新妻を思いやらず自死に至らしめたという設定になっていた。 京・錦小路の青物問屋「枡源」の主人でありながら家督を弟に譲り、絵画に没頭する隠遁生活を送ったとある。 そして妻を死なせてしまったという自責の念からこの物語は始まるのだ。 若冲の異母妹であるお志乃も自分が、別な異母兄や義母に疎まれる存在であることから、若冲が没頭していく絵画の手助けをする。
若くて自死した姉のお三輪を不憫に思うあまり、若冲への恨みを剥き出しに若冲の贋作を描き続ける義弟、市川君圭との相克、等 読み応えのある物語だった。
絵に向かう若冲の様子や、お志乃の人となりもまるで動画をみるような感じでかなり迫るものがあった。
そのうち、映画にでもなりそうな感じは持ったけれど、それにしても作家というのはすごいなぁと改めて感心した。
2016年02月01日(月) |
わかれ 瀬戸内 寂聴 |
著者、90歳を過ぎての作品。 多くの人の死に接してきて、書かずにはいられないというお話の数々。 著者自身のことや、これはひと様のお話だろうな、という短編集。 重信房子との面会のことや、吉行淳之介や武田泰淳とのことなど、私らには知りえないエピソードもあったりで面白く読ませてもらった。
〇山姥 会社を潰して10年ぶりに訪ねた大学時代の友人が住む町で新聞配達を始めた。台風が来た日に山姥と言われている老女を助けた。
○約束 白内障になったら国内でも最高と言われる医師に手術してもらえるように、生前の吉行淳之介が約束してくれていた。 その後、加齢黄斑変性症になって再び、その医師に手術してもらうようになって吉行淳之介とのことを思い出して綴った物語。
○道具 義兄の1周忌法要が終わったあとの筆者の想い。 10年も前に用意されていた義兄の遺言には、神具商だった父の仕事道具があった。
○紹興 中国旅行の企画の話のなかで、武田泰淳の「秋風秋雨人を愁殺す」を思い出した。 清朝打倒を志し、刑死した女性革命闘士「秋瑾」と、日本で大逆罪に問われた菅野須賀子とを重ねたのだ。
○面会 国際テロリストとして獄中に捕えられている重信房子との面会の様子、と、 それに先立って弁護をしている女性との関係など。
○道づれ 京都発徳島行きのバスで臨席だったフリーライターとの短い話。
○百合 京都にある老舗の古美術店の長男に嫁いだが、子供を二人産んでから離婚を切り出した。 同性愛者であるからというのが理由だったが、夫は正体を明かさない妻の相手を訝しんだ。 だが、悪質な詐欺にあって古美術店の存亡の危機に夫が失踪したため、二人の子を連れて実家に戻った。
○圏外 初めて持った携帯で箱根からメールしたら圏外と出た。
○わかれ 九十を過ぎた女の画家と四十二歳下の報道カメラマンとの関係。 呑み友達なのか、若いボーフレンドなのか、財力を持つ女は年下の男と安心した関係を持てるということなのか。 恋愛ではない、あるいは逆に恋愛を越えた、かと言ってプラトニックラブでもない空気が流れている。 私も高齢者と言われる年齢に達して、若い男とは決して恋愛には至らないだろうから却って安心して男を好きにってもいいのかも…と思った。
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