僕はどうやら不必要な所で鋭いのかも知れない。
よぎる不安を確信に変えたくなくて、 痛みを押さえ付け、何も知らない振りで微笑む。 目を合わせられずに、上の空で微笑む。
君が、此処には居ないようで。 胸の中に埋もれても、 広い背中を抱きしめても、 何故か。
気を抜くと張り詰めた何かが音を立てて途切れそうで、 飲み込みつづけた感情が堰を切って溢れ出しそうで、 怖くて、 哀しくて。 君の傍に居れば居るほど、僕は空っぽになっていくよ。
いっそのこと目の前で裏切ってくれれば。 曖昧な言葉で遠ざけたりせずに、 この手を振り払って違う誰かの手を掴んでくれれば。 此処から消えてなくなれるのに。
一時の気紛れに僕を愛すくらいなら 君の望む平穏を探しに行っても良いんだよ?
気のせいであって欲しいけど。 僕の予感は悪い時だけ良く当たるから。 君があの子を抱いたのは、 一度なんかじゃないだろうから。 君が気紛れな愛の言葉で惑わせた僕の知らない誰かも、 一人や二人なんかじゃないだろうから。 君を想ってどうしようもない焦燥と渇望に苛まれた僕を放り投げたあの時も、 君は一人なんかじゃ無かっただろうから。
でも、僕が知りたいのは君の今。 今、僕が全てを知りたいと望んだら、 そうすることで全てを許して忘れ去り、 これからの君だけを信じて愛すと誓ったら、 君は受け入れてくれますか…?
君は罪人。
誰かを塞いだその唇で、 誰かを抱いたその腕で、 誰かを纏ったその香りで、
僕に微笑まないで。
但し罵る資格など君には無いのだから。 そんな権利など君は持ち得ないのだから。
僕を惑わすその温もりで、
甘い快楽の隙間で、
誰を抱いた? 誰を、捕えた。
今は君に従いながら迷いながら、 君を信じながら疑いながら、
君を愛す。
今は、唯。
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