ことばとこたまてばこ
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2008年06月24日(火) サバンナのおんなのこ

花の色、空気の色、水の色、手の色、
どれもがはっきりと思い出すことができなくてー・・・
ええ、そう、たしかにあたしは知っていたはずよ
でもおかしいわ
いくらあたしの底をすくってもなんにも思い出せないの


すっかり困り果てたおんなのこ
まっしろでおおきなおめめを細めて
ため息つきながら祖父のしゃれこうべに腰をかけた


おめめを固く閉じて
甘く、濃厚な、やるせない溜め息を
ぽわりと何度も吐き出していたそのとき



巨躯なる象の群れが目の前を駆け抜けた




すさまじい地響き、土埃り、鳴き声、





一切合切の音がとろけあって天も貫かんとばかりにざんざめく










花の色、空気の色、水の色、手の色、

ああ、そうだわ

何も思い出せなくて当たり前だわ


わたしはおじいちゃんのしゃれこうべに座って
ただ ただ 泣き暮れていただけだったわ!



おんなのこ、
そのことに気づけたことがあまりにも嬉しくてはしゃぐ




おしゃまなおんなのこのやわらかな首筋を狙って
♀のライオンの群れが草葉の陰で、身構えてる


腹を空かせたライオンたち、
美味しそうな恰好のエサを見つけたことがとても嬉しくて喉を鳴らす



2008年06月18日(水) 音無し子の音ってもしかして愛そのもの?まさかー


今日は昨日よりいくらか聞こえなかったの。

とあなたになんのきなしに述べてみたところ、やおらにあなたに。

あなたに。

あなたです、あなたに。

あなたに突き刺さる痛みを覚えるほど野蛮に強引に浄土を挿入させられた。

わたしは痛苦に顔をぐちゃぐちゃにゆがめて頭髪振り乱して天上の絶頂を味わいました。
痛かったんですよ、最初のうちは。時間かかったんですよ、慣れるまで。ごろごろする違和感がずっと残ってたんですよ。

でもだからか今、目の前にひろがるあの海の波の飛沫がまるで
極上の生クリームのようにとろりととろけて見えるようになったのです。


だから明日からはちょっと聞こえることでしょう。




くちゅくちゅくちゅくちゅ カンカンカン にゅるにゅるん


グバンッ! 




2008年06月17日(火) 写るは泣きべそのおめえ

何千、何万枚と写真に撮っても

なんでかな

写真に在るどのおめえも泣きべそのツラをしている


どうしてかな


いまここに まさしく目の前で
食事をしているおめえがいる

気づいているのかな
食べ物を喰らおうとする瞬間の
おめえの眼ときたらまったくうつろなんだ

まるでー・・・
無味無臭の何の歯ごたえもしない白色の塊を
嫌々としかしながら栄養があるからって堪えて懸命に食べているような
そんな眼なんだよ

おれはそれが妙におもしろくて、だからつい気軽に撮っていた
そんな日常の切れ端が何千枚と溜まってて
こないだ見返してみたんだけど
うん
やっぱりそうだよ

どのおめえもなんだかどこかが決定的にぽろりと欠けていて今にも泣き出しそうだ

でもその欠けたものがなにかというと
今時のみんなならきっと共有しているようなものだと思うんだけど
なんかうまく、こう、言葉にできない

ぼけー、きさまなんぞに簡単にわかってたまるかー、とおめえは言うかもしらんね

それでいいと思う、そうこなくちゃ!と思う 



おれはおめえを撮る
おめえはそこにいる



願わくば
おめえがそこにいることを嫌にならぬようにと
おめえを撮ることに価値を見いだせなくなるほど
おれの感受性がなまくらにならぬようにと

まあ、本気で願うことといったらそんなものだけ

適当に願うならあれだ、えーと、まずは一攫千金ですなあー
あとこの椅子の足ぐらぐらしてるんだがいい加減に買い替えたい
しかしそれにしてももっとおれに仕事がこないものか
これ黙ってたんだけどおめえの足が臭いことを改善してほしい



ほろ酔いのおれ、刀に見立てたバナナをやおらにつかんで
おめえに向かって凛々しく構えたりしたら失笑されたぜ




ははは、ヒビ割れているこの世界をどう歩こうかね、
じつにしんどくてたいへんだねでもおもしろいねえ、


どうだい、



おめえさんはよ






2008年06月11日(水) カゴの中の鳥の内臓


夢の中の空に浮かぶ白い雲の中へと飛び込んでいくかのようなおぼろげの飛行機


あれはうそだかまことだかなんだかな 赤みを帯びたまなざしのままで・・・


息をする  過呼吸 ウッ 新鮮な卵が割れた


まるでドンパチのやんちゃごっこだ



そうなんだよ まるでなにもかも誰もが思うようなつまらない緑色をしていて




ああ、だめだと思えど ああ、だめだと思えど ああ、だめだと だめなんだと



カゴの中の鳥の内臓の中には緑色の糞が ぎっしりと つまぁーって      







た!




2008年06月07日(土) 写真を想っては燃えゆく筆談ノート

一冊の筆談ノートを燃やした。
おそらくは4ヶ月分の会話が詰まっていたノート。


言葉が燃えて灰に。
言葉が形となってそして消えゆく。
言葉の霧散を目の当たりにする。

言葉の立ちのぼる先はあの天空で、
言葉をちりぢりにさしめるのはかの風で、
言葉を無へ還元するのはこの空気で。



ああ、なるほど、だからか、そうか、と急に目の覚める思い。



この世界にはまるで言葉がぎっしりと、密と、とほうもなく凝縮している
と思っているおれはだからこの世界という言葉を撮りたいと欲してやまないのだ。


己が内にある言葉を具現化したいという欲求が、どうしてもあるらしい。


己が身を愛いやつめ、と愛撫するかのように甘く言うならば
音無し子故に言葉の欠落に人一倍敏感となったため、
言葉に対して並々ならぬ確執が生まれた。
そのみっともない執着がそれでも揺るぎのない世界がぶつかることで
えも言われぬ情景を写真のうえに捉えることになりはしないか、と。


己が身をどあほどあほ、くそたわけ、と唾棄するように冷徹に言うならば、
世界を世界として受けとめることを放棄して、
世界によって沸き上がる己の言葉だけを都合の良いように
駆使して調整して適当になまぬるく信じようとしていたのだ。


そんなことにきづいた朝方。




おれは世界を世界として受けとめるほうが、やっぱり、いい。

己の言葉なんかで世界をどうにかできる、と思えるほど世界が脆弱だとは思えていないからね。



だから言葉を捨てねばあかぬ、と思った。

それもあえて形にして判りやすく。



うん、そう。だから燃やしたのだった。筆談ノートを、4ヶ月分の言葉をさしあたって、ね。




2008年06月05日(木) あの声で







おめえのそのひきつれてざらついた

極端なまでに明暗のコントラストの強い

深淵たる緑を帯びた、たくましくやわらかい声で

ぶつ切りの単語で、時間をかけて、強く、

おれの名を呼んで欲しい、と思った。






2008年06月04日(水) 仮想現実か、現実仮想か?


律を乱す行為を行なった、
よく言われる様な若いあやつらの罪なる行為の心理的な原因は

「現実と仮想の区別がつかなくなった」のではなく

「仮想を現実にとりこみたかった」のだろう、と思う。


よほど現実が現実過ぎてあまりにも耐えられなかったのだろう、と思う。


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