ことばとこたまてばこ
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2004年12月31日(金) 夢もチボーも砕かれたこのひとこと。

「また泣きたくなってもいつでも呼ばないでね」
「君の明日は君がすべて変えられないんだよ、やっぱし」
「決まった道、正しい道なんてあるんだから、自分らしい道を好きなように選べよ。結局同じ」
「あんたは生まれてきただけで親不幸なんよ」
「もう、笑えるんだね?」
「悩みながら前に進むな」
「できることはたくさんあるけど、できないことはもっとたくさんある」
「人は感動するために生きていない」
「おれがしてあげられることなにもない!」
「泣くんじゃねえよ」
「誰かのように生きなさい!」
「つらくなったら空をみるなよ。空は全国に繋がってるから余計つらくなる」


2004年12月30日(木)

数千年前、その岩は戦の血飛沫を浴びた。
くすんだ色合いで立っている。

数千年前、その岩はあがめ奉られた。
くすんだ色合いで立っている。

数千年前、その岩は木々に隠されていた。
くすんだ色合いで立っている。

数千年前、その岩は苔むしていた。
くすんだ色合いで立っている。

数千年前、その岩は人間に腰かけられた。
くすんだ色合いで立っている。


数千年前からその岩は全て感じている。
くすんだ色合いで立ち続けている。


2004年12月29日(水) 蝶の羽

蝶々がわたしを捕らえて月光さんざめく夜空へと飛翔。

遙か下に見える街の光。
遙か遠くに見える海の暗黒。
遙か近くで風がなぐ。

蝶々の手足はしかと力強くわたしを抱く。
まるでわたしに蝶の羽が生えたよう。

どこまでも行けそう。
どこまでも行けそう。
どこまでも行けそう。

羽の色は触れば幻のように霧散しそうな程の淡い桜色。
うっとりと、わたしは、眼を閉じて。


2004年12月27日(月) きゃ

下まつげの長い眼に萎縮されちゃってにぇにぇ。


2004年12月26日(日) ある日、君は

ある日、君は陽光を浴びながらあそこの公園のベンチに座っていた。
ある日、君は緑陰の中で微笑みながら立っていた。
ある日、君は胸を張りながら堂々と勇ましく地を駆けていた。
ある日、君は車の中で光の線が流れる夜景を知った。
ある日、君はたくさんの友人と輪を囲みながら互いの息を感じた。
ある日、君は鼻に指を突っ込んだ。
ある日、君は美しいものを見て理屈も何もなく美しいと思った。
ある日、君は眩い太陽を背にして身体の輪郭が輝くその姿は神様のようだった。
ある日、君は死後の世界の無限に怯えた。
ある日、君は月を見上げ続けていて口がゆるんだ。
ある日、君は打ち寄せては光って止まぬ波をただ一途に見ていた。
ある日、君は大人への矛盾に困惑した。
ある日、君は綺麗なオレンジ色のようであり、陰鬱な漆黒色でもあった。
ある日、君はどうしようもなく胸が塞がって息苦しくて悲しくて泣いた。
ある日、君は触って分かる生き物のぬくさに気づいた。
ある日、君は全身全霊を放ち心身と共に虚脱した。
ある日、君は文字の意味する事柄全てを理解していなかった。


2004年12月25日(土) 風がふいて

駄犬、糞座りをして肛門震わせながら脱糞。
眉毛を下げてああなんたる気持ちよさよ。
風がふいて駄犬の姿を覆い隠す草木が揺れる。

飼い主、ビニール袋を手に薄ぼんやりと駄犬の尻を見物。
眉毛を上げてなんたる白くて巨大な糞なことよと驚愕。
風がふいて飼い主の姿すらも覆い隠す草木が揺れる。

数万本の草木、駄犬と飼い主の姿を覆い隠すのにも疲れてちと消滅しよか、と想定。
すると草木も駄犬も飼い主も忽然と消えた。
ぽっかりと小さな、地肌の覗いた丸い円だけが残る。
風がふいて草木の居た場所、駄犬の歩いた場所、飼い主の生きた場所、全てを揺らす。


2004年12月24日(金) 影の伊賀丸

愛してる、と君がささやく相手は、それは僕の影だよ。
はは、ばっかだなあ。
俺はこっちだっつんのに。
はは、ばっかだなあ。

俺はこっちだってのにさ。
はは、まったくばっかだなあ。


おい おい おいおいおいおい!
おい おい おいおいおいおい!
おい おい おいおいおいおい?

って俺が影やんか!
って俺が影やんか!

君は俺じゃない俺に、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる。

おい おい おいおいおいおい!


2004年12月23日(木) ON念

廃墟にて潜む御地蔵尊がつぶやいた。
死ねばよかったのにサー。

心理的にどうしようもなく追い込められた老人がつぶやいた。
ぬいぐるみを被って極端に速度の遅いギロチンに喉元押し潰されればよかったのにサー。

寂れた病室の一角にてへばりつく蜘蛛がつぶやいた。
窓際で首を括ればよかったのにサー。

幼子の時期に感じた恐怖を未だ払拭しきれぬOLがつぶやいた。
鳥居に人の頭髪を飾れば一層綺麗でよかったのにサー。

都市の中心で恐怖を叫ぶ鬼女がつぶやいた。
人気の無い原っぱで無数の眼に直視されればよかったのにサー。

島のわらべ唄に狂気を感じるイメクラ嬢。
カラスは更なる繁殖を重ねて人類を凌駕すればよかったのにサー。

触れてはならぬ口にしてはならぬ掟を触れて口にした母がつぶやく。
人間裏返しになればよかったのにサー。


サーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサーサー
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2004年12月22日(水) 手の味

指先を口に含むと静かに
僕の抱いてきたもの全ての味が沁み渡った。

触れたもの。
感じたもの。
奏でたもの。
表したもの。

そのものの味が闊達に口内で充満。
存外しょっぱく、まるで海。


2004年12月21日(火) ごうまんなおとこのこ

背中を丸めてとぼとぼ悲しそうに歩くあなたはいったいどうしてそんなにうちひしがれているの、
か弱い肩振るわせて泣いてるよ、くわあ、可愛そうだなあ、だいじょうぶ、わたしが…
って頭なでなでしたろか、あまつさえ包容したろかとあなたに近づけば、あらまあ。
丸めた背中と思ったのは背骨が折れそうに鼻息荒く高笑いしてふんぞり返ってるあなただったの。

傲慢でした?わたしってもしかして今までずっと。

くわ、あの野郎肩で風きりまくって、スキンヘッドで眼付き最悪で暴力的で粗野で
ぱんぱんにふくらみきった二の腕露わに公道闊歩してるよ、関わり合いになるまいぞ…
って避けてたら、あらまあ。スキンヘッドは神経脱毛症、最悪の眼付きは弱視。
暴力的、粗野はPTSDからきていて、ふくらんだ二の腕は自分を守るためのものだったと知った。

傲慢だよね?わたしってもしかして今までずっと。


わたしゴーマンなオトコの子。
あきゃーん、って泣きわめく。

あんた!
赤いパンツ透けてるよ!
何かの祝い事かい!?


2004年12月20日(月) 空の薬

空の薬を服用したある日の気分はまったく爽やかであり、はればれ、雄大雲。

空の薬を服用したある日の気分はまったく陰鬱であり、もんもん、雨雲。

空の薬を服用したある日の気分はまったく平坦であり、しぃーん、行雲。

空の薬を服用したある日の気分はまったく荒んでおり、ぐるぐる、雷雨。

空の薬を服用したある日の気分はまったく枯れ果てており、しゃらん、黄昏。

空の薬を服用したある日の気分はまったく不透明であり、ちゅる、霞。

空の薬を服用したある日の気分はまったく乱れきっており、びりびり、ちぎれ雲。


空の薬を服用したある日、それがしは空そのものであったよ。
空の薬を服用したある日、空はそれがしそのものであったよ。


2004年12月19日(日) 転生

裸に目隠しをされて横たわる女性の臍の窪みに指を突っ込む。
そして左右にぐいと開いてお茶の葉をパラパラ入れた。

女性が切なそうに眉をひそめて身をよじった。
ゆるやかな曲線を保っている腰は動く。
押し開いた臍の穴を覗きこむと、暗黒の世界のなか一本の薔薇が置いてあった。
お茶の葉の緑が薔薇の真っ赤な花びらをぽつぽつ染めていた。

臍の穴をさらに押し広げて薔薇に手が届くように腕を挿入する。
肩一杯まで入れても薔薇にはまだまだ届かない。次は全身を臍にうずめた。

臍の内部にて拾うた薔薇はとうに枯れてた。
臍の出口は遙かな頭上にてゆるやかに閉じてゆく。
差し込めたる光はどんどん細くなり最後はもはや糸のよう。

薔薇の棘を握りしめて手首を赤く染める血を舐める。
その味はしょっぱく「これだけは変わりない」と。
頬に血をあてると暖かく「これも変わりない」と。

刻が経過する。
暖かだった血をもう一度頬にあてると冷たく「これも変わりない」と。
しょっぱかった血を舐めようとすると全てを出し尽くしていて「これも変わりない」と。

体温が低下する。 「これも変わりない」と。
意識が薄れる。 「これも変わりない」と。
寒気がする。 「これも変わりない」と。
訪れる闇。 「これも変わりない」と。
全脱力。 「これも変わりない」と。
永劫。 「これも変わりない」と。


そして新しき幼子が臍の内部を巣くった。


2004年12月18日(土) エロチック舌

目尻を涙が伝い、君はそれを舐めた。
紅い舌はいやらしくってオゥ、モーレツ…

たとえ絶妙な巧技を有する舌が8本あろうと
それを司る脳髄はたったひとつしかないのだよ、ということを
なぜどうしてみんなわからないん。

君は言いましたね。
青い空に雲が行き交えば益々魅力的な様。


君は空にいるんだ。
君は空にいるんだ。
だからそんなことが言えるんだ。


僕は地べたにいるんだ。
僕は地べたにいるんだ。
だからそんなことも言えないんだ


2004年12月17日(金) 町田康りすぺくと

熱い茶が注がれた湯飲みを両手で包むように持ち、はふはふ眼を細めて実に美味しそうに飲むカエルどんが、すわ殺気!ギッと眼光鋭く腰に下げた刀柄に手をかけて背後に近づく者を横に薙いだ、かと思えば誰もそこにはおらず、あれれ、おっかしいよう、と常人ならそう思うけれどもカエルどんは上下左右を舐めるように油断の無き視線を振りまく!が、やはりそこに誰もおらず、結局カエルどん、あれれ、おっかしいよう、と刀を鞘に収めてヌルヌルと濡れる頭を掻いて。

事の真相とは狸どんが三里半離れた場所にて、くわあっと殺気を放ったのであったが、その理由というのが実に複雑怪奇であり夢幻の如くにわかには信じがたいものであった。

なんと狸どんが食物と酒の過剰摂取により目も覆わんばかりにぶくぶく太り果てて、本日の夕刻に至っては妻の狐はんの好物油あげを酒のつまみにたいらげるという極悪非道外道まっしぐらな事をしでかしたのであり、元来ヒステリー持ちでとうとう発狂した狐はんが泡を吹きながら大きく足を振り上げ狸どんの巨大な金玉をあらん限りの力でもって蹴るという暴挙に出たのであり、狸どん、あいたったのこんちくしょうどころではなく、くわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ、のたうち回って再度、くわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ、痛みも薄れた頃、狐はんは何事もなかったかのような様でシュンシュン煮えたるみそ汁をかき混ぜていたのを霞のかかる目で見た狸どん、くわあっと殺気放ったわけであり、それが遠方のカエルどんにも伝わったという事の顛末であった。

であったよ。


2004年12月16日(木) 女神の吐息

青空に我が吐息を吹きつける。
息は空のごとく青く染まって乱舞。
一抹の矮小な人間の発する吐息を感じた女神、
如何ほどの情をも感じ取れぬ眼でもって肺を膨らませて息を吹きかえす。

その息、突風となりえて地上のありとあらゆる物を吹き飛ばした。
おれ空中を転回しながら般若心経を唱えて。

女神はやわく微笑みながらも尚、森羅万象を吹き飛ばす。


2004年12月15日(水) すべて呑む

負の情感すらをも食らい尽くす猛獣が、森の中でおれを見据えた。
生唾を飲むどころが毛先一本の僅かな動きも辞さぬ暴力的なその眼力。

猛獣の口端には腐れ果てた情がぶら下がっている。
目は禍々しいオレンジに輝き、3本の尻尾がミミズのように細かくゆっくりと動いている。
その全身は真実の紅に染まって。

次の瞬間、猛獣が動いた。つるつると滑らかな動きで厳の頂上に降り立ち、大きく強く輝く月光を背に携える。月があまりにも眩しく猛獣は黒い輪郭となって。

足は震え、目はかすみ、血の気は吹き飛び、意識はもーろー。
そんな時、一匹の子鹿が現れた。
猛獣ギロリ睨みつけるが子鹿は草をはむのに夢中。
猛獣ギロギロリ再度激しく睨みつけるが子鹿は草をはむのに夢中。
猛獣ギンギロリ常人ならば発狂起こしそうな眼で睨みつけるが子鹿は草をはむのに夢中。

よろよろと草をはみながら子鹿はおれのところにやってきて。
ほれほれ、あぁたジャマよ、おどきなっせ、それ、おどきなっせ、あ、それ、おどきなっせ、
とでも言わんばかりにグイグイおれを押しやって、押しやってはたと気づくと森の外。

猛獣、森の奥深き場所にてオレンジの眼を燃えたたせて唸る。
子鹿、森の外にてへらへら悠々草はんで、はんで、その繰り返し。
おれ、森の奥でも外でもない場所にひとり取り残された感。


2004年12月14日(火) 墨を血に換えて

下着一枚もつけぬ、あられもない姿で君は幼子を掻き抱き、
その子の頭髪に墨を含ませ地面に絵を描く。
出来上がる絵は至極下手であり、芸術には到底及びもつかなかった。


けれど描いている君は美しかったね。
あんまりにも、全身全霊をかけていっしょけんめで、
ほんと美しかった。何かもはや崇高な。

社会には認められずとも
人には認められずとも
君の美しかった姿を知っている私がいると。

紛いもなく
疑いようもなく
君は美しかった。

紛いもなく
疑いようもなく
君は美しかったんだ。


そして私は現在、君以上に打ちのめされているのだよと
言ったら君は信じるかな?


あまりにも美しい君がまぶたに
こびりつき、焼きつき、焦げつき、
手のほどこす余地はありえなく。


我は一体何をしてんど?と。
我は一体何を怠けているの?と。
我は一体何を知っているの?と。
我は一体何をしたいの?と。
我は一体何を知っていたの?と。


社会にも人にも誰にも認められぬ君は
現在地球上に今確かに生きている野郎にそう思わせたのだよ。

墨を含ませた髪から血のように流れる墨を顔面中にたたえたる幼子がそう言いました。


2004年12月13日(月)

瞳の中にて馬が踊る。

蹄が割れようと
血が流れようと
冷たい雨が降ろうと
馬は踊っている。

口角泡を立てつつ、目血走しりつつ、
馬が空を幾度となく仰ぎ続ける、その様、まるで狂気。

たてがみは身体にぴたりと濡れほそぼり張りつき、それでも踊る。
土には蹄の跡の窪みがびっしりと。

馬は抑えようともついはみ出るなにかを現して踊る。
威勢の良く、そして悲しい、蹄の響く音。

後足にて天高く身体を持ち上げ、馬、吼えた。


2004年12月12日(日) イェイ イェイ オゥオゥ ベイビィ

楽しい音楽を堪能して、まことに楽しそうな群衆。
その方々の表情に明らかな狂気を発見した私も、笑ってる?

そうね、笑ってる。
楽しくて笑ってる。
切なくて笑ってる。

イェイ イェイ オゥオゥ ベイビィ
イェイ イェイ オゥオゥ ベイビィ

群衆の笑いの津波が、ほら、そこに。
わたし、堪えようとも堪えきれずに。

イェイ イェイ オゥオゥ ベイビィ
イェイ イェイ オゥオゥ ベイビィ

リズミカルに拳突き上げる。
はわあ、なんてこった、楽しいよう。
ライトに照らされて白銀に輝く汗。
ほわあ、なんてこった、楽しいような。

イェイ イェイ オゥオゥ ベイビィ
イェイ イェイ オゥオゥ ベイビィ

はて。


2004年12月11日(土) 夜空へと歩行

坊主にしたそれは実に不安定であり、大丈夫。
カラスは彼をついばみ、眼鏡はこぼれ落ち、母と語らい合って赤い顔。
我が駄犬は枕をていねいに敷き、これぞ我が物と言わんばかりに主の寝床路を奪ってほくそ笑んだ。

くわわわ。

酒がおれを愉快にさせて。


2004年12月10日(金) これまたどちらも世間知らずの馬鹿と言えよう

一生を懸けたとしても治らぬ障害をかかえた彼はそれでも素直に明るく生きている

んじゃなく、

素直に明るく笑顔振りまいて生きるしか術を知らなかったの。


2004年12月09日(木) 彩った赤い口ゆがんだ

誰よりも愛おしい君の血で、わたしの口を紅く染めた。

んーぱ。

禍々しき赤と思うてみたらば、そんなことはなく実に冴え冴えと映える艶やかな朱色。愛おしい君の血はやっぱり綺麗だね。

わたしの唇と一体化したかのようなこの色!ふふ。


2004年12月08日(水) 火の哄笑

赤色が私と幼子に熱湯を浴びせかけた。

皮膚はただれ、烈火に晒され続けた鉄球が全身をごろごろ転がり続けて。
ほんと、熱くって。
幼子、顔が赤く染まってる。

鉄球の転がった痕は火傷の黒き線が引かれ一目瞭然。

今や赤色はまるで火の様。
せせら笑ってチラチラ、姿形をまんべんなく変えるたびにわたしを嘲る。

くわはは、あの馬鹿、見ろよ、まったく面白いったら!そんな声、聞こえた。


誰もが我と同一と思っているん?

火、ますます燃えさかって大爆笑。
くわははははは、あの馬鹿、見ろよ、まったく面白いったら!紛いもなく、聞こえた。


いつまでも嗤い嘲る火を知らぬ幼子に、わたしは火という存在を学ばせる。
火は笑い続けて、幼子とわたしはエメラルドのように美しくて暗い森の中でひしと抱き合った。


2004年12月07日(火) 鼓動

太鼓の鼓動。

その響きは遙かな太古から伝わる音だと、知った。

その音はおれも知っている、楽器の奏でる唯一の音でもあった。

太鼓の鼓動は太古へと駆ける音と信じ、おれは全身を鋭敏に澄ませてみて。

爪先から太鼓の響きが潜り込む。指が強烈に震えた。

両腕が大気中を伝播する太鼓の振動を感じ、奮えた。

顔面余す所なく音の渦に溺れ、全身は鳥肌にまみれて。




いわば原始的な音でもって、おれは遙かな過去の人間の心臓の鼓動を知り、太古の音をも感じ、魂は奮えるばかり。


2004年12月06日(月) 死にたがり屋さん

彼は事故りそうになった体験談、死ぬかと思った瞬間、怪我した時、など身の危険談を好んで話すのです。日頃の彼は寡黙であり、こちらからの問い掛けには微笑んで応えますが、自分の意見を言うことに自信を持ちきれず、相手に符合する答えしか述べないように私は見える。

そんな彼が自分から唯一楽しそうに話す話題は、自分が危ない目にあったということ。
そうね、いくらなんでもこんな話だけを楽しそうに語るわけじゃない。他にも彼自身から楽しそうに話す話題はあったかもしんないね。映画とか、マンガとか、ゲームとか、遊園地とか、想い出話とか。

でもね、危ない目を見た、と話をする彼の様子ってほんと輝いてて。だからその話だけを楽しそうに話す彼、というのが印象強いの。あわわ、表情が至極生き生きしているよ、と思ってしまう程の。

なにをそんなに死にたがっているの?と、こんなこと思いたくもないのに思ってしまう。

って、考えたら最近そんな人たちばかりじゃない。
どしてこうも死にたがり屋さんが多いのか。
ただしわたしも死んでみてぇなあと思わなかった日はあり得ない、とは言えませんよ。
よく判るのです。ほんと。

だからね、いやね、ほんとに、ってわたし心さめざめ。


2004年12月05日(日) 劣るどかどうでもいい

言葉は駄犬の愛情にすらも劣る、と思うた瞬間から、いともたやすく必衰の道を。


2004年12月04日(土) 議論の余地はあるのか、ないのか

もしも君に旧友の友と呼べる存在あれば、それはかけがえもなく
夜空に映える星屑のようになくてならないものである。




おめぇにとっての星屑ひとつひとつが、誰かの星屑となっている。

おめぇにとっての星屑ひとつひとつが、誰かの生命の糧となっている。

おめぇにとっての星屑ひとつひとつが、誰かの愛を育んでいる。


さて、おめぇは星屑にすら成りえているの?


2004年12月03日(金) 昔話

昔話というのはけして過去を懐かしむばかりではなく、過去の昇華の場でもある。

昇華し得た昔話は、また一層新たな輝きを持ち、姿も見ず彼にゆだねて。


2004年12月02日(木) なのかしら

ストーカーって言葉が浸透しすぎて。

お前に会いたいと思うことすらそんなに罪悪なのかな。


2004年12月01日(水) 上下に手が

暗闇に白く浮かび上がる手は上下している。

上に右手があがると、下に左手がさがった。

手は無音の言葉を奏でる。

暗闇にぽっかりと浮かび上がる手はいとも切なげに弱々しく動き続けている。

暗闇よりも濃く黒い木々が風に吹かれてざわめきたてる。

手は無音の言葉を、誰ともなく、意味もなく、発し続けて。

自然の騒音が吹き荒れているのか、静謐が満ちているのか。

手は判別を好まず、ゆるやかに、静かに、上下に繰り返し何度も揺るわせて。


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