胡桃の感想記
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2005年01月22日(土) |
「ロミオとジュリエット」シアター・ドラマシティ |
藤原竜也 鈴木杏 ほか(←省略しすぎ)
「ハムレット」(04年)に続き、蜷川幸雄さんの舞台である。「ロミオとジュリエット」って有名すぎて、実は内容はしっかり知らないのに気づいた私(今頃?!)。
前半、バルコニーの「あなたはどうしてロミオなの?」の藤原ロミオと鈴木ジュリエットのバカップルぶりが楽しい(誉めています)。特に、藤原ロミオの足をジタバタしたり、メロメロになったりする喜びようといったら・・・新鮮だった。
そして、ジュリエットの婚約者パリス伯爵に月川勇気さん!声が高くて線が細いのですぐ分かった。いつも(「ハムレット」「新・近松心中物語」)女性役だったのに、今回は髭まで生えていて、剣で闘うシーンもあって(すぐ負けちゃったけど)男らしい〜。 ちなみにこのパリス伯爵は“花に例えられる程、魅力的な人物(パンフレットより)”なので、これは月川さんしか無理かも・・・。・・・伯爵なのに、男なのに、花って・・・。
シェイクスピアのセリフは形容詞が多く難解で長い。すべてを聞き逃さずにいるのは大変だが、リズム感よく韻を踏んでいるようだったので、言葉を楽しく聞こうと心がけた。でも中には、どうも聞きづらい役者さんや、独白で興奮するとセリフが早口になって聞き取りにくくなってしまったので、その時はもう雰囲気で楽しんでいた。
従兄弟のティボルトを殺してしまい、僧ロレンスの元で嘆き悲しむ藤原ロミオ。最初は「ハムレット」のシーン再びかと思ったが、ロミオの場合は人に頼って甘えて泣きじゃくっていた・・・(苦笑)。確かに、一緒じゃ意味ないよな・・・。
時代背景なので仕方がないのだが、つくづく“女”をバカにしたセリフが出てくる。ただ後半は、急速に成長した鈴木ジュリエットの凛とした強さのおかげで、「ハムレット」の時ほどの反感は無かった。伯爵との結婚を断って家を飛び出すとき、客席の通路をかけて行くのだけど、近くでみた鈴木ジュリエットの目はキラキラ輝いていて、決意の強さと未来への希望に満ち溢れているようみえた。
ラストシーン、毒薬で死んだロミオと、短剣で死んだジュリエット・・・力強さを感じるのはジュリエットだ。
舞台は3階建てで、壁には様々な国の人たちの顔写真がたくさん。雑誌の稽古場レポートでその様子は知っていたものの、あらためて生で観ると、その迫力に驚いた。どうやら、若くして亡くなった人たちの写真らしいけど・・・何だかこちらに迫ってくるようで、不思議な舞台空間だった。
ここからはちょっと余談。 ロミオの友人マキューシオ、何か名前を聞いた事があるなぁと思ったら、Studio Life「ドリアン・グレイの肖像」(04年)の劇中劇で登場していた。フレッシュ(新人)がダブルで演じていたのだが、もの凄い大根役者としてセリフを言っていたのだ。何だか妖術づかいみたいだったのだが、今回のマキューシオとあまり差異を感じなかったような気がする(笑)。←大根役者という意味ではなく、妖術使っていた所がね。
2005年01月17日(月) |
◇映画「ターミナル」 |
祖国がクーデターで事実上消滅、パスポートは無効になり無国籍人間となったビクター(トム・ハンクス)。 入国は不可、帰国もできなくなったビクターはJFK国際空港の乗り継ぎロビーで暮らす事となる。
最初、ロビーに佇むビクターは英語もあまり話せないし、祖国も自分の状況もあまり理解できていない。祖国の通貨が使えないからと国境警備局のディクソン(スタンリー・トゥッチ)から渡された食券も落としてしまったり、女の子のトランクを親切で閉めてあげようとして壊してしまったり、要領の悪さが出ているのだが、ビクターはめげない。 そんな一生懸命なビクターに、ターミナルで働くフード・サービス係エンリケ(ディエゴ・ルナ)、清掃員グプタ(クマール・パラーナ)、荷物運搬人マルロイ(チー・マクブライド)という仲間もできる。
そしてファースト・クラス担当のフライト・アテンダントのアメリア(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)との出会い。 アメリアは綺麗でキャリアもあるのに男運の悪い女。不安や寂しさを素直に出していたので可愛いなぁと思った。でもこの役って、うっかりすると鬱陶しいというか、男に媚を売る同性に嫌われる女になりそうだけど・・・キャサリンは紙一重で可愛らしく演じていたと思う。 最後、彼女も“自由”になったと思いたい。
この話は現代の御伽噺。 ビクターが建設業の仕事に就いたのも、エンリケの恋が成就したのも、役人たちの心変わりもうまく行き過ぎている。 父親の薬を持ち込もうとして入国審査で捕まったロシア人を、とっさの機転で“ヤギの薬”として通訳し救った後の(動物の薬は書類提出がいらないので)ターミナル内での彼のヒーローとしての扱い方は、ちょっとやり過ぎ(まぁ楽しいからいいけど)。 ディクソンはビクターと敵対するけど、それは自分の保身と昇進の為で、やる事もちょっとツメが甘くて墓穴掘ったりしてせいぜい“悪巧み”程度。 でもこれでいいのだ。 ホントの悪人のいないこの作品、くすっと笑って観終わった後、とても暖かい気持ちになれるから。やっぱりポジティブにいくのは大切だと再確認。
スピルバーグ監督も「にっこりと人々を微笑ませる作品」を作りたかったとパンフレットで言っている。
劇中で清掃員グプタが披露してくれた芸は本業だった。上手だと思ったら・・・。 彼は最もビクターに貢献したと思う。あの後どうなったか、一番気になる人物でもある。 きっと、床を磨いているんだろうなぁ・・・そして滑って転ぶ人を見て密かに楽しんでいるに違いない(笑)。
ちなみに東ヨーロッパの国クラコウジアからニューヨークにわざわざ来た理由は古びたピーナッツ缶の中の父との約束の詰まった“ジャズ”。 40年待ち続けた父の願いを叶える為、たった一人のジャズ奏者のサインを貰うためにたった一日だけニューヨークに降り立ったビクター。 57人のサインの入ったピーナッツ缶を抱えて、ビクターはまた“家”へ帰っていったのだ。
2005年01月08日(土) |
「アイーダ」大阪MBS劇場 |
◆CAST◆ 濱田めぐみ、森川美穂、福井晶一、有賀光一、大塚俊、石原義文、岩下浩、井上麻美 ほか
いつか観ようと思いつつ、気づいたら2月千秋楽発表であわてて確保したチケット。 1階では分かりにくい照明も見てみたいなと思い、今回は珍しく2階最前列での観劇だった。
舞台は現代の博物館。様々なエジプト展示物を見て回るお客さんたち、そして四角い箱の前で立ち止まる男女2人。そして歌声が聞こえてくるのだが、誰が歌っているのか分からず探すと、展示品の女王が歌っていた。 威厳のある風貌と歌唱力で、物語は過去へタイムスリップ。
古代エジプト。侵略してきたエジプト軍将軍ラダメス率いる軍隊に囚われるヌビアの女たち。 福井ラダメスは短髪に髭ととても男らしい感じ。ただ最初、赤い衣装が派手すぎて違和感だった。 何より低すぎず高すぎず聴きやすくて声が格好イイ。 今回は2階席で、目鼻はあまり見えないのでもう雰囲気と声でオッケーって感じ。 しばらくすると、あんなに違和感だった赤い衣装も格好良く見えてきてしまうのだから、舞台って不思議(笑)。 父・大塚ゾーザーが奴隷の女たちを鉱山へ行かせようと止め、収穫班へまわす福井ラダメス。鉱山は生きては帰れない程、厳しいところなので、ここでラダメスの優しさポイントがアップ。 まぁ、奴隷として拉致された方としてはこの“優しさ”も何さって感じだけど。
そしてこの奴隷としてエジプトに来るとき、船中で一騒動起こしたヌビアの王女アイーダはラダメスの印象に強く残った為、エジプト王女アムネリスの侍女となる。 濱田アイーダは強くて凛とした雰囲気。ハスキーで力強い歌声はさすがである。 支配者としてのラダメスを心変わりさせていくのも頷ける程、同性から見ても魅力的だった。 舞台は短時間でストーリーが進む為、出会った瞬間に恋に落ちるのも多く、一体どこに惹かれたのか分からないまま燃え上がっていることが割りとある(苦笑)。 しかしこの作品は、ラダメスがアイーダに惹かれていく過程がとても丁寧だった。
奴隷になっても誇りを失わず自分に正直なアイーダに対して、アムネリスは“おしゃれ”などで仮面を被っていたのと、コミュニケーション不足で本当の姿がラダメスには伝わらなかったのかも。 登場シーンは華やかで、そしてアムネリスのちょっと天然っぽさも表れていて楽しい場面。ファッションショーなんかもあるのだが、そのファッションが近未来ですごいセンスなのも笑えた。 森川アムネリスは「アイーダ」オーディションで入団した方だからか、歌い方や雰囲気がちょっと四季とは違った。 もともとの可愛らしい声を最大限に生かした華のある歌い方だった。 四季は“スターを作らない”方式らしいので、わりと皆さんオーラを出さないようにしているのかな・・・他の舞台のメインキャストとはオーラが違うと言うか・・・(その良し悪しは個人の好みなので置いておいて)。 だから、森川アムネリスを観ていると「あれ?四季の舞台だっけ?」とちょっと新鮮な気分になった。
登場シーンから綺麗で可愛い森川アムネリスにうっとりだった私(笑)。 濱田アイーダが侍女として着た時、目も伏せずに堂々としているのに対し 「何故、震えないの?」 「震えた方がいいですか?」 「・・・いいわ、そのままで」 ちょっと天然系で育ちの良さが表れていて可愛い!!
そして、ラダメスの小姓(みたいな感じ)の有賀メレブ。 割とさらりと登場しているのだが、とても重要キャラで若いのにいろいろな裏の顔と過去をもった人物。 見た瞬間、薄幸オーラが出ているなぁと思ったら・・・その通りだった。分かっていたのにラスト近くで、慣れない剣で戦い倒れてしまうシーンは涙・涙。 実は彼はヌビア人で、10年前に捕虜としてエジプトに連れてこられ(当時まだ子ども)殺されそうになったのをラダメスに助けられ、以後彼の下で働いていたのだ。 収容されているヌビア人たちの橋渡しになったり、いつか国へ帰ろうとコツコツと王宮からお金をくすねて貯めていたり・・・と若いのにしっかり者。 ちなみに貯めたお金は、ヌビア王(アイーダの父)救出の為に使われることとなる。 その上、王とアイーダを逃がそうと戦い死んでいく・・・。私の中では「アイーダ」のヒーローはメレブって思えるくらいだ。 メレブの父は王宮務めだったので育ちの良い。 何故こんなにメレブを詳しく書いたかというと、もちろん彼に惹かれたのも大きいが、パンフレットあらすじに全く彼のことが書かれていなかったからである(重要キャラなのに・・・)。 有賀さんは今回のメインキャストで唯一何度も観ている人。 四季初観劇の「壁抜け男」から、「夢から覚めた夢」「アンデルセン」など、実年齢は知りませんが、“少年役”が自然に似合う人。 四季で“少年役”が似合う男性って貴重だと思うので、このまま若々しさを持ち続けてほしいなぁ。
大塚ゾーザー、ラダメスの父で陰謀(ファラオの娘アムネリスとラダメスを結婚させた後、ファラオを亡き者にして権力の座を狙う)の首謀者。 大塚ゾーザーは銀髪で(2Fから観ると)衣装も学ランっぽくて若々しかった。福井ラダメスと並んでも、ホントに父子か?と何度思ったことか・・・。 そしてゾーザーの部下達も学ラン仕様(長ランで裾が広がる衣装)で密談のたびダンスしまくりなので、とても格好良い。2階席からなので、舞台の照明や彼らの並び方などもしっかりと楽しめた。
私ってダンスを観るのも好きだったんだなぁと再確認。
互いに惹かれあったラダメスとアイーダ。 侍女アイーダを“友達”と言って悩みを相談するアムネリス。 第二幕のアイーダは国と自分の愛の間で何度も揺れる。父王を助ける為、一度は諦めようとしたラダメスへの想いも結局断ち切れず、最終的に愛を選ぶ。 一方、アムネリスは結婚式前日に2人の関係を知り、それでも式に臨む。そのシーンはダイアナ妃がモデルだとパンフレットに書いてあった。ダイアナ妃も結婚式目前に皇太子から恋人の事を聞かされていたそうだ。式の2日前位には姉に式を取りやめたいといっていたとテレビでみたばかりだったので、さらになんだか生々しい。 この事を知ったのが観劇後で良かった・・・とても悲しくて観ていられないかも。
しかしラダメス、アイーダに猛烈アタックする前に、アムネリスの方をきちんとしてほしかったわ。結婚式1週間きっているのに「結婚しない」とか言わないように!
アイーダも何度あなたに言いたかったか・・・とアムネリスに言うけど、そんな素振りはなかったように思えるけど・・・?(見落としたかしら?)
アイーダとアムネリス、二人の王女はいつの間にか立場が逆転していた。 すべてを捨て愛を選んだアイーダ、愛を失い国を選んだ(というか選ばざるを得なかった)アムネリス。 毒を盛られ余命僅かな父王ファラオに、堂々と後継者を名乗るアムネリスは凛としていて美しかった。 そして愛するラダメスとアイーダを思っての選択・・・エジプトの地に“二人一緒に”生き埋めという処刑。 愛する人をすべて失って、王座につくアムネリスの今後をいろいろ考えさせられるラストだった。
ラダメスとアイーダは一緒に死ねたし、現世(来世?)でも結ばれるみたいだから、良かったねってことで。(やけにあっさり感想)
ラストシーンは現世の博物館。中央の大きな箱は、二人が処刑された時に入れられたもの。その前で出会う二人。 オープニングで迫力ある歌声を聴かせてくれたのは、アムネリス王女だったと最後に初めて分かった。
カーテンコールで最後までアイーダとラダメスは白い現代服だった。 濱田アイーダは白いワンピースで可愛らしいからいいけど、福井ラダメスは普通過ぎて普通の人が紛れ込んだようにしか見えなかったので、第一幕の赤い服で出てきてほしかったなぁ。 福井ラダメスは森川アムネリスをエスコートして退場するときもあったのだが(アムネリスは古代衣装で裾が長いし)、ラストのラストでは濱田アイーダと熱〜く見つめあって退場していた。 そして下手では大塚ゾーザーに腕組をして退場していた森川アムネリス・・・客席から笑いを取っていた。
もう一度、しっかり観たかった作品だった。 でもその時も森川アムネリスと有賀メレブで!←四季はキャスト発表が遅いから狙えないし、もう千秋楽だから無理だけど。
ちなみに、アイーダとアムネリスの友情はミュージカルのオリジナル設定だそうだ。 来月は宝塚版“アイーダ”「王家に捧ぐ歌」観劇予定なので、こちらも更に楽しみになった。トップの娘役さんがアムネリスはおかしいなぁと思っていたが、この「アイーダ」を観た今は、納得納得。
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