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■ 映画
実家の隣駅にあるデパートを、祐ちゃんは早足で歩く。
待って、もっとゆっくり歩いて 小走りで追いかける私を振り返ることもなく。
土日を利用して祐ちゃんの実家に来ている。 ハルとお留守番してるから、二人で散歩に行ってきたら お義父さんとお義母さんが、にこにこと送り出してくれた。 エスカレーターさえ立ち止まることなく どんどん進んでいく祐ちゃんの背中を 私は見失わないように追いかけることしかできない。 二人で出掛ける機会なんて滅多にないのに…
祐ちゃんがやっと立ち止まったのは、デパート内の映画館。 迷うことなく券を買う。 すぐに始まります、と店員さん。 私はあっと息をのむ。
この映画が見たいんだー ふぅん でもハルがいるからなぁ CMを見ながらのやりとりを、覚えていてくれたんだ。
すでに暗くなっている中を、椅子に座りながら 祐ちゃんは小さな声でささやく。 急がないと間に合わなくなっちゃって 思わず涙がこみ上げる。 ありがとうと言いたいけど声にならない。 そんな私の頭を、 祐ちゃんが少しだけ乱暴にくしゃくしゃとなでる。
2007年12月06日(木)
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