あたたかなおうち



 幼なじみ

祐ちゃんの幼なじみに会った。

幼なじみであり、初恋の人であり、
祐ちゃんが初めてお付き合いした女性。

待ち合わせの駅で、遠い人ごみに祐ちゃんは手を振る。
背の高い女の人が近づいてくる。
はじめまして、華です
私の言葉に、その人は感激したように言う。
はじめまして。なんてかわいらしい彼女なの
私を抱きしめんばかりにまぶしい笑顔を振りまく。

れいこさんは、太陽のような人だ。
そうだ、祐ちゃんのお母さんに似ている。
こう考えるのは変なのかもしれないけれど
祐ちゃんとれいこさんはお似合いだと思った。
素敵な二人だと思った。

祐ちゃんが車を取りに言っている間、
れいこさんはいたずらっぽく笑って言う。
何かあったらすぐに連絡してね
こてんぱんにしてやるから

はい
私達はくすくすと笑いあう。

ふと祐ちゃんの後姿に目を向けて、
れいこさんは穏やかな声で言う。
あいつは華ちゃんを本当に大事にしてくれるから
私はしっかりとうなずく。
祐ちゃんの車はもう私達の元に近づいている。

2005年11月30日(水)



 メガネ

消耗品だから、と言って
祐ちゃんはメガネをふたつ買ってきた。

先生らしい細い銀色のメガネと
ふちの太いしゃれた黒いメガネ。

銀色のは学校用、黒いのは家用にするんだ
見たいとせがむ私に
祐ちゃんは両方ともお披露目してくれる。

初めて買ったふちの太いメガネが
思いのほかとてもよく似合って
私は祐ちゃんの顔をにこにこと飽きずに眺める。


朝、そっと出かけようとする祐ちゃんに気づいて
私は飛び起きて玄関まで見送りに行く。

いってらっしゃい
いってきます

祐ちゃんは笑って
私の頭をくしゃくしゃとなでる。

ふと祐ちゃんのメガネが黒いことに気づいて
私はくしゃくしゃの頭で満面の笑顔になる。


2005年11月28日(月)



 スーパーマン

何度受け取っても、私はこの瞬間が好きでたまらない。
封筒には見慣れた文字で私の名前が綴られている。


俺は華が思っているほどスーパーマンではないけれど
華が側にいてくれれば、すごく頑張れるし
何でも出来るスーパーマンにだって
なれるような気がしています。



祐ちゃんはもう隣で本を読み始めている。
私は祐ちゃんの頬にキスをする。


華のことは、俺が幸せにします。

二人であったかい家庭をつくって
いつまでもいつまでも仲良く暮らしていきましょう。

愛しています。



手紙に見入っている私に、
今度は祐ちゃんが長い長いキスをする。

2005年11月23日(水)



 人生最良の日

横浜にある観覧車は
夜になると時間を告げる、巨大な時計になる。

祐ちゃんは私の手を引いて、観覧車の見える堤防を歩く。
横浜は夜景がきれいで、私は周りを見渡してばかりいる。
祐ちゃんは前を向いて、しっかりと歩く。
私の手を強く、強くにぎって。

祐ちゃんがふいに立ち止まり、観覧車を見つめる。
次の瞬間、大きな大きな時計が午前0時を指して
祐ちゃんはささやくように言う。

おめでとう。

私は満面の笑みで答える。
ありがとう!!ありがとう、祐ちゃん!

観覧車は突然時計から花火のイルミネーションに変わり
私は思わず見とれてしまう。

祐ちゃんが私の方を向いたので、私も祐ちゃんの方を向く。
祐ちゃんは静かに口を開く。


華、22歳の誕生日おめでとう。

華の22歳から先の人生を、俺にください。



私は祐ちゃんを見上げる。
いつもと変わらない、穏やかな笑顔がある。


結婚してください。


はい。よろしくお願いします。


祐ちゃんは私を優しく抱いて、耳元でささやく。

絶対に幸せにするよ。

私は祐ちゃんの肩に顔をうずめて、何度も何度もうなずく。

2005年11月13日(日)
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