2週間の中絶記録
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2004年09月08日(水) おなかの子

家事が手につかない。
深夜までパソコンに向かっている私。

中絶・・流産・・生理・・手術・・
いろんな言葉を入れてサーチエンジンで検索してしまう。

夫に対する罪悪感はあまりなかった。
その理由は、書けない。
不倫の彼は、夫とはしていいと冗談めかして言うけれど
私は彼に気を使って していないと言っているのではなく
本当にそういう関係は随分前から、なかった。

正直子供を妊娠して以来ない。

だから彼が 夫との子を妊娠しているのではないか?と
考えているのでは?と考えるたび苦しくなる。


水子供養のHPが画面に出た。

水子は汚れを知らない純粋な存在
決してあなたを恨んだり祟ったりしませんよ
あなたのおなかに宿ったときも
ちゃんと、自分は生まれることが出来ないって
わかっているんですよ
わかってあなたの元にやってきています
だからせめておなかにいる間だけでも
美しい音楽を聴かせて、美しい景色を見せて
この世は素敵なところであることを
教えてあげましょうよ
そしてあの世に戻っていったあとでも
決して忘れないで
想い続けてあげること、それが供養です

そんなことが書かれてあった。

天国で楽しく遊ぶ赤ちゃんたちの絵も出てた。
水子も天国では2,3歳の子供の姿になっているんだって。

そのHPを見ながら
私は激しくショックを受けて
泣いても泣いても止まらなくなってしまった。

私は
このおなかの子を殺そうということばかりに
必死になっていた。

ごめんなさい
ごめんなさい
ごめんなさい

私は人殺しだ。



2004年09月07日(火) 2軒目3軒目の産婦人科

9月6日は とても長く 疲れ果てた一日だった。

というのも昨日
F産婦人科を後にしながら ふとあることを思い出したのだ。

私がまだ独身時代のこと。
水泳合宿があるのに予定の生理が来ない。
このまま遅れて生理が来ると
水泳合宿の時、生理中になってしまう。
そのとき、産婦人科を受診したことがあった。

妊娠検査をしたあと、妊娠してませんね、と言われ
腰に注射を打たれた。
「これで3日くらいで生理来ますよ
 生理が来る注射だから」
そして本当に3日後に生理が来た。

生理が来る注射・・・

あの注射を打ってもらうことは出来ないだろうか?

私はF産婦人科に電話をし、その注射のことを話した。
看護婦は「あぁ、多分できると思いますよ」と言い
電話をわざわざ先生に代わってくれた。

しかし先生はNOだった。

あの注射は、妊娠している人には効かない。
妊娠していない人にのみ効く。
そして、もし妊娠している人にあの注射を打って
万が一、偶然、胎児に何かあったとき
その注射のせいだと言われても
責任が取れない。

「私、出産を希望しているわけじゃないんです。」

私も必死になってしまう。

「でもね、そうは言っても、人間の気持ちは変わったりするんですよ。
 今は産まないと言っても、少し経ったら産みたくなるかもしれない。
 そのときに、注射をしたことが何か問題になっては
 困るんです。できません」

電話を切っても
あきらめられなかった私。

妊娠している人には効かない、と言われても
それは実は注射が中絶行為につながる可能性を
秘めているからかも、と解釈してしまった。

その時点で時間は午後5時だった。

「あの病院ならまだやってるかもしれない!」

もう一度車に乗り込み、近くの産婦人科へ。

しかし診察時間は5時まで。6日のうちに注射を打つのは無理だった。


そして翌7日。
私は注射に執着していた。
どうしても打ってほしい。生理が来るかもしれない。

でも病院の尿検査で今度は確実に陽性と出てしまうかも。
そしたら注射は打ってもらえないだろう。

私は子供の尿を採取して、バッグに隠し、M婦人科へ。

初めてのふりをして
妊娠検査を受ける。
今回、妊娠検査とは言わなかった。
「生理不順で」と告げた。

生理不順で、生理が遅れてしまうと旅行があるので困る、
だから今月だけでも、生理がすぐ来るようにしてほしい、と告げた。

また内診だ。

また時間がかかる。

「何かおかしいですか?」と何気なく聞くと
「う〜ん・・・何かねえ、怪しいんですよ。妊娠してるみたいだなぁ」

やっぱり・・・。
不安になる。

問診を終えて、先生が言う。

「このエコー見てほしいんですけど、直径4ミリの点が見えるでしょう。
 これが多分しばらくすると・・・」

「生理が来る注射を打ってほしいんですけど・・・
 妊娠していても、産めないんです・・・」

「打っておきますか?」
先生はあっけなく、注射を打ってくれた。

「早ければ3日、遅くて一週間して生理が来なかったら
 おそらく妊娠しているでしょう。
 生理が来る確率は半分です。妊娠してたら生理来ません」

やっぱり、注射は妊娠している場合には効かないのだった。
M婦人科での尿検査は、子供の尿を提出したから勿論陰性だったのだが
超音波で、妊娠の疑いはすぐ分かってしまうものなのだ。

でも、私はもうこれで、覚悟が出来た。
半分の確率でもいい。生理が来てくれることに希望を持とう。



2004年09月06日(月) 長い一日 

相手の男性がどういう人で
どうやって知り合ってとか
そういうことは 省略。

私が彼の子を妊娠してしまったこと

私も彼も既婚者であるため
中絶する気持ちでいること

ここから始まる。



妊娠に気づいたのは9月6日。

そういえば生理来ないなあ・・・と思っていた。

正直あまり気にしていなかったが
28日でキッチリ来る私にしては遅いなあと思い
カレンダーを持ち出して計算してみる。

最後の生理開始日は8月の3日だった。

そこから計算すると8月末には生理が来て良いはずだった。

6日遅れている時点で
青ざめたのは
8月3日生理開始から2週間後の
バリバリ危険日に
彼と関係を持っているという事実だった。

あの日は久しぶりに会い
危険日だというのに
注意がお互いに 確かに不足していた。

コンドームを装着せず生で挿入し
膣外射精した。
認識が甘かった。
ガマン汁に精子が含まれているとは言うけれど
危険日とはいえ
中出ししなければ多分大丈夫という認識でいた。

彼が私より20歳近く年上ということもあったためかもしれない。
そして彼と奥さんとの間に
努力しても子供ができなかったという事実も
その認識を強めてしまってたかもしれない。


とにかく
あの日はいつになく感情が先走ってしまい
避妊に対する注意がポカーンと抜けてしまってた気がする。


家に1本だけ、何年も置いてあった妊娠判定キットを
洗面所から探し出し
迷わず使用した。

1分もかからず陽性になった。

うろたえた。

パッと見ただけで「どうしよう・・・」
直視できずに慌ててゴミ箱に捨てた。

夫に知られてはいけない。

どうしようどうしようどうしよう・・・
彼の携帯にメールを入れる。

彼はその時間、知り合いの告別式だった。

あまりマナーモードに設定したとこを見たことないから
もしかしたら最中にピーピー鳴ってしまうかもしれない。

そう思いながらも
私は彼にメールするのを待てなかった。

頭の中でなんだか鐘が鳴ってるような感じでクラクラしていた。

少したって彼から電話が来た。

信じられないみたいだった。

私だって 信じられない。

彼は言ってた
あの日はちゃんと外に出したし
漏らしてないし。

おかしいなぁ 不思議だなぁ

私は感情的になっていたから
彼の口ぶりに
現実味が全くないことに混乱し、泣いた。

とにかく病院へ

そう思って時計を見る。

3時半だった。

慌てて子供を連れて、知っている産婦人科へと車で向かった。




向かったのは F産婦人科だった。

ほどなく行ける距離には何軒か産婦人科があったが
一番閑散として 人も少なく待ち時間が少なそうな
F産婦人科を選んだ。

明るくて評判の良い産婦人科もあったのだが
知人(子育て世代なので妊婦のママさん知人が何人かいる)に
会ってしまうのが 怖かった。

昔ながらの個人病院といった感じで
日陰で 薄暗かった。

受付には『当分のあいだ、分娩および妊婦検診は行いません』の
張り紙。

そしてその横には中絶費用、避妊具挿入などの
値段表が貼られていた。

つまりここは 出産ではなく中絶がメインの病院だった。

看護婦さんに 保険証の提示を促されるが
私は一瞬躊躇して、結局バッグから取り出せなかった。

「妊娠検査は保険が効かないって聞いていたので・・・」と
言い訳すると
「保険が効く部分もあったりしますから次回持ってきてくださいね」
と言われた。

根が小心者なので
もしかしたら保険証を持ってくる事態になるかもしれないと
不安になり
問診表の欄に 嘘の名前は書けなかった。
本名を書いてしまったし
住所も書いてしまった。

ただ電話番号はどうしても本当のものを書けなかった。

そんな中途半端な問診表を提出しながら
夫にバレたらどうしよう・・・という思いで不安だった。

私が嘘の名前を書けなかったもうひとつの理由、
それは、そのとき子供を連れていたということだ。

まだ小さいとはいえ
自分の名字くらいはわかっていて
違う名前を呼ばれて私が返事をしたら
おかしいと思うに違いない。

しばらくして呼ばれる。
初老の男性医師だった。
建物の暗さから、この病院自体に良い第一印象が持てなかったが
先生は背筋がピンと伸びていて
清潔感のある、きちんとした印象。

話し方も落ち着いていて 丁寧だった。

久々の内診。
やっぱり内診はいつになっても、慣れない。

なかなか終わらない。

終了して結果を待つ。

尿検査のキットを見せられる。白かった。陰性だった。

そんなはずはなかった。
だって、さっき自宅の妊娠判定はくっきり陽性だったのだ。

原因はすぐわかった。

トイレに行ったあとのすぐの尿だったから
薄くて 判定がうまく出なかったのだ。

先生は言った。

「尿検査は陰性ですが、子宮に、妊娠を形成するような動きは出てきて
 います。妊娠初期の中の、初期状態かもしれませんね」

「袋とかはまだ見えないんでしょうか」

「絨毛は見えますね。妊娠でなければ内分泌異常かもしれません。
 判定にはまだ早すぎます。
 3週間後にまだ生理が来なかったら、また来てください」

3週間後???

そんな遅くて良いのか?

「あの、先生・・・実は、諸事情があって」
と、産めないことを告げようとしたとき
いきなり涙がぼろぼろ出てしまう。

喋っているけど泣きながらだとうまく言葉に出来ない。

先生は、そういう状況に慣れているんだろうな
じっと視線を書類に落としたまま黙って聞いていた。
後ろにいた看護婦は
私の顔をじーっと見ながら話を聞いていた。

「尿検査もまだ陰性ですし、もう少し様子を見ましょう。
 わかりました、そういうことでしたら、来週、まだ生理が来なくて
 ムカムカしたりといったつわりの症状が出てたら
 来てください」


妊娠とも妊娠じゃないとも判断がつかないまま
私は悶々としつつ、F産婦人科を後にした。



久美子 |MAIL

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