「一番好きな作家は?」と訊かれることが多く、この私がどれだけ本を読んでいると思ってるんだ、簡単に一番を訊くなよと思いながらも、こう答える。「J・D・サリンジャーです」と。 昨夜もこの会話をしたばかりだ。そしたら、"Oh, you like classic novels."と言われて面食らった。私にとってサリンジャーは、まさしく現代――というか「現在」であり、今後の私の人生がどこに行くかにも影響するであろうことを考えると未来ですらある。 サリンジャーが好きだと答えた後、私はたいがいこう続ける。「サリンジャーは1919年1月1日生まれで、ということは今91歳なんですよ」と。私は彼の生年月日を覚えているのだ。 サリンジャーが高齢であるということが、私にとって常に微かな不安だった。カート・ヴォネガットの死に大泣きして以来、私が恐れてきたのは、ブラッドベリ(現在89歳)とサリンジャーの死であった。
"Franny and Zooey"のラストでは、ゾーイーの一言にミステリーのどんでん返しを読んだ時以上に驚き、不意をつかれて泣いた。 実家が教会の隣で、教会の幼稚園に通ったにも関わらず無神論者である私は、子供の頃に聴いたサイモン&ガーファンクルの"The Sound Of Silence"のラストの歌詞を読んで、ぼんやりと「神さま」というイメージを宗教とは違ったところに抱くようになったが。「フラニーとゾーイー」の、神についてのゾーイーの一言は、悩んでいたフラニーを救い、同時に私をも救った。
前作(初ソロ)は2004年。1曲めの"Mono"は最高だった。信じ難いほど直球勝負のけたたましいバイオレント・ポップで、ホール時代の倦怠も色気も吹っ飛ばしたのが逆に新境地という感じだ。だが2曲めの"But Julian, I'm a Little Bit Older Than You"は、言っちゃ悪いがよくもここまでひどい曲が作れたもんだと思ったし(ストロークスのジュリアンのことを歌っているってのがまた気に入らない)、残りは全部中途半端でどうでもよかった。
なのでこの映像も全く期待せずに見た。 最初のおそろしく安っぽいキーボードに一瞬ひるんだが。聴いていくとこれが思いのほかいい。作曲は他人だろうな。これまでに比べたらスタンダードに近い。声がいい感じに枯れて、おそらく衰えている。それが色っぽい。ちょうど激痩せした頃で、尖った肩の骨をくいっと上げて歌う。 リズム隊は無個性だし、美人で性格も良さそうなキーボードは演奏もコーラスもお嬢さん芸で耳障りだし、終盤のテンポアップは陳腐だが。それらを無視しようと思わせるくらい、コートニーに雰囲気がある。 "This is the day that I fuck up."と歌った時は痺れた。なんて下品な"fuck"だ。おかげで、次に同じメロで"This is the day that I give up."と歌う時は、力の抜き加減がぐっとくる。
Don't want to die uneasy, just let me go naturally (恐怖症で苦しんで死にたくないんだ。ただ普通に死なせて下さい) *And When I Die / Laura Nro (1967) の歌詞。
2010年01月13日(水)
It's alright. There comes a time. Got no patience to search for peace of mind
10日の日記を読んだマチちゃんからメールが来た。そうだ、ジョン・フルシャンテの"Will To Death"はマチちゃんが送ってくれたんだった。 マチちゃんにはジョンを何枚も焼いてもらったな。2007年には「まさかのATAXIAの2nd」も送ってもらった。お礼にアリス・イン・チェインズの"Unplugged"のDVDを焼いて送ったっけ。私がそのDVDのことを日記に書いたのを見て、マチちゃんも見たがったから。
私自身のDVDはベイビー(g)にもらった。彼が買って届けてくれたので、うちで一緒に見たのだが。 "Sludge Factory"の出だしでボーカルのレイン・ステイリーが歌詞を間違い、"Fuck!"と叫んで演奏を止めた後に、少し間をおいてひとこと言う。ベイビーに「これ、なんて言ってるの?」と訊かれたが、私はわからなかった。 いや、"What's my motivation here?"(俺がここにいるのは何の為だ?)という言葉は聞き取れた。だが問題は、彼がそれを言った瞬間に観客が笑ったのだ。この笑いの意味がわからない。何か私の知らない背景でもあるのか。ちょっとネット検索もかけてみたが、何も出てこなかったので、そのままになった。
しかし。同時期にPodcastで見たこの1コマ漫画(のアニメ版)はさっぱりわからない。セリフすらないのに理解出来ない。やはりこれもYouTubdeで探してコメントを見るが。こちらも「意味がわからない・・・」と言っているネイティヴがいる。 "Not every state uses punch cards like Florida. Hell, if I hadn't happened to watch that movie about the 2000 election, I wouldn't have gotten it either."(全部の州がフロリダみたいにパンチカードを使ってるわけじゃないんだ。俺だってたまたま2000年の選挙の映画を観てなかったら意味がわかんねえよ)というコメントがあったので、それを頼りに検索を続け、2000年の米大統領選挙でフロリダのパンチ式投票用紙に不備があった件をベースにしているんだということはわかった。タイトルの"Hanging chad"は、パンチ穴のくずが、はしがつながって落ちずにいるのを言うらしい。 ―――で? だから?? "hanging 〜"は「吊るし首の」という意味になるので、パンチ穴を間違って打つと、自分自身が"hanging"になってしまうということかとも思うが、だったら面白くない。係員が全く動じずに次の投票者にどうぞと指し示すのが何より解せない。 これがノンネイティヴの辛いところで。笑えない理由が、ジョーク自体の問題なのか、自分の英語力の欠如なのかが判らないのだ。ネイティヴであればどんな馬鹿でも、自分で自信を持って「つまんねえ」と判断を下してしまえるのに。――例え間違っていてもね。
It's alright. There comes a time. Got no patience to search for peace of mind (まあいいさ。いつかそのうちわかるようになるよ。今は、すっきりした回答を得る為のグーグル検索が面倒だけどね) *No Excuses / Alice In Chains (1994) の歌詞。
2010年01月11日(月)
You know it breaks my heart. Can't see you going out like that. Stay alive my Love
You know it breaks my heart. Can't see you going out like that. Stay alive my Love (姐さんが今みたいにやれなくなったらとても辛い。頑張ってねコートニー・ラヴ) *Right Between The Eyes / Garbage (2005) の歌詞。
2010年01月10日(日)
Standing in line to see the show tonight, and there's a light on. Heavy glow
思えば私は、自分自身の苦しみさえも、音楽に浸る為の小道具にしているじゃないか。2004年にジョンのソロアルバム"Will To Death"に入っている"Loss"という曲に出会った時、私は無職で、貯金が底をつきかけていて、彼氏(g)と別れたばかりだった。彼は私と結婚したいと言ってくれたのに、なんで私は別れたんだっけ? 思い出せず、当時の日記を読み始めたが、面倒になってやめる。結局は好きじゃなかったってことだろう。 だけど。強烈なまでに"Loss"を好きだった。そして、「全く先が見えない」という足場のない不安に"Loss"をからめ、壮絶に酔っていた。―――だって人間って、"rolling stone"には魅力を感じるものでしょう? だからロックなんか聴くんでしょう? 2004年の夏は、"Loss"しか覚えていない。全てが、"Loss"に聴き入るための「背景」だった。
ジョンがレッチリを抜けた時、ショックを抱えて電車に乗った。iPodで、爆音で"By The Way"のアルバムを聴きながら。中央線のドア際に立って外を見ていた。夜だったので見るものもなく、時々総武線がすれ違うと、電車が暗い中に輝いていた。ただの闇とただの電車が、"By The Way"の音楽をまとって、鮮烈だった。
Standing in line to see the show tonight, and there's a light on. Heavy glow (今夜この感動に出会うのを待っていたんだ。ほら、そこに光り輝いているのが見える) *By The Way / Red Hot Chili Peppers (2002) の歌詞。
2010年01月08日(金)
Livin' on the edge, you can't stop yourself from fallin'
日記を止めていた半年の間に、3つのバンドにトラブルがあった。オアシス、エアロスミス、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ。 ノエルはフェスの直前に楽屋でリアムと喧嘩した勢いでバンドを抜けた。オアシスが出てくるのを待っていた観客は、突然スクリーンに映し出された言葉に愕然とする。"As a result of an altercation within the band, the Oasis gig has been cancelled."(バンドに内輪もめがあった為、オアシスのギグは中止になりました) レッチリのジョン・フルシャンテも、1992年の日本ツアーの最中に脱退した前科があるが。二度目の今回はなんと、ロックサイトに脱退をすっぱ抜かれ、3日後に本人が出したコメントが、「実は一年以上前にやめてました」って。―――力が抜けて何も言えない。
エアロだけは、大事に至らず踏みとどまった。スティーヴン・タイラーは、薬のせいかステージから落ちたりして他のメンバーを苛々させ、脱退したとまで言わせておいて、ジョー・ペリーのソロライヴに予告なしで乱入して脱退を否定し、今はヤク中を矯正する施設にいる。ジョーのステージで、"Joe Perry, you are a man of many colors. But I, motherfucker, am the rainbow!"(ジョー・ペリー、お前は多彩な男かもしれないが、俺は虹だ!)と叫んだ時もラリってたんだか知らないが。いずれにしても全てが物凄い力技っぷりで、批判する気も起きない。さすが。*"man of many colors"は本来は良い意味ではない。どちらにせよ何を言いたいのか意味不明。
うちのバリ製の本棚の上にずっと飾ってあった、レッド・ホット・チリ・ペッパーズの"By The Way"の4点セット。LP、CD、ステッカーにバッジ。だって"By The Way"は私の聖典だからね。 そこに降ってわいたジョン・フルシャンテのレッチリ脱退。 それでふう〜っと力が抜けて、4点セットを引っ込めたのだが。ステッカーの支えにしていた兎のかたちのガラスボトルが、実は私の「おクスリ」入れだった。で、何となくその時に、ボトルの中身を全部捨てちまったのだ。 まあ、なんとなくである。 去年はさすがに癌上がりだったので、その手のものは全くやっていない。だからどうせもう、質の悪い葉っぱと、合法ドラッグがあっただけだ。あと葉っぱ用のパイプと巻紙。 ・・・と思ったら、かなり存在感のあるケミカルのカプセルがひとつあった。結構な量の粉末が入っている。たしかこれをくれた人物が、数十回ぶんの量だと言っていたような。勿体無いなあと思ったが。消費期限を過ぎてる気がして怖いのでやはり捨てた。
葉っぱだのは、ケミカルと比べてしまうと、あまりにやさしく品がいい。ケミカルはワビもサビも品もなく効く。しかも法律が後手に回っているせいで合法だったりする。 いつかLSDをやってみたいなあとは思っていた。動物に麻薬を覚えさせるとたいていのものには中毒になるが、何故か絶対にLSDだけは手を出さないんだという事実に魅力を感じていたということもあるが。やはりそれよりも、ビートルズの"Lucy in The Sky with Diamonds"を、LSDをやりながら聴いてみたいと思っていた。ただでさえLSDをやると音楽の音がひとつひとつ立ち上がってくると言うではないか。ならばあのサイケデリックな曲が、どんな色彩を帯びるのか。マーマレードの空、カレイドスコープの眼。 そしたら昨年9月のニュースが言うことには、"Lucy in The Sky with Diamonds"のモデルになったルーシーさんが亡くなりましたって。実はあれはジョン・レノンが、息子(ジュリアン)が小さい頃に友だち(ルーシー)を描いた絵を見て作った曲で、LSDには関係ないんだと。 ・・・ああ、長年の夢が壊れてがっかり。
All the dreams I waited so long for fly tonight, so long so long (「飛ぶ」為に長年見ていた夢にさよならだわ) *Frederick / Patti Smith (1979) の歌詞。 *一応言うと私の訳は、日記の内容に合うように訳しているので。歌の中ではそういう意味ではない。 *"so long"には「こんなに長い間」の意味と、「さよなら」の意味がある。 *この日記の一行目も、"Frederick"の歌詞の一行目。
2010年01月03日(日)
Intermission
We'll be right We'll be right We'll be right We'll be right back After we go to the bathroom