ニッキ?

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2005年03月26日(土) ア・タ・ゴ・オ・ル

谷山浩子幻想図書館vol.3「アタゴオルは猫の森」を観てきた。

芝居じゃん。
っていうのが、まず感想。
歌は10曲くらいあったけど、ほとんどお芝居。
本職が3人加わっているとはいえ、残り3人は素人なのに、よくやる。


前回の「不思議の国のアリス」は、朗読劇だったし、
谷山「アリス」だからというのもあって、
透明な陰湿さみたいな雰囲気もあり、「幻想」の名にふさわしかった。
谷山さんが「アリス」の台詞を担当するのも合っていた。
そういえば、ラジオドラマに出演していたこともあるし、
体を使わない演技は向いているのかしら。

今回の「アタゴオル」が持つ独特な世界は、
陽気な方の谷山さんに、やっぱり合っていると思ったけど、
この舞台としては、実は谷山さんが出なくてもいいのでは、
と思ってしまったのが正直なところ。
演技に動きが入ると、ちょっとアイタタタって感じ。
どこか、NHKの教育番組を思い出させる。

谷山さんと、斉藤ネコさんは、こちらが恥ずかしくなっちゃう。
まあ、ほほえましいと言えば、そう。
本職じゃないから、学芸会と思えば、よいです。
ところが、主役を張った石井AQ氏は素晴らしかった。
演技が巧いかどうかは、ともかくとして、それでOKって思わせる雰囲気がある。
この人、緊張するってことを知っているのだろうか。
普段のコンサートもそうだが、すっかり自然体なんだもの。


前々から、音楽劇でもミュージカルでも、なんでもいいが、
そういうものの音楽を谷山さんがやったら、
面白いだろうなと思っているが、今回は、それを確信。
本当に、やってくれませんかね。


2005年03月24日(木) 嫉妬なのか(からくりからくさ)

梨木香歩『からくりからくさ』を読んでいる。
2年ぶりくらい?
何度も「無性に読みたい」の波を越え(手元になかったから)、
久々のご対面だからか、なんだかとっても懐かしい気分。

今回は、あんまり真面目に読み込まず、
慣れた話だからさっさかさーっとなぞり読みみたいにしているのだけど、
半ばあたりまで進んだら、妙に心が落ち着かない。
なんだろう……
なんかこう、淋しいような、切ないような。
……たぶん、これは嫉妬なんじゃないだろうか。
祖母の家と、そこに住む四人の女性達と、りかさんとの世界。
この目の前にある世界に、けっして生身は住めないのだと、
自分は入ることができないのだと、ひしひしと感じて、
嫉妬しているような気がする。

小説なんだから、当たり前なんだけどねえ。


*****
最近、人と会ったり、電話したり、メールしたり、
という回数が、わたしにしては多い。
その瞬間は、とても楽しい。嬉しい気分だ。
でも、それが過ぎるとひどく疲労感がある。
そして、虚しい気分になる。
人と会えば会うほど、話をすればするほど、
「わたし自身」は内に向いていく、陰にこもっていくようだ。
正直言って、つらい。

なんなんだ、これは。


2005年03月22日(火) 意味不明なおかしみ(第七官界彷徨)

尾崎翠『第七官界彷徨』読了(一応)。

うーんと、予想外だった。
もっとドロドロ陰気な話か、難解な話かと思っていたのだけど、
すこーんと軽かった。
登場人物がみんな変で、
それぞれの論理でゆったり暴走している点では、
難解と言えば難解だけど。

昭和一桁の作品とは思えない。
現代にも充分通用する。
通用っていうか、よほど面白い。
意味不明と言えば、意味不明だが、おかしみがある。
そりゃ言葉の端々は古めかしいのだけど、
かえってそれが新鮮でもある。

個人的注目は、実は「「第七官界彷徨」の構図その他」の方。
登場人物をみんな尋常ならざる者にしたのは、作者の意図であり、
そこに巧妙な仕掛けがなされていることや、
全体の運び、エピソードなどを、前もって図式化してから、
物語をつづり始めたことなどが書かれていて、
大変興味深い。
ま、たいがい誰でも物書きは構想メモくらいつくるのでしょうけど、
尾崎翠は、かなり緻密に作っていたようだ。
なるほど、なるほど。

ところで。
「だいななかんかいほうこう」って言いにくいよね。
それだけがどうも気になって。


2005年03月12日(土) 西の魔女VS物理オタク女子高生(西の善き魔女3巻、食卓にビールを3巻)

荻原規子『西の善き魔女』文庫版3巻読了。
小林めぐみ『食卓にビールを』3巻読了。
おや、どっちも3巻だ。

『西の〜』1・2巻とも多忙のあおりをくって感想を書きそびれていたが、
まだあと4巻くらい出るので、ま、のんびりと。
正統派ファンタジーなのに、
ところどころに「あやしい」少女趣味が混ぜ込んであって、
笑えてしまう(歳だからか!)。
話も舞台設定も、ありふれていると思わせて、
実はそうでもなさそうなので、おもしろい。
ゲーム化は難しいと思うが、アニメ化はいい思う。
真面目にやれば、かなりいい作品になるはず。
手抜きの間に合わせでやると、ファンにきっと袋にされるでしょう。
あと、たぶん作者に愛想尽かされる。
と、余計な心配はいらんのだけど、
出会い──別れ──再会、を繰り返し、
舞台を移動しつつ広げてきた1〜3巻。
続きはまたぐっと広がりそうな予感を秘めつつ、
次は外伝らしい。

『食卓に〜』は、いつの間にやら3巻。
3ヶ月ペースで新刊発行って、小林さんにあるまじき快挙(失礼!)。
まあ、雑誌連載だからなーと思ってなめてかかってはいけない。
だって、連載分はたった2本で、残りの6本は書き下ろしって、
変な短編集。
でも、2巻は短編2・3本+中編1本みたいなつくりで、
このキャラ・このテンションで中編はイマイチだと思っていたので、
すべて短編にした今回の方が成功。
あいかわらず物理オタクで、ノー天気に飛ばしまくっているが、
実はこのシリーズ、すんばらしく「隣実物語」しているので、
その構造にわたしは注目している。
だいぶこのテンションに慣れてきたので、もう何巻か出てもいいよ。
(でも重厚なお話も読みたいよ、小林さん!)


2005年03月10日(木) ちびくろさんぼ復刊

「ちびくろさんぼ」の復刊が決まったらしい(バターの話のみ)。
今までも、名前やイラストを変えての「復活」はあったけど、
今度のはあの岩波版まったくそのままらしい。
やった!
だって、あれは名作だと思うもの。

絶版になった理由は、
ちょっとこの場合、言いがかりに近いように思うんだけど、
でも、「される側」と「する側」に大きな隔たりがあるのが、
差別問題の常だからね……
しかしやっぱり、過剰反応はよくないと思うのだ。

たとえば、手塚治虫の漫画には、今から見ると「差別」にあたる誇張もある。
でも、断りを入れることで、今もそのまま「作品」には載っているわけで。
そこに、「時代」というものがあるのだから、
そういうことも含めて、受け止められるおおらかさがあっていいのでない?
いや、むしろ、それが今、必要なんじゃないのかな。


2005年03月06日(日) プチオタクの血が騒ぐ(ダーリンの頭ン中)

小栗左多里『ダーリンの頭ン中』読了。

ダーリンは、言語オタク。
何カ国語も操り、日々研究に余念がない。
妻はとうていオタクじゃないけど、素直な疑問で対抗。

相変わらず、その掛け合いが面白いよ。
もちろん、それは漫画家としての小栗さんのセンスだろうけども。

わたしは正直、外国語はからっきしダメな人間だけど、
でもこの「オタク」な視点は好き。
漢字の成り立ちとか、韓国語と日本語の発音の関係とか、
英単語の語源とか、おもしろい。
そんなピンポイントでは、なんの役にも立たないけど、
いいんだよ、おもしろいから。


2005年03月05日(土) (りかさん)

梨木香歩『りかさん』再読。
こらえきれずに再購入しちゃった。

なんか、どうしても『からくりからくさ』の印象が強くて、
「ようこ」はおっとりしている気がしてしまうけど、
意外と行動的。
しかし、その後のようこ=蓉子の土台が、やはり見えている。
おっとりと、なんでもやさしく包み込めるおとなになるには、
痛かったり悲しかったり、怒りだったり、たくさんの鋭い感情に接して、
受け止めていかなきゃいけなかったのだろう。
「ミケルの庭」で、それがはっきりわかった気がした。

りかさんも、よくしゃべるし、ただしゃべるだけでなく、
冗談言ったり、愚痴こぼしたり、なかなかに人間味が豊かだ。
そういえば、そうだったんだなあ、と思う。
おばあちゃんのことを「麻子さん」というところなど、
まだ艶やかな「女学生」のようだ。


2005年03月03日(木) ナニサマ

ひなまつり。
ああ、今年も『りかさん』再読を逃してしまった。
つーか、どこ行ってしまったのだろう。


*****
人には得手不得手がある。
不得手を克服しようとする人、
少なくとも、自分の不得手を苦にしていて、
なんとかしたいと思っている人を、
だれが責められるというのだ。

何かをできる人が、できない人を理解することは、難しい。
(もちろん、逆もだけど、意味がちょい違う)
できる人が、できない人を、安易に責めてはいけない。
いったい、何様だというのだ。
だって、そうだろう?
君にだって、できないことはたくさんあるはずじゃないか。

カタチも大事だけど、ココロも大事だよ。
仮に、シゴトにおいてはカタチがすべてだったとしても、
そのヒョウカと、ジンカクは切り離して見るべきじゃないのかい?

と、思うことがしばしある。
特に今日は。


2005年03月02日(水) 大興奮時代(八十日間世界一周)

ジュール・ヴェルヌ『八十日間世界一周』読了。

最後のたたみこみがスゴイ。
そして全編通して巧妙に張られた、
大どんでん返しの仕掛けにまんまとはまった。
細かい伏線も見事だし。
スリリングで、ユーモラスで、夢があって、
面白いよ、これ。

本を読んでいてこんなにハラハラドキドキしたのは久しぶり。
たとえば『指輪物語』もすごいけど、壮大すぎて実感がない。
ひきかえ、列車や船を乗り継いでいくだけの世界一周は、
その「少しの遅れが命取り」の実感がものすごいある。
だからこんなにもスリリングで、興奮してしまうのだろう。

事の次第は、世界一の冷静男フィリアス・フォッグ氏の思いつきなわけだけど、
もうひとりの主人公は、間違いなく、
誠実で勇敢、愛すべきおっちょこちょいのパスパルトゥー。
彼は、『指輪』のサムにも通じると思う。
(ヨーロッパにおける従者ってそんなイメージなの?)
そのほか、聡明なアウダ婦人、自分の義務に忠実であろうとしたフィックスなど、
キャラクターのバランスも絶妙なのだ。


鳥乃 |MAILHomePage

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