草原の満ち潮、豊穣の荒野
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草原の満ち潮、豊穣の荒野 外伝 4 舵を取れ

「母さん、オレ、もうやだよ…」

ブルーは閉じこもった部屋で母の写真に訴えた。
透明な石の中で微笑むひとりの女性。
隣には先の水槽にいた男。
若き頃の父と母。ブルーは父親の上に布をぐるぐる巻き付けて隠してしまった。

「あのくそ親父、大事な事ほとんど黙ってた。選りによって母さんの事…」

母は芯の強そうな笑顔で赤ん坊を抱いていた。

「オレが覚えてるの、オレのせいで母さんが死んだ事だけ…」





薄暗い水槽の部屋。
ダニーと人魚のディアナは水槽の男に機関銃の如くこれまでの事を話した。

「あたし達、ダニーの意気地なしを治そうと思ってここに来たのよ。
ダニーはこわがりで夜中にトイレに行くの嫌がってオネショしちゃうから」

「姉さん、なんで話すんだよう!」

「いいじゃないの。あんたががんばって夜中に灯台へ行ったんだから
別におかしかないわ」

「そういう問題じゃない。姉さんだってブルーにお尻噛まれたりパンツ見られた事言われたら怒るくせに」

「ダニー!」

人魚の姉は水槽から半身を乗り出してダニーの頭をぶった。

『…私の息子とそんな事に。最近の若い者はなんと大胆な』

「違う違う!真っ暗な中いきなりブルーが…」

『なんと…父の私が代わって無作法はお詫びしよう。申し訳ない。
だが、男とは多少強引なものでどうか許して仲良くしてやってください』

ディアナは水中の男を尾でキックした。
男は上半身と下半身がぽろ、と外れディアナは気絶した。


『失礼。私は事情があって元の姿を保つ事が難しいもので。
気にしないでほしい」

「もう慣れて来た気がする…」


『君はダニーと言ったね。つまりブルーは君に薬瓶を渡し、それを間違ってディアナが飲んでしまったと』

「ブルーはなんにでも効く薬だから僕の気にしてるものも治る、って言ったんです。
だから僕は喜んでもらって…酷い嘘だ」

ダニーはぽろぽろと涙をこぼした。

『君たち姉弟はどうも性格が逆だと良かったのかな…。
ダニー、よく聞いてほしい。おおかた息子は君とも親しくなりたかったのだ』

「……………」

『いや、そっちの親しくじゃなくて』


男は苦笑いで手を振りダニーを安心させた。

『よく考えてごらん。ディアナのスカートをめくったりお尻を触ったりするくらいだからそっちじゃない』


「あの、触ったんじゃなくて噛んで…」

『あいつ、まだ子供だと思っていたのだが。いずれにせよ女性に無作法はいけない。
ディアナが怒るのも無理はないな。いくら好きでもいきなり襲いかかったら野獣と同じだ』

「微妙に違うけど、まあいいや。とにかく僕らをどうする気なんです?」


男は外れた体を元に戻すと困ったように目を閉じた。

『どうするもこうするも。
ブルーの片思いじゃどうにも困ったね…ディアナにその気がなければ元に戻してやらねば』

「出来るんですか?」

『私には出来ない』

「お、おじさん!!」

『ディアナがブルーを好きになってくれれば丸く収まるのだが』

「絶対ないと思う…」

『うーん。案外ケンカばかりする男女は仲良しだったりするのだが』

「元に戻して下さい。父さんと母さんはまだ知らないんです。
こんな事になってるの知ったらメチャクチャ怒られてどうなるかわかんないよ」

『そりゃそうだろうなあ。私も家族に殺されそうになったものだ』

「………」

『方法はあるにはあるのだが時間がかかる。それまでご両親を君がごまかしてくれまいか』

「無理です!無理!僕ひとりが怒られる!父さん怒ると鬼みたいにこわいし絶対嫌だ」

『うーん』


男は仕方ない、と呟くと水槽からザバリと出た。ディアナは気絶したまま沈んでいる。

『彼女は寝かしておきなさい。体が変わって疲れてる』

水槽にいた男はまるで水死体のように青白い顔とずぶぬれの古めかしい衣服で
びちゃびちゃ階段を上がって行った。


『ブルー、開けなさい。話はわかった。お前のミスはお前がちゃんと片付けるべきだ。
ダダを捏ねていないで出て来なさい』

鍵のかかった小さな一室。

返事はない。


『息子よ。お前があの子が好きでもあんな無作法なやり方ではいけない。
父さんがちゃんと教えなかったのも悪かった。
一緒にあの子を元に戻す方法を考えよう。出てきなさい』

「ブルー、お願いだから手伝ってよ。君に悪気がなかったのはわかったから。
さっきはごめんよ」


無言。
何かをドアにぶつける音のみが響いた。


『ブルー!いいかげんにしないと父さんは…』

水槽の男は拳を振り上げるとガハっと口から水を吐いて崩れた。


「ギャーーーー!!ブ、ブルー!大変だおじさん溶けたーーーー!!」


『い、いいかげんにしないと…父さんは死んでしまうぞ…ぐは』



バン!


荒々しくドアが蹴り飛ばされて開いた。


「このクソ親父!!死ぬ死ぬ詐欺で言う事聞かす手ばっか使ってると
いつかホントにおっ死んでも知らねえからな」

『と、父さんはいつもマジだ…』



ブルーは男の溶けかけの体を拾い、溶けた液を雑巾でよく拭き取るとバケツに絞って水槽に放り込んだ。


『ああ、今度こそ死ぬかと思った…』

「ほら、強壮液だ!オレが新しく配合したからよく効くぞ」

バラバラの手足はピースサインをした。

「ブルー、お願いだ。姉さんを元に戻して。
もし姉さんが元に戻ったら僕は君を一生友達だと思える」

「けっ、都合のいい時だけのお友達なんか欲しくねえよ。
かんじんな時は話も聞きやしねえでさ。
そんな奴オレの方からお断りだね」

「……だって…」


ブルーは吐き捨てるように言ったものの眠ったディアナを見て頭を振った。



「で、親父、どうすりゃいい?もう姿作んなくていい。見たくもねえしオレに指示だけ出せ。
あんたがいなくてもやり方さえわかりゃオレだけで充分だ」


水槽の中で手足は泡へと戻って行った。


『よく言った。息子よ。
ではどんな方法でも見事やりとげてくれるな』

「ああ。もうあんたに振り回されたくねえからな。
母さんの大事な事くらい、いくらチビだって話しといてほしかったよ」

『…ええと。父さんまだお前に言ってない事がある…』

「ああああ!そうだろうよ!この際洗いざらい全部ブチまけてから死にやがれ!」


『ディアナを母さんの所へ連れていけ』









ブルーはもう少しで水槽を叩き割るところだった。
ダニーが泣きながらブルーを止めて事なきを得た。
ブルーは尋常でなく怒り狂っていた。


『母さん実は生きてる』

水槽の泡が喋る度、ダニーはブルーにしがみついて止めねばならなかった。

「あんた、母さんはオレがちびって呼び寄せたサメ共からオレを守って死んだって言ったよな。
あんたがそんなになったのもその時の傷のせいだって!」

『半分は事実だ。本当に母さんはお前を守って…』

「殺されたって言ったよな」

『殺されたのはサメの方』

「ナニ?」

『母さん、強い女だったからお前がおもらしで呼んだサメは生きて巣に戻る事はなかった』

「……」

『彼女は愛する者を危険に晒す者に容赦ない
強くて情熱的で優しい女性だったのだ。息子よ』

「…もう何言われても怒る気力もねえ。続けろ」

『お前がこわがりでチビっていたのは事実だ」

「そこはいいから」

『母さんは地上で父さんと恋をして情熱的に海へ飛び込んだ。
一途で勇気があって薬を飲む事を恐れなかった。
私達は幸せに暮らしていたが、やがて彼女は去った。
サメを叩きのめした時、そのまま行ってしまったのだ』

「オレがいたのに?」

『私達はお前が生まれる少し前からうまく行かなくなっていた。
彼女は情熱的で素晴らしい女だったがそれだけに恋も多かった』

「なんでだよ…。海に来てまで一緒になって子供もいて…」

『女性の気持ちは私にはわからん。だがお前に本当の事を言わないように彼女は頼んで去った。
私にわかったのは彼女はお前の事を…』

「もういい。で、どこの海にいるんだ。さっさと会ってディアナを元に戻して終わりだ」


「ブルー…」

ダニーがブルーに声をかけたが完全に無視された。
今のブルーはどんな氷よりも冷たいと思えた。


『彼女は地上に戻った。もう海の者ではない』


「え?どうやって戻れたんだよ!」

俯いていたダニーが顔をあげた。


『だから行って戻った方法を教わってディアナに施してやれ。
海の魔女にでも頼んだのだろうが私は知らない。
彼女の居場所は…』










ブルーは厳重にコートとフードを被って旅支度をすませていた。
小舟には同じような装備をしたディアナ。
太陽の日差しを浴びないよう夕暮れにすべての準備は整えられた。
ダニーは新しい瓶を持って砂浜に立っている。

「おじさん、ほんとに大丈夫なの?」

『心配しないでいい。君はこれから私の言う通りにしてくれればきっとうまくいく』

「ほんとに街の人達なんか呼んじゃって大丈夫なの?心配だよ…』

『父親に怒られるのがかい?』

「ううん。きっと父さんや街の人達はブルーに酷い事するよ。そんなの見たくない…」

『なら、私と君でここはがんばるしかない。よろしく頼む』

「き、きた!」





灯台に近い海岸沿いにたくさんの松明を持った大人達が駆けつけて来る。
先頭にいるのはディアナの父。
皆男達ばかりで片手にそれぞれ刃ものや得物を持ち、ただならぬ空気だった。


「ディアナ!」

「と、父さん」

ブルーは波打ち際を勢い良く蹴り上げ小舟を海に出し飛び乗った。


「待て!貴様娘をどこへ連れて行く気だ!」


ブルーは立ち上がると微かな夕日の光に歯ぎしりしながら怒鳴った。

「オ、オレはディアナとか、かけちお…ちがっ…か、駆け落ちする!」

「な、なんだありゃ。子供じゃねえか!ガキ同士でなんてことを!
戻って来い!どこのガキだか知らんがとんでもねえ奴だ!」

「と、父さん、あたし、彼とか、かけ、かけ…」

「なんだってディアナ!?」

「かっコケ…ええい」

ディアナは小舟の上でブルーに抱きついた。

「げえっ」


ブルーが変な声で呻いた。
ディアナの父親は波に足を取られ転びながら絶叫した。

「い、行くな!大事な娘を返せーーーー!」


小舟は計算しておいた潮に乗りするすると水平線の彼方へ消えて行く。

「と、父さん!行かせてあげて。姉さんきっと帰って来るって言ってたから!」

「ダニー!」

街の人々と母親が駆けつけて来た。

「おお、なんてこと。神様」

「姉さん戻って来るって言ったよ。だから見送ってあげてよ」

「ダニー、どうしてあなたディアナを止めなかったの!あああ。
まだあんな子供なのに」



小舟の消えて行った水平線を見つめた人々は陽が沈んでもしばらくそこから離れなかった。
何人かが船を出し追おうとしたけれど海は邪魔をするかのように潮の流れで阻んで戻す。



『申し訳ない事になってしまったな。どんなに時が過ぎても違う親でも同じ事を言うのだな』

「おじさん…。でも姉さんのあの姿見せたら父さん母さんもっと死ぬ程悲しんだかも」

夕暮れの海で夕日はブルーとディアナを影にしか見せなかった。
それでも両親は声だけで我が娘と悟っていた。


『なるべく早くブルーがディアナを元に戻して帰って来る事を信じて待つしかない』

「ブルーもお母さんに会うんだね」

『……』

「うまく行くといいな」

『ああ…』




街の人々が戻って行ったのは明け方も近くなってからだった。
最後まで両親は海に向かって泣いていたが親しい人に背中を抱かれて帰って行った。
ダニーは瓶を抱えたまま明け方まで海を見ていた。


波は穏やかに薙いでいる。
















草原の満ち潮、豊穣の荒野 外伝 3 青いたまご

朝の気配漂う海岸。
灯台の住人ブルーは暗い室内で膝を抱え、真ん中に置いてある柱のような水槽に話しかけた。


「あの薬、人間に渡したよ。きっと喜んでくれると思う」

『そうか』

水槽がコポコポと答えた。


「仲良くやってけるといいんだけどな」


水槽には水だけがたっぷり入っていて泡が生き物のようにゆらゆら揺れた。


『その子を見てみたい。連れてきてくれないか』

ブルーは照れを隠すようにそっぽを向いて答えた。


「そのうち遊びに来るだろうよ。だって大喜びで持ってったもんな」


ガンガン。ガンガン。



誰かが灯台の扉を激しく叩く音がした。

「…いくらなんでもちょっと早い気がするけど来たみたいだ。」

ブルーはいそいそと頭にすっぽり毛布を被り、わざとらしい大声で怒鳴った。

「うるせえ!こっちは昼夜逆転してんだっ、遊びに来るんならちったあそこらへん考えてよお…」

「ブルー!君はいったい何飲ませたんだよ!」


少し開いた扉から突進するようにダニーが飛び込み
半ベソで両手に抱えていた箱を突き出した。


「は?なんだこれ?卵みたいだけど」


木箱に入っていたのはダチョウの卵にように大きく青い球体。

「卵じゃない!姉さんだ!朝起きたら姉さんがこんななっちゃってたんだよ!」

「お前、酔っぱらってる?」

ブルーはダニーの額をデコピンした。

「なんで人間が朝起きたら卵になってるんだ。頭おかしくなったんじゃねえか」

「違うって!これ見てよ!」

ダニーは空になった小瓶をぶんぶん振った。


「おお、飲んだか。で調子はどう?」

「…僕は飲んでない」

「は?」

「だから…僕は飲まなくて、姉さんが…」

「はあ?」

「ね、姉さんが 勝 手 に 飲 ん じ ゃ っ た ん だ!

朝起きたら空になってて姉さんのベッドにこれがいた!!」

「……」


ふたりは同時に青い卵を覗き込んだ。




「…あのさ、ダニー。オレはお前に飲めと言ったよな」

「僕は机の中に隠しといたんだ」

「見つけられるような場所に隠してんじゃねえよ。
仮にディアナが飲んじまったにしてもなんで寝小便用の薬で卵になるかボケ」

「それは僕が聞きたいよ!」

「ディアナのいたずらなんじゃねえの。割ってみようぜ。面白い色をしてるし
ほら、なんか光ってねえか」

「わーっ!姉さんを殺す気か」

ダニーは箱の蓋を閉めると抱え込んだ。


「しようがねえなあ。念のために親父に聞いてみるよ。バカバカしいけどな」

「え?両親はいないんじゃなかったの?」

「あ、まあ。事情があってそういうことにしてる…」

「嘘つきだ!」

「なんだと?」

ブルーは仏頂面でダニーを水槽のある部屋まで連れて行った。

「いくらなんでも嘘つき呼ばわりされる覚えはねえ。
誰だって簡単に言えねえ事情くらいあんだよ。
こうなりゃ親父に会わせてやるから騒ぐんじゃねえぞ」



薄暗い部屋の真ん中に柱のような水槽はあった。
デニーは卵の箱を抱いておそるおそる水槽を覗いた。


「親父、薬をやった奴、連れて来たぜ」


ゴボボ。
水槽から勢い良く泡が噴き上がった。

「お父さんどこ?」

「水槽の中をよく見てろ」



水槽の泡がだんだん手や足、目玉と、人の体のパーツのようなものを作りだしては
それが集まって形になっていく。


「ブルー、ちょ…」

ダニーはスプラッタな光景に震え上がった。

「親父、ちょっと聞きたいんだけどさ、あの薬を飲んで卵になるなんてそんなバカな話ねえよな」


ゴボボボボボ。
スプラッタな泡はブルーに良く似た大人の姿をかたどり終えると、首をクキクキやって微笑んだ。

『それは順調だ』

「は?」

「おっ、お化け!バラバラ死体のおば…」

「騒ぐなつっただろ!」

水槽の中にゆらゆらゆれる青い男はダニーから見れば水死体にしか見えなかった。
しかもそれはバラバラに現れて合体し、人の姿になったのだ。
ダニーは半ベソで凍り付いていた。


「順調ってどういう事だよ」

『海で暮らす体を得る為、体を作り直しているのだ。もうじき出て来るだろう』


「はあ?何言ってんだかわかんねえ。あれ、ただの万能薬だろ?」

『何を言うか。あれは父さんが母さんにかつてプロポーズした時の秘薬だ』


ダニーが口をぱくぱくさせているが言葉は出ない。



「親父、話が見えねえ!どういう事なんだかちゃんと説明しろよ!」

水槽の男は箱を持って来るよう水槽から身を乗り出すと手招きした。

『貸してごらん。水の中の方が負荷が少ない。彼女が無事に出てこれるよう私が見ていてあげよう。
母さんのときもこうやって…』

木箱の卵にヒビが入り始め、ダニーはあわてて卵を水槽の男に手渡した。

「お、おじさん。これ僕の姉さんなんです!薬を飲んじゃって。お願いです。助けて」

『任せておきなさい。心配いらない』


男は優しく水の中に卵を浮かせると殻を撫でた。

『とても極上の青だ。これなら何も問題はない』

「お、親父…」

「ああ…」


ブルーとダニーは青い卵の亀裂から白い光が溢れ出すのを見た。


『さあ、出ておいで。お嬢さん』


「ま、眩しい…」


ふたりの子供は水槽に頬をぴったりつけディアナが水中に魚のように躍り出すのを見た。


「うわあ…」





『ブルー。お前の花嫁はなんと可愛らしいのだ。父さんは安心した』

「ちっちがちがちが…」

「ねっねねねね、姉さんが姉さんが花嫁ってなななな…」


ふたりの子供は水槽に佇むディアナを見つめた。
限りなく青い色に染まった髪から
きらきらビーズのようにきらめく鱗で覆われた彼女の下半身と尾まで。




「に、人魚に…人魚になっちまった…」








「親父、好きな人間に渡していいって言ったじゃねえか」

『ああ。好きになった人間で何か問題でも?』

「薬飲ませた人間に喜ばれたって言ったろ?」

『ああ、その通り。母さんはとても喜んで父さんと暮らした』

ダニーは顔を真っ赤にしてブンブン横に振った。

「バッバカタレ!!寝小便仲間にシンパシー持って気の毒に思ってだな…」

「うわー!やっぱ嘘つき!君は僕らを仲間にしようと…」

「頼むから全員人の話を聞けー!」

『お前達の結婚式はいつにする?
父さんがんばって水槽から出て出席するぞ。
そのまま命尽きても本望だ』

「出るなっクソ親父!そもそもあんたが紛らわしい言い方を…」

「このひと誰?なんであたしこんな格好…ええええええええええええ!?」




ブルーはいたたまれず脱兎のように逃げると自分の部屋に鍵をかけた。

「か、母さん、たすけて…オレもうやだ」



海辺は夜明け。
灯台の騒ぎを聞くのは海鳥ばかり。