他人の気持ちを理解することは出来なくてもね 推し量ることは、きっと今よりもっとマシに出来ていたと思うんだけどな。 あの頃は確かに幼かったけれど あたしは必死に大事なもんを抱えていたよ。 今のように、簡単に手放そうとはしなかった。 もっと貪欲だったよ。生きることにも何かを欲しがることにもすべて。 何が辛くて泣いているんだろう。 理由在る涙なら、流されることも惜しまなかったのに。 何が怖くて傷つけるんだろう。 理由在る傷痕なら、もっと胸張って生きてきた証だと云えたのに。 あたしが流す涙に理由が無いのと同じでね あたしが流す赤にも理由など無いんだよ。 そしてそれは理由が無いのではなく、ただ判らないだけだということも。 それはただ流され行く日々に、付いたかすり傷と何ら変わりないものなんだ。 あの頃よりずっと大きくなったよ。 あの頃よりずっと傷だらけになった。 それでもあの頃より、綺麗に笑えていたのなら あたしは過ぎ去った日々に何の後悔も抱かずに済んだのにね。 そんなに上手くはいかないよ。 あたしはただ無意味に成長過程を過ぎ 図体ばかりでかくなって、何一つ育っちゃいない。 今を儚むだとか、この先を哀れむとか そんなことすら考えるのは無駄になっちゃっててね ただ、あの頃に帰りたいと少し思うよ。 あの頃のように純粋に他人を想えたら もしかしてあたしは今より生き難いかも知れないけれど けれど今よりは、 アナタをラクにしてあげられると思うのに。
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