約束 - 2004年07月23日(金) ドンちゃんと初めてお酒を飲んだのは、一年前の桜の季節、いやもっと後だったと思う。 その日は二人ともよく飲み、よく話をした。 驚いたのは、ドンちゃんが物事に対して「何がよくて、何がいけないか」を よく理解している人だったことだ。 私はそんな彼を恋愛とは別の部分、つまり人間としてたちまち好きになった。 もちろんその後、ドンちゃんと抱き合ったし、キスもした。 それは男女のちょっとした決まりごとのようなものである。 だが、安易に体の関係を結ぶことはあってはならない。 帰り際ドンちゃんは、ひとつ約束をして欲しい、と言った。 ホテルの部屋の中は薄暗く、空気が荒い粒子のようにざらついていたのを覚えている。 声は暗がりの向こう側から響いた。 「こうして、ずっと男と女として会ってくれないか?」 今でも約束は有効だろうか。 - 茶番 - 2004年07月22日(木) どうしてこんなに好きになってしまったんだろう? 自分が苦しむだけなのに。 最初は茶番のつもりだった。 ドンちゃんも現在一緒に暮らしている本彼も、元は同じ職場で知り合った。 ドンちゃんはやがて転勤し、結婚。 それまで正直あまりかっこよくないおじさんだったドンちゃんが、 結婚によって色気のある大人の男性に変わってしまった。 私はそんなドンちゃんを冷やかしていた。 またそれとは別に、ドンちゃんに対するイメージを変えてくれたのが本彼だった。 仕事に熱中してばかりで口が悪いため近寄り難い印象のドンちゃんを、 実は情にもろく、心の優しい愛すべき人物だと教えてくれた。 だんだん私はドンちゃんのことをちょっと面白い人だな、と興味を持ち始めた。 そんな矢先、本彼が一つの案を思い付いた。 私がドンちゃんの住む街へ一人で遊びに行く振りをして、 実際は本彼も一緒に行くというもの。 きっとドンちゃんは驚きながらも、喜んでくれるんじゃないかと考えていた。 「今度遊びに行きますからね!」 「いいよ!」 そうしているうちに、二人の会話が増えてきて、 ドンちゃんが個人的に私を食事に誘ってきた。 「今度出張のときに時間をとります。一緒に食事をしませんか?」 ドンちゃんの下心は分かっていたし、私もゲームを楽しんでいた。 始まりだなんて知らずに。 - 決然の美 - 2004年07月20日(火) 結婚をするときというものは、そもそも幸せに満ちているものだ。 花嫁さんの後光が差しているかのような、突き抜ける輝きと美しさは、 愛する男と共になる歓びで溢れているからである。 私は結婚というものに対して本来あまり願望がないのだが、 一生にそう何度とない結婚式には、 せめてあの独特のきらめきを放っていたいと思っていた。 ところが、結婚をこんなにも迷いながら迎えることになろうとは 予想だにしていなかった。 自分の人生において、それはもう少し決然とした美しさを持つはずであった。 このままでは結婚式はおろか、 婚姻届に判を押すこともままならないであろう。 時間の流れが早すぎる。 - 伝わっていますか? - 2004年07月16日(金) ドンちゃん、昨日はありがとう。 あっという間に時間が過ぎてしまいましたね。 一緒に泊まりたかったけど、心を鬼にして帰りました。 今、あなたのことを思い出しています。 でもどうしてでしょう?涙がでます。 あなたと過ごした時間のどれもがとてもいとおしくて幸せなのに、 こうして離ればなれになると、とても儚いもののように思えるのです。 あなたのことを好きになり過ぎて怖い。 想いが強すぎて素直になれない。 会える時間が少ないから、会った時には胸がいっぱいで うまく自分の気持ちが伝えられない…。 ドンちゃんに私の気持ちが伝わっていますか? 本当は何もかも捨てて、あなたのそばへ飛んで行きたいのです。 あなたとの許された時間はもう少なく、伝える言葉は空をきるばかり。 だから今日も祈ります。 神様、どうか私からドンちゃんを取り上げないでください。 - 永遠の明日 - 2004年07月14日(水) 好きな男のために下着を選ぶ。 それは、女にしかに許されない享楽。 私が選んだのは赤のスリーインワン。 明日、ドンちゃんに会える。 - 抗う - 2004年07月13日(火) 抗いきれない運命について考える。 私はたまに、自分がどうしようもない運命の流れに 取り込まれていると感じるときがある。 結婚もそうだし、今のドンちゃんとの関係もそれだ。 ドンちゃんと頻繁に会うようになったのは、 同居している彼からのプロポーズを受けた後だった。 2年間の同棲を経たプロポーズは当然の流れであり、 断る理由などどこにもなかった。 今思うと、どこか人生からの逃避のようなものがあったと思う。 大病をし、会社を辞め、親からのプレッシャーは相当のものだった。 その中で、ドンちゃんとの出会いはどうしても遅すぎたと言わざるを得ない。 今日、「世界の中心で、愛を叫ぶ」を観た。 この作品に登場するサクとアキも、 抗いきれない運命に翻弄される二人である。 私は今、自分をとりまく運命の輪が少しづつ回転し始めているのを感じつつある。 しかしそのまま流されるのではなく、 可能な限り運命を変えたいと少しづつ思うようになってきた。 運命に逆らおうとするサクが、 アキをオーストラリアへ連れていこうとするシーンのように。 - 一緒 - 2004年07月12日(月) 先日、メールで依頼していた占いの結果が届いた。 普段は占いに投資する位なら好きなものを買ったほうがいいと思う性分なのだが、 今回はさすがに占いにすがりたくもなった。 占いにハマりだす時は、きまって心が弱くなっているものである。 今の私は確かに参っているし、迷っている。そう、迷っている。 結婚に。 鑑定方法はタロットカードとチャネリング。 チャネリングとは、未来を予測する霊視のようなものらしい。 果たして当たるのか? 結果はドンちゃんとは長続きせず、あと2、3ヶ月で大きな動きがあるだろうとのこと。 そして、婚約者とそのまま結婚するのを勧める内容で文は締めくくられていた。 読んでしばらく、ぼうっとしていた。 でも、心のどこかでそんな結果がくるような気もしていた。 私にとってドンちゃんとはどんな存在なのだろうと考えてみる。 自分のなかに女を認識させてくれるだけではなく、 何よりも私に生きる力を与えてくれる人。 彼が私を助け、私が彼を助ける。 私の人生にはドンちゃんが必要なのだ。 結婚という形じゃなくても、いつも私のそばにいて欲しい。 だから、私の前から消えてほしくない。 運命?宿命?離ればなれになるのなら、そんなもの変えてみせる。 私はドンちゃんと一緒。 - 弱きもの - 2004年07月09日(金) ドンちゃんとのセックスは私に鮮烈な印象を残した。 今までの誰とも共有したことのない、 全てを奪い去ってしまう嵐のような体験。 初めてドンちゃんと肌を交えた帰り道、私は思った。 あぁ、生きている。 身体的欠陥の発覚、入院、手術… 昨年突如降りかかった思わぬ出来事に、私は今だ生きることへの自信を失っていた。 ドンちゃんのセックスには、私の身体に命の息吹を吹き込む力があった。 そして、限りなく自分を女だと思った。 なぜ婚約者を裏切ってまで他の男と寝たのか、と問われたら 私はこう答えるだろう。 女だから、と。 Frailty, thy name is woman. ーW.Shakespeare - 落ちる - 2004年07月08日(木) ドンちゃんと寝てから、私は彼にのめりこんだと言っていい。 それまでは、どうにかして理性で事を阻止しようとしていた。 ドンちゃんを年上の男性として慕っていたし、なによりも人間的に好きだった。 関係を持つことによって、彼を失いたくない。 男女関係になるということは、二人の親密度がより増すと共に 別れへのスタートボタンを押すことになる。 「ミーが抱いてというまで、俺は待つよ。」 拒絶する私に彼は真面目に言った。 「でも、本当は今すぐめちゃくちゃにして、早く俺の女にしてしまいたい。」 それからだ。 私は彼に抱かれるとはどんな感じだろうと、明確に意識し始めた。 夜な夜なベッドの中で切ないため息をついた。 馬鹿なことに、あの言葉によって何かのスイッチが入ってしまったのだ。 ある夜、酒に酔った私はドンちゃんに電話をした。 「悶々としてたんだろ?ミーは疲れてる。いいじゃないか、このままで。 そしたら俺たち一生の友達になれると思う。セックスじゃないんだよ。」 彼は私の心を見透かしていた。 でも、言外では喉から手が出るほど私を欲しがっているのが分かった。 そんな彼の気持ちが嬉しく、切なかった。 ドンちゃん…。私、あなたに抱かれたい。 私は彼の手に落ちたのだ。 - 逢瀬 - 2004年07月07日(水) ドンちゃんというのは、私がつけたあだ名だ。 見た目と存在感が首領=ドンだから。 そんな彼は、私をミーと呼ぶ。 ドンちゃんと会うのは月一回。 彼が仕事で東京に出張するときだけだ。 都内のホテルで落ち合い、身体を重ねる。 もしそれが許された時間の少ない、数限られた逢瀬だとするならば、 まるで織姫と彦星みたいだと、下らないことを考えてみたりする。 でも、本当はずっとプラトニックでいたかった。 - 運命の輪 - 2004年07月06日(火) 結婚式のちょっとした打合せに行った。 簡単な説明で30分ほど。 そのとき、2年間共に暮らした彼の隣で考えていたことは、 あの人のこと。 私の心を少しづつ奪っていったドンちゃんのこと。 式は11月。 運命の輪が動きだす。 私はまだ、結婚することをドンちゃんに告げていない。 - ごめんなさい。 - 2004年07月05日(月) もうダメかもしれない。 恋愛も人生も。 私は、もうすぐ結婚するというのに、 ほかの人を好きになってしまいました。 ごめんなさい。 なにもかもが壊れてしまいそうな、寸前。 -
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